意外なる天敵6
「うっ!
……うぅ…………」
倒れた衝撃で腕が抜けて投げ出されるショウカイ。
なんだかんだショウカイの能力は一般人寄りなのだ、はるか上空から落とされて無事でいるはずがなかった。
熊公をフェアリーイーターの頭の中に刺しっぱなしのショウカイは肩の痛みに泣きそうになっていた。
頭の位置も思ったより高かった。
投げ出されて地面にぶつかった背中も痛い。
みんなと違って前に出て戦ってたわけでもないのにこの体たらく。
「ご主人様!」
「ショウカイさん!」
「主君!」
「ん!」
「ショウカイ様!」
みんながショウカイのところに集まってくる。
やめて、情けないこんな姿見ないで、というショウカイの願いも虚しくみんなでショウカイを取り囲む。
「シズク!
何をするのですか!」
何と表現したらいいのか。
冷えピタの冷やすところのようなひんやりとしてプニっとした感触に全身が包まれる。
シズクがショウカイをその体の中に包み込んだのである。
思わず息を止めるがその前に深く息を吸えたのでもなかったので長くは持たない。
プハッと酸素を求めて口を開くと、苦しくなかった。
マスクでも着けているような呼吸のしにくさはあるけれど息はできていた。
「主君、どうですか?」
「どうって……あれ?」
そう言えばと思う。
先ほどまでひどく痛んでいた肩が痛くない。
「誰かが主君を癒やして差し上げなければいけません。
そのお役目この私にお任せください」
シズクってこんな性格だったのかと驚く。
ノワールはただ敬語で丁寧と言った感じだけどシズクは忠臣みたいな、ショウカイを崇めている感じがしている。
筋肉が回復してきて脱臼した骨が自然と戻ってくる。
脱臼した骨が戻る時は一瞬痛みがあったけれどシズクのおかげで本当に一瞬ですんだ。
みんなに見られながら治療されるのは少し恥ずかしかった。
「もう大丈夫だよ、シズク」
「はい、分かりました」
ドゥルンとシズクがショウカイから離れる。
別に治療でなくても中にいたいと思わせる絶妙な気持ち良さであった。
「トリシア!」
みんなショウカイに夢中で忘れがちだけどショウカイは忘れていない。
トリシアはショウカイを囲む輪の中にいないかった。
地面に倒れ伏すトリシアに駆け寄る。
「トリシア、大丈夫か!」
「ショウカイさん…………私、お役に立てましたか?」
抱きかかえるとトリシアの意識はあった。
トリシアは魔力不足に陥っていた。
限界を超えて魔力を無理矢理使ったために反動がトリシアに襲いかかっていたのだ。
鼻血で呼吸がしづらく、頭の奥が痛む。
ぼんやりとした意識の中でショウカイの顔すらよく見えていない。
響くように聞こえる声が多分ショウカイだろうというだけなのである。
「うん、すごかったよ!
トリシアがいなかったら危なかったよ」
ソードキング改の凄まじい一撃がフェアリーイーターの腕を切り落とした。
あれほどの威力を出すのはソリアでも難しかった。
シズクの登場は場を大きく変えたが、トリシアの働きが勝負を決定的にした。
「よかったです……これで私も変われた……そんな気がします」
「シズク、トリシアを治して!」
「お任せください」
シズクがトリシアを包み込む。
なんだか地下の怪しい研究所でデカいガラスの中で怪しい液体に浮かぶ実験体のような見た目をしている。
外から見ると少しSFチック。
トリシアが無事何事もなく回復するといいけど心配である。
「人間さん」
「ん?」
「初めまして、フェアリークイーンのアンジェと申します。
この度は我々妖精を助けてくださりありがとうございます」
トリシアを見守っていると他の妖精よりも一回り大きな妖精がショウカイに声をかけてきた。
美しい金髪をなびかせるフェアリークイーンは思わず目を奪われる美しさをしていた。
小さいのに顔のパーツひとつひとつがハッキリとしていて、まつ毛が長いのも分かる。
「あのままでは私たちは全滅してしまうところでした。
スーから話を聞きました。
感謝をしてもし足りないぐらいです」
「いえ、俺の力じゃないですよ。
みんなが頑張ったから、みんなの力が1つになってフェアリーイーターを倒したんだよ」
なんで自分にお礼を言うんだとショウカイは思う。
自分がやったことなんて辛うじてトドメを刺したぐらいの微々たるもの。
「ふふっ、謙虚なお方ですね。
皆様もありがとうございました」
「あの……妖精は何をしているんだ?」
アンジェは地面に降り立つとスッとうつ伏せの体勢を取る。
後に続いて全ての妖精が同じように地面に伏せる。
フェアリークイーン、お前もか。
感謝の意を示す妖精たち。
ソリアの目から見ても妖精たちが寝転がっているようにしか見えていない。
「……これは、妖精なりの感謝だよ」
「そ、そうなのか……」
まずは正しい頭の下げ方を教えてやらないといけないなと思いながら妖精たちを無事救えたことにショウカイはホッと胸を撫で下ろした。
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