意外なる天敵5
ソードキング改の剣が青い光を放つ。
魔力が溢れ出して大きな刃の形を作る。
「ソードキング、ゴーレムの力を……ゴーレム研究者の力を見せてください!」
ソードキング改の背中の噴出口から魔力が噴き出してソードキング改が加速する。
目標は大量の魔法を背中に受けて動きが鈍っているフェアリーイーター。
これまで高い回復力に任せて暴れ回っていたフェアリーイーターの回復が目に見えて遅くなっている。
まだ早いペースで治っていっているがすぐに暴れまわれるほどに治らない。
「いっけー!」
ようやくソリアにつけられた目の間の傷が治ったフェアリーイーターがソードキング改に気づいて防御しようと腕を上げる。
これまで回避も防御しなかったのに、初めてとった防御行動。
これがソリアやノワール相手だったら効果もあっただろう。
けれど今ソードキング改はトリシアの全力の魔力を受けて自らの剣の何倍も大きな魔力の刃を掲げている。
きっともうちょっとでも魔力があったならフェアリーイーターは真っ二つになっていた。
猛威をふるっていた太い両腕が重たい音を立てて地面に落ちる。
大きな代償を払ってソードキング改の攻撃に耐えきった。
「ブフッ……」
トリシアがまた鼻から血を噴き出してゆっくりと倒れる。
「……みんな!」
まだ戦いは終わっていない。
腕を失ってバランスを崩しながらもまだフェアリーイーターは死んでいない。
魔力を使って戦いの様子を見守っている妖精たちにショウカイが声をかけた。
「なに、ショウカイ?
あなたのためならなんでもやるわ!」
「俺をみんなで持ち上げて、あいつの上で落としてくれないか?」
「落と……わ、分かったわ!」
「ミクリャ、シュシュ、あいつの動きを止めてくれ!」
「分かったである!」
「んっ!」
「みんな、やるよ!」
フェアリーイーターに近づくのは怖い。
でも友達を、家族を、みんなを失うのはもっと怖い。
妖精たちがショウカイに群がり妖精みんなの力を合わせて持ち上げる。
服を引っ張って持ち上げているものだから想像しているよりも苦しいが文句を言っている場合じゃない。
空高く持ち上げられるショウカイが密かにビビっている一方でシズクが戻ってきた。
体を目一杯に広げてフェアリーイーターにまとわりつく。
両腕の切り口を覆ったシズク。
シズクがスキルでもある溶解を発動させてじわじわと体を溶かしていく。
溶解スキルは生きているものには効果が薄い。
死んでいるものに対してはジュワジュワと溶かすことができるが生きているものは抵抗力があるために生きたまま溶かすということは難しいのだ。
それでもよかった。
シズクが触れているところがジワリと溶け、継続的なダメージが入る。
フェアリーイーターは体を再生させるが魔力の供給もなく、もはや自分の残りの魔力も少ないためにほぼシズクの溶解に対抗するだけしかできない。
腕を再生して抵抗したいのに腕に回す魔力までシズクの溶解に取られる。
「ちょっ……思ってたよりも高い!」
妖精に持ち上げられたショウカイはあんなに大きく見えていたフェアリーイーターが小さく見えるほど上空にいた。
持ち上げてほしいとは言ったけどこんな高く持ち上げてほしいとは思ってもいない。
「や、やるっきゃない!」
覚悟を決めたショウカイだけどこれは自分も無事で済むのか心配でしかなかった。
「……んっ!」
「今であるな!」
ミクリャにショウカイの考えが伝わる。
シュシュに視線を送って今だと合図する。
ミクリャが魔力を高めてフェアリーイーターの体に張り巡らせた糸に魔力を通す。
両手を突き出して開いた手のひらをギュッと閉じて腕をひくと緩やかに引っ付いていた糸がピンと張られる。
表面がわずかに切れるほどに張られた糸でフェアリーイーターの動きが止まる。
不自然な体の向きで止まっているのが上空から見ているとよく分かった。
「落としてくれ!」
「頼んだよ、ショウカイ!」
パッと妖精たちが手を離す。
「うわあああああ!」
我慢できず声を出してしまう。
浮遊感に背中がゾワゾワし、視界に映る急速にフェアリーイーターが大きくなり始める。
逆さまにショウカイは腕を伸ばして真っ直ぐに熊公を構える。
魔力を熊公に込めてショウカイはフェアリーイーターの脳天に落下した。
落下の勢いに任せて熊公がフェアリーイーターの皮膚を切り裂き、突き刺さる。
肩から鈍い音がする。
鋭く切り裂く熊公でも反動がないのではない。
むしろ剣一本で着地しているので全ての力が剣に、そしてショウカイの腕にかかってくる。
腕にかかった力は肩にかかり、肩が外れた音が耳に聞こえてきた。
ひどい痛みにショウカイは顔を歪めるが歯を食いしばって耐える。
熊公が根元まで刺さるけれどまだそこで終わらせない。
熊公はまだフェアリーイーターに突き刺さり続けショウカイの腕までが中に入っていく。
最後には肩までずっぷりとフェアリーイーターの頭に突き刺さった。
「ハァッ……や、やった……か?」
グラリとフェアリーイーターの体が揺れて後ろに倒れる。
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