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意外なる天敵4

 あくまでもパンチなのでシズクを消し飛ばしてしまうほどではない。

 だからといってシズクがぶっ飛んでいった様子もない。


 どこに行った。


 それに気づいたのはフェアリーイーターだった。

 殴った拳に違和感を感じた。


「あそこである!」


 フェアリーイーターの拳。

 その先端にまとわりついているシズクがいた。


 シズクはフェアリーイーターの拳に体を広げていく。

 その奇妙で気持ちの悪い感触に腕を振るがシズクは離れない。


 掴もうとしても掴んで取ることなどできない。


 苛立ちのままに地面に拳を叩きつける。

 しかしそこに至ってフェアリーイーターは悟った。


「フェアリーイーターではシズクには勝てないであるな」


 地面を叩き割る威力を見せていたのに。

 シズクをまとった拳はこれまでと変わらぬ速さで叩きつけられたにも関わらず地面をへこませすらできない。


 不完全物理無効。

 ショウカイはシズクのスキルを思い出した。


 核以外の部分において、シズクに物理攻撃は一切通用しない。

 そしてフェアリーイーターは魔法への耐性や物理的な力に特化する代わりに魔法に関する全ての能力を捨てた魔物である。


 魔法使いにとってフェアリーイーターが最悪の相性であることに対するように物理攻撃に耐性のあるシズクに対してフェアリーイーターは相性が悪かった。


 逆転の一手が現れた。


「……シズク!


 そいつの腹の中に妖精が捕まっている。

 口から入って助けてくれ!」


 その上シズクは会話もできるほどの知恵を身につけている。

 いつものシズクだと理解しているか分からないような指示でも今ならこなせると思った。


「分かりました!」


 シズクはスルスルと腕を伝って顔の方に向かっていく。

 何かをするつもりだと察したけれどもう遅い。


 腕をいくら振り回してもシズクは止められず口の中に入っていった。

 苦しそうにのたうち回るフェアリーイーター。


「やったぞ!」


 フェアリーイーターから吐き出されるようにしてシズクが口から飛び出してくる。

 薄く透けた体の中には何体もの妖精の姿が見えた。


「シズクにだけいい格好はさせません!」


「ノワール!


 大丈夫なのか?」


「シズクのおかげで少し休めましたから」


「それにあの女……ソリアも諦めてません」


 見るとソリアも剣を構えてフェアリーイーターを睨みつけていた。

 シズクに気を取られている間にソリアもゆっくりと呼吸を繰り返して体を休めて体力の回復に努めていた。


 衝撃で体の奥深くに受けたダメージは中々簡単に抜けるものではない。

 それでもシズクのおかげで一息つくことができて、まだ戦えそうだと思った。


 ソリアとノワールの目が合う。

 シズクが妖精たちを逃す時間が必要だ。


 妖精を逃すまいとシズクに手を伸ばそうとしたフェアリーイーターにノワールが飛びついた。

 傷ついていない目の上あたりに思い切り牙を突き立てる。


 ノワールも学習している。

 何度も掴まれて投げられるなんてことを繰り返しはしない。


 噛み付いたまま勢いをつけて体を跳ね上げさせて引き剥がそうと伸ばされた手を回避する。

 そのままフェアリーイーターの肉を食いちぎりながらノワールは頭を蹴って飛び上がり、フェアリーイーターの後ろに着地する。


 振り返ったフェアリーイーターの目に映ったのは剣を振りかぶるソリア。

 目と目の間を大きく切り付ける。


 心なしかフェアリーイーターの動きも鈍いような気がするが、それ以上にソリアの動きも鈍くなっている。

 多少怯みはしながらもフェアリーイーターは剣を振り終えたソリアに拳を振るう。


「全員放てーーー!」


 フェアリーイーターの背中が爆発した。

 正確には多種多様な属性の魔法が一斉に当たって爆発したように見えた。


「私たちもやる……私たちだって!」


 それは妖精たちの全力の一撃だった。

 どの道負ければ終わりの戦いなのだ、大人しく戦いの結果を待つだけなど出来ない。


 スーは妖精たちの棲家まで急いだ。

 シズクが妖精たちを助け出したなんてことは知らなかった。


 ただここで戦わなきゃ後はない。

 ショウカイならどうにかしてくれるという不確かな自信がスーを動かし、スーが妖精たちを動かした。


 本当の最悪妖精全員で腹の中に飛び込めば破裂でもさせられるんじゃないかなんて思っていた。


 いかに魔法に対する耐性があると言え、魔法に長けた妖精が全力を注いで放った魔法。

 フェアリーイーターにダメージはしっかりと与えていた。


「ふ、ふふっ、ふははっ!」


「トリシア?


 ……あっ、いた」


 焦点の定まらない目で怪しく笑うトリシアはソードキング改の埋まるクレーターにいた。

 なんだか様子がおかしい。


「ソードキング改はこれぐらいじゃ壊れません。


 壊れるんですが、師匠が作り、私が改良を重ねたソードキング改は自己修復ができるんです!」


 地面に埋まっていたソードキング改が勢いよく地面から飛び出してくる。

 

「ここまで私は役立たずでした……」


 ツーッとトリシアの鼻から血が垂れてくる。


「何か役に立たなきゃ私は一生、グズのままになっちゃう!」


 トリシアは持てる全ての魔力をソードキング改に注ぎ込んだ。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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