意外なる天敵3
ソードキング改は避けることができずにフェアリーイーターの振り下ろしの下敷きになった。
やっと1匹仕留めたと何度もソードキング改に拳を振り下ろす。
ソードキング改は何度も叩きつけられた結果小さなクレーターの真ん中で地面に埋まってしまっていた。
「はああああっ!」
「やああああっ!」
挟み撃ちにするようにノワールとソリアがフェアリーイーターに襲いかかる。
「ぐぅ!」
ソリアの方は見えていない。
フェアリーイーターはノワールの方を向くと地面と平行に腕を大きく振った。
飛んで回避したノワールに拳が迫った。
先にソリアの剣が背中を大きく切り裂くが完全に怒りに飲み込まれているフェアリーイーターは痛みを感じない。
そのまま拳を振り切る。
鈍い音がしてノワールが吹き飛んでいく。
「くっ、ノワール!」
腕の力で飛び上がったフェアリーイーターは両手を組んでノワールにトドメを刺そうとした。
咄嗟にショウカイはノワールを召喚する。
グッタリと地面に倒れたノワールはショウカイの目の前に現れて致命的な一撃は避けられた。
「こっちだ!」
ソリアが氷の魔法をフェアリーイーターにぶつける。
効果は薄いが気をひくためだ。
「……どうする」
どうしたらいい。
フェアリーイーターを倒すにはすでに食べられた妖精を諦めなければいけない。
しかし圧倒的な回復力と力の前に気づけばこちらが不利になっている。
戦闘に参加できるほどショウカイの能力も優れていない。
ミクリャやシュシュも機会をうかがってはいるがフェアリーイーターにダメージを与えられるほどの攻撃力がない。
動きを止められても短い時間であるし、連発しても効果が薄くなってきてしまう。
打てる手が見つからない。
甘く見ていた。
舐めてかかっていたのではないが何とかなるだろうと思っていた。
「……ソリア!」
ソリアが殴り飛ばされる。
剣で防いで直撃は防いだけれど自分の体よりも大きな拳に受ける衝撃はバカにできない。
「どうするであるか、ショウカイ様」
「…………どうしたら……」
このままでは全滅する。
何か逆転の一手がないと妖精どころか自分達の命も危うい。
「魔法も通じないしあんな回復が早い相手どうしたらいいんだ……」
もう無理だ、そんな思いが胸の奥底にジワリと湧き始める。
そんな時だった。
『シズクが進化を終えました。
魔物と絆を深め複数の魔物を進化させることに成功しました。
従えた魔物との絆が強くなりました。
スキル魔物交感力、スキルスキル借用術を習得しました。』
久々に見た表示。
サモナーがそうさせたのか、詳細鑑定がそうさせたのかよく分からないこの表示がショウカイの前に現れた。
「ショウカイ様、何を見ているであるか?」
シュシュから見るとショウカイが突然虚空をジッと見つめ出したように見えた。
『シズクがあなたの危機を察しています。
シズクがあなたに呼んでほしいと思っています。』
「……シズク」
「シズクがどうかしたであるか?」
「……シズク!」
訳の分からない自信。
これはシズクの感情だ。
どんな魔物か相手であれ負けないという自信がシズクにあって、それをショウカイは感じていた。
呼び出す距離としては1番遠いかもしれない。
だからだろうか。
地面に小さい魔法陣が浮かび上がって強く発光した。
これまでは短い距離だったから目に見えないほど一瞬で呼び出されていた。
シズクのいる森とはかなり距離があるので召喚にもわずかに時間を要した。
それでもほとんどかかってないも同然だった。
「……シズク?」
地面から水が湧き上がっているような不思議な生き物が目の前に現れた。
シズクなのだけど知っているシズクのフォルムとは違っている。
丸くて小さいゲームに出てくるようなイメージしてだったスライムだったのに。
噴き出している噴水のような掴みどころのない形をしたシズクのフォルムが段々と落ち着いていく。
「お久しぶりです、主君」
「本当に……シズクなのか?」
「はい」
シズクが笑った。
形の落ち着いたシズクは女性の形を成していた。
見ていて不思議だった。
シズクの体はほんのりと青い半透明。
水ともゲル状とも言えて言えないようなシズクは柔らかな微笑みをたたえた美人の姿となって、その上会話までしている。
ポカンとするショウカイを横目にシズクはフェアリーイーターの方に顔を向けた。
「あれが主君を困らせる悪者ですね」
シズクは真っ直ぐに手を伸ばして魔法を使った。
空中に水の槍が生まれ、飛んでいく。
フェアリーイーターの腕に突き刺さってフェアリーイーターが振り返った。
ペタペタと走ってシズクはフェアリーイーターに駆け寄っていた。
特別早くもない普通のダッシュ。
「シ、シズクー!」
横振りのフェアリーイーターの拳。
避けることもできずべチャリと音を立ててシズクに拳が当たる。
拳が振り切られた後シズクはそこにいなかった。
「……シズクはどこ行ったであるか?」
青くなったショウカイは気づいていなかったがシュシュは気づいた。
シズクがいないと。
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