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隣国へ5

 テラットはポンポンと足の付け根らへんを軽く叩きながらショウカイを見る。

 そのジェスチャーが何を意味するものかすぐに分かった。


 足ではなくお尻を指し示しているジェスチャー。

 揺れるたびにショウカイの表情が曇るのをテラットは見ていたのである。


「無理もありませんよ。


 普段から馬に乗ることもある私でもだいぶきてますから」


 これなら無理にでも馬に乗っていた方がみんな幸せだったかもしれない。

 ショウカイのお尻はともかく、テラットのお尻は無事だったかもしれない。


「あの、みなさんあんまり話ってしないんですか?」


 きっかけがどうあれ会話が始まった。

 この際だから聞きたいことを聞いてみよう。


「……ああ、いえいえ。私たちのパーティーはそれなりに会話しますよ。


 仲も良い方だと思います」


「あまり話しているのを見ないので……」


 最初に馬車を買うように勧めてくれたレーナンですら静か。

 夜に焚き火を囲っている時も誰も話さないので不安すら覚えてしまう。


「元々物静かなジーなんかはあまり話すことはないですけどね。


 私たちがあまり会話をしないのは仕事中だからですよ。


 しっかりと警戒を怠っていなくてもベラベラと会話しているとよく思わない依頼主の方はいらっしゃいます。

 さらにこうした長期の依頼で依頼主の分からない内輪の話をしていると疎外感を感じる人もいます。


 それで怒るだけなら、まあ、構わないと言ってはなんですが最後にはギルドに悪く言う人も中には。


 なので依頼主の前では黙して淡々と仕事をこなすのです」


 確かにずっと会話していたら警戒もしていないように見えるかもしれない。

 パーティーメンバーで話していて疎外感を感じるというのも感じることはあるだろう。


 けれどショウカイ個人の考えとしては話している方が無言の気まずさよりはずっといい。


「特にレーナンなんかは話すのも好きなんですが初日の態度が馴れ馴れしすぎたのでウィランドに絞られたんですよ」


「あははー……そんなことが」


「ショウカイ様が悪く思われることではありません。


 これが気の短い尊い方なんかでしたら今ごろは依頼ではなく、逃亡して国を出ていたかもしれないんですから」


 そんなに怒るような態度だったか疑問に思うショウカイ。


 実際にはレーナンが馴れ馴れしいと思ってもそこまで怒って問題にする人の方が少ない。

 ただし怒る人は大体声がデカく、護衛依頼を頼むような人なら問題にする人の確率は世の中一般の人よりも高いと言える。


 レーナンもショウカイは怒らないだろうと人を見て発言していたものの、他人の腹の中は分からないものである。

 護衛依頼が始まってしまえば止めるとはいきにくいがまだ護衛が始まる前で取り消しされる可能性だってあったのでレーナンはウィランドにひどく怒られたのだ。


 ショウカイが問題にしなかったからよかったという話ではない。

 軽々しい態度をとって長い間一緒にいる依頼主を怒らせてはいけないので機嫌を損ねそうな行為は厳禁になった。


 だから次の日にあったレーナンに元気がなかったのかとショウカイは合点がいった。


「レーナンは賑やかし担当ですからそろそろ黙っているのも限界ですかね」


 チラリとテラットが後ろを見る。


 ちょうどテラットの座っている座席の後ろぐらいがレーナンの並走しているところになる。


「私は皆さんから話していても大丈夫ですよ。


 むしろ賑やかな方がいいぐらいです」


「おや」


 夜全員で焚き火の揺れる炎をただただ見つめているのはシュールで好きじゃない。


 ショウカイの言葉に少し驚いたような表情をするテラット。

 今は護衛を雇っているが1人で旅をするぐらいなのだから騒がしいのが嫌いだと思っていた。


 別にショウカイも騒がしいのが好きなわけではない。

 節度がないのはむしろ嫌いだしうるさいのは遠慮したい。


 けれども極端に全員無言というのもそれはそれで気まずいので話しててもショウカイは怒りはしないという話である。


 レーナンは初日のような元気がある方が彼女らしい。


「わかりました。ウィランドとレーナンにもそう伝えておきましょう」


 テラットが微笑む。


「ふふふ、本当にいい依頼主で助かります」


「こちらこそ良いパーティーに巡り会えて良かったです」


 会話をされることを嫌がるかもしれないなんて考えているとは思いもしなかった。

 真面目で丁寧だし不満はないのにショウカイの中でウルガスの評価がさらに上がる。


 今のところ大当たりである。


「ショウカイ様」


 ウィランドが声をかけてくる。


「何でしょうか」


「だいぶ日も落ちてきましたしそろそろ野営の準備をしたいと思います」


「分かりました」


 夜は魔物の危険性が高くなるので安全第一に行くなら多少早くてもしっかりと野営の準備をしておくのが良い。

 自分だけ何もしないのは心苦しかったショウカイは2日目ぐらいから何もしなくてもいいというウィランドを押し切って野営の手伝いをしている。


 馬車があり持っていける荷物にも余裕があったし、事前準備のための金銭的な余裕もあった。

 本当なら地面にそのまま寝ているのだが今回はテントも用意できていた。


 2つのテントを設置して片方は女性用、もう片方は男性用とする。

 ショウカイは1番安全な馬車で寝ることになっていてこれはウィランドが譲らなかった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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