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妖精を喰らうもの6

 なんと悲壮な覚悟だろう。

 この妖精は自ら犠牲になろうとしている。


 自分はどうなってもいいからフェアリークイーンと仲間と助けてほしい。

 差し出せるようなものは何もない。


 でも人間はただで助けてくれるような種族でもない。

 他のどの種族でもただで助けてくれる種族なんてほとんどいないだろうけど。


 妖精は人間の間で高値で売れると聞いたのでお礼になればと思った。

 それでみんなを助けられるなら喜んで売られていく。


「いらないよ」


「えっ」


「君をどこかに売り飛ばすことなんてないよ」


 ミクリャにやったように指先で優しく頭を撫でる。


「俺は、俺たちは君たちを助けたいから来たんだ。


 そんなことをしなくても全力を尽くすよ。


 だから、全部終わったら君たちは仲間と一緒に幸せに暮らすんだ」


「ごめんなさい……」


「何が?」


 ポフリと緑の妖精がショウカイのお腹に頭を沈めた。

 未だにお願いポーズのままの緑の妖精はグリグリとショウカイのお腹に頭を擦り付ける。


「人間って私たちのことをえっちな目で見てるって女王様が言ってたから、きっとあなたもそんな風に私たちを見ていると思ってたわ」


「えっと……?」


「変態なら自分の身を捧げるといえばちょろいと思いました……」


「……そうかい」


 ショウカイは妖精から誘惑されていた。


 ちょっと弱い自分を見せてお願いすればきっと同情してやってくれるはずだと思っていた。

 最悪の場合は本当に身を捧げる覚悟は本当にしていた。


 さらりとそんなことをするつもりがないと言われて、ショウカイがウソをついてないことが目を見て分かった。

 決していやらしい目ではなくて優しくて、なんだか安心する。


「私はスー。


 もし……もしあなたが私たちを助けてくれたのなら、私はあなたに身を捧げるわ」


「別にそんなことしなくても……」


「助けてくれたらの話……」


「そんなことしなくてもいいとご主人様が言っています」


「そんな怖い顔したって私は引きませんよー」


 歯を剥き出しにしたミニサイズノワールがいつのまにかスーの横にいた。

 しかしスーはニコリと笑ってノワールを撫でる。


「こんな優しいお方の連れてる方ですから、きっと優しいのでしょうね。


 主人を守ろうとするその心意気は素晴らしいです」


「むぅ……」


 ノワールも本気で危害を加えるつもりはない。

 逆に褒められてしまって、毒気を抜かれてすぐに牙を剥くのをやめる。


 「そんなに警戒しなくても私は助けてもらったら人間さんのものになるので、まだ大丈夫ですよ」


「いやいや、スーをもの扱いして受け取るとかできないよ」


「ご主人様には私がいる。


 お前みたいなちっちゃいのはもう十分だ」


「あら、まだいらっしゃって?」


「いるである」


「ん!」


「こらこら……みんなして……」


「まあトリシアにだけバレなきゃ大丈夫である」


「……確かに」


 妖精にまでみんなのことを隠す必要はそう言われてみればない気がする。

 トリシアは女性用のテントの方にいるのでみんなが出ていても大丈夫。


 トリシアもいきなりテントに入ってくる人ではないのでバレはしない。


「……いや、トリシアにも話す必要もあるかもな」


 フェアリーイーターがどれほどの強さの魔物なのか分からない。

 Sランク犯罪者のジュードはソリアですら敵わず、ショウカイが何人いたってものの数にもならなかった。


 Sクラスの魔物であるフェアリーイーターは決して楽な相手ではない。

 ソリアなら倒せるだろうではなく、最初から全力を尽くす必要があるだろう。


 いきなりみんなのことをお目見えしてトリシアを動揺させるより話をして落ち着いて協力できるようにした方がいい。

 ここまで旅をしてきてトリシアの人となりはそれなりに分かっている。


 伝えれば動揺はするだろうけどショウカイのことやみんなのことを言いふらしたりすることはない。


「ソリア、トリシア、ちょっといいか?」


「はいはい、なんで……な、なんですかそれ!


 ま、魔物じゃないですか!」


 女性用のテントを訪ねる。

 外から声をかけられてトリシアが出てくるとそこにはノワール、ミクリャ、シュシュを連れたショウカイがいた。


 ショウカイの横にはノワールがいて、肩にはミクリャが座って、頭の上にシュシュが乗っている。

 ここにシズクもいれば完璧だったけどきっとシズクの方も進化を頑張っているはずだ。


 魔物を引き連れたショウカイが目の前にいて、後ろに下がろうとしたトリシアが尻もちをついた。


「こ、これはどういうことなんですか!」


「お話しすることにしたんですね」


「ソ、ソリアさん!?」


 剣帝といえば魔物を見ると目の色を変えて倒しに行くような人だと聞いていた。

 そんなソリアが魔物を見て剣を抜かないどころか非常に冷静に状況を見ている。


 トリシアは状況が分からなくてテントの端に追いやられる。


「俺はトリシアに謝らなきゃいけない」


「な、何をですか……?」


 ちょっとだけ格好をつけた歩き方でノワールが前に出て胸を張って立つ。

 そしてミクリャもノワールの背中に乗って胸を張る。


「俺は妖精使いじゃないんだ」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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