妖精を喰らうもの3
ただしそれ以外のことは説明しない。
聞かれると洗いざらい話さなきゃいけなくなるので最低限妖精の言葉が分かる程度にしか言わなかった。
その結果トリシアはショウカイを妖精使いと言う職業の人だと思った。
妖精の力を借りることができる職業でレアな職業で普段の様子は魔法職と変わりがないので言われなきゃ分からない。
ショウカイの職業はサモナーだけど、そのような職業であること予想もつかないだろう。
希少な魔法職に会うことができてトリシアは興奮している。
「それで妖精さんの言葉が分かるのですね!
ですが本当なら非常に厄介な問題ですね……」
「そうなのか?」
「フェアリーイーターは魔法耐性が高く回復力もすごいんです。
フェアリーイーターなんて呼ばれてますけど人にとっても魔法職なら天敵みたいな化け物です。
冒険者ギルドが依頼を出すならSクラスの依頼になりますよ」
「そうなのか……」
「えっ、まさか止めるつもり?
ダメ、お願い、助けてよー!」
「髪を引っ張るなよ!」
「なんて言ってるんですか?」
「仲間がピンチだから止めないでって」
「妖精のお仲間がピンチなら当然の話ですよね……」
ピーの気持ちも分からないでもないがトリシアはフェアリーイーターに対して及び腰である。
魔法が効きにくい相手に対して魔法使いは足手まといにしかならない。
魔塔の魔法使いでも三級はまず相手にならない。
二級でも厳しく、一級でどうにか戦えるくらい。
トリシアは三級であっても戦闘力は低めの研究者タイプである。
フェアリーイーターなんて相手にならず、簡単に倒されてしまう。
「魔法でも物理力も行使できる土とか……水とかそんなのを使えれば多少は戦えるのですけど私は火が得意属性なので……」
扱えないことはなくても威力は低い。
火を使ったとてさほどの物でもないのに、他の属性なら四級とだっていい勝負になってしまう。
むしろ負けてしまうかもしれない。
「私はショウカイさんについて行きますよ」
いつまでも自己嫌悪に陥っていちゃダメだとソリアが奮起する。
村を助けたいというソリアのワガママにショウカイは付き合ってくれた。
結果的にはSランク犯罪者と戦うことになり、非常に危険なことに巻き込んでしまった。
今度はソリアがショウカイに返す番だ。
行かないと言うなら全く構わないし、行くと言うなら最後まで付き合うつもりだった。
ショウカイを1人では行かせない。
まだほんのりと恥ずかしさで赤いソリアとショウカイの視線がぶつかる。
トリシアを見るとトリシアと視線がぶつかる。
逆の考えの2人がショウカイの判断を待っている。
「……トリシア、近くに大きな町はある?」
「町は……少し離れたところに大きな町がありますね」
「フェアリーイーターは積極的に討伐する対象になるか?」
「あ、はい、多分冒険者ギルドにでも言えばすぐにそうなると思います」
「…………トリシアは1人で町に行って冒険者ギルドにフェアリーイーターのことを伝えてほしい」
「それってまさか……」
「俺は妖精を助けに行く」
助けを求められた以上放ってはおけない。
この世界に放り出されて、ショウカイは見捨てられた。
だからショウカイは出来る限り見捨てることはしたくない。
聞いてしまったこともある。
それはフェアリーイーターに妖精が食べられたからと言ってすぐさま妖精が死ぬのではない。
腹の中でしばらく囚われてじわじわと魔力を吸い上げられて死んでいくのだ。
つまり早ければ早いほどフェアリーイーターに囚われた妖精が生きている可能性がある。
「トリシア、もし俺たちがダメだったら君が希望だ」
「そ、そんな……」
トリシアにはショウカイに義理立てする理由はない。
妖精の生息地は他にもあるのだし無理してそこに行く必要もない。
ただトリシアに課されたのは町に行って冒険者ギルドにフェアリーイーターの存在があると報告すれば良いだけの話。
しかしそれではショウカイたちはどうなる。
トリシアが急ぎに急いだとしてフェアリーイーターの討伐開始にはどれほどかかる。
Sクラスの魔物だけれど現在のところ妖精以外では急を要しない。
報告を受けて、上がそれを確認して、高ランクのパーティーに調査を依頼する。
高ランクのパーティーが調査を終えて、報告して、上がそれを確認する。
存在が認められるとギルドが依頼を出して、冒険者が依頼を受ける。
きっと大掛かりな討伐になるから人数も集める。
もしかしたら危険度が低いので遠くまで募集をかけることになるかもしれない。
いつフェアリーイーターの討伐が始まるのか見当もつかない。
「それじゃあソリア行こうか」
「分かりました」
2人は今死地に向かおうとしている。
「あ……」
2人が荷物を持って歩き出す。
行かせちゃいけないのに。
こんなところで死なせちゃダメな人たちなのに。
「ま、待ってください!」
「どうした?」
「私も……私も行きます!」
「へっ?」
「頼りないかもしれません。
魔法は通じないかもしれません。
でも私にはゴーレムがあります。
私も戦えます、私も連れていってください!」
口を出た言葉はトリシアの冷静なところが考えるものとは真逆の言葉であった。
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