妖精を喰らうもの2
「本当にだべませんかぁ?」
「食べないから」
「じゃあこれ解いてくださいー!」
「逃げそうだからダメ」
「なんでですかぁー!
逃げません!
逃げませんし全部話しますので〜」
「はぁ……分かったよ」
いつの間にか騒ぎを聞きつけてノワールとミクリャも来ていた。
強い妖精なら逃げられるかもしれないけどシュシュの糸も破って逃げられない妖精がこのみんなを振り切った逃げられるとは考えにくい。
シュシュが糸を解いてやる。
悪い魔物ではないのかもしれないと妖精が顔を拭いながら思う。
「うーん、これ使えるか?」
腕でゴシゴシと顔を拭くのではなかなか綺麗にならないだろうとハンカチを横に置いてやる。
人用サイズだからでかいけど端っこを使うぐらいなら出来るはずだ。
「ぶびー!」
ハンカチの角を引っ張り出して顔を拭き、鼻をかむ。
「あなた悪いクモじゃないのね」
「……俺はクモじゃないぞ」
「えっ?
だってそのちっこいのとか、ちっこいのとか……それは違うみたいだけど……」
「ちっこいのとは何事であるか!
お前こそちっこいである!」
ちっこいの1はシュシュでちっこいの2はミクリャ、それと言われたのはノワールである。
「クモじゃん!」
確かに言われてみると、引き連れている魔物のうちシュシュとミクリャはクモ関係の魔物である。
ショウカイが中心だし、そう考えると上位のクモに見えるのも分からない話ではない。
人間が魔物を連れているよりも人間に擬態した上位のクモが魔物を連れていると考える方が自然なこと。
「俺は人だ」
「え、ええええっ!
ウソ!
だって今私と話してるし……」
「なんだ、人が魔物と話しちゃダメなのか?」
「そーじゃないけど……」
「俺はショウカイってんだ。
魔物と話すことができるんだ。
だから君の言葉も分かるんだ」
優しく微笑んでみる。
ビクビクとする妖精の警戒心が少しでも解ければと柔らかい表情を作る。
出会いは最悪だけどショウカイは妖精の粉が必要なのでこれを逃したくない。
か弱い妖精に上位の魔物が下手に出ることはない。
本当に人なのかもしれないと思い始める。
人だとしたら。
妖精はまた目をウルウルとさせる。
「人間さん、助けてください!」
笑顔で接してもダメだったかと諦めかけた。
妖精は落涙しながらショウカイに向けて寝転がった。
「……何してんの?」
妖精式お願いが寝転がることなのかな。
「人の世界では頭を低くすればするほどお願いの意を示していると女王様が言っておりました!
どうか私たち妖精をお助けください!」
背筋をピンと伸ばし、手を横につけてうつ伏せに寝転がる妖精。
頭の位置は低いかもしれないけど人の世界でそんなお願いしたらドン引きされて終わりだ。
「何してるであるか?」
「うっさいちびクモ!」
「なぜ、ワタクシにそんな敵対心満載なんであるか!」
「まあ助ける助けないは話聞いてからだ。
何が起きてるのか教えてもらってもいいか?
あと起きていいからね」
「ありがとうございます!
私はピー、火妖精です」
燃えるような赤い瞳と赤い髪の小さい人間の女の子のような容姿をしている。
大きさの他には背中に半透明の綺麗な羽が生えていることが人との違いである。
ピーは床に伏したまま話し始めた。
起き上がってもいいのに人間の風習を勘違いしたまま頭を一番下に下げるために寝転がっているのだ。
あまり言うとまた威圧感を与えてしまいかねないので強く言うこともできない。
「私たちポラモンの妖精は危機に瀕しているのです!」
「で、その危機ってのはなんなんだ?」
もうずっとそこで話は止まっている。
「私たちの天敵……フェアリーイーターが現れたのです!」
ーーーーー
「よ、妖精使い……何ですか?」
「……まあ、似たようなもんだ」
「う、うわぁー!」
目を輝かせたトリシアがショウカイの手を取った。
どうやらトリシアの願望は何もかも投げ打って寝たいだったようでトリシアは手足を投げ出して丸一日寝こけてしまった。
トリシアはやたらとスッキリとした顔をしていた。
幸いなことにソリアはトリシアよりも早くに目が覚めた。
冷めた時には胞子の効果は無くなっていたので拘束も解いたのだけど不幸にも混乱している間のことを全部覚えていた。
ショウカイの服を破って迫った。
今度はソリアが手で顔を覆っている。
キノコ採取もそれなりの量を取ることができた。
トウヒキノコも水を入れておいた皿が空になっていつの間にかいなくなっていた。
いよいよ妖精がいると思われるところに向かうことになったのだけど、そこは本当に妖精がいるところであることが分かった。
ピーと出会ったためである。
トリシアとソリアが起きる前に話を聞いたのだけどそれはショウカイだけが抱えておくには少し重たすぎた。
なので2人にも説明する必要があると考えた。
けれど妖精に出会ったことはいいとしても妖精の話を聞いたことに合理的なウソが思いつかなかった。
妖精と会話出来ることを誤魔化しながら聞いた内容に触れるのはとてもじゃないけどできることじゃない。
なのでショウカイはとりあえず妖精の声が聞こえることをトリシアに打ち明けた。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます!
もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、
ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
評価ポイントをいただけるととても喜びます。
頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。