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妖精を喰らうもの1

 叫びが響き渡った。

 どうやらテントの中で起きたようでショウカイが慌てて見に行く。


「どうした、シュシュ?」


「ショウカイ様、不届き者を捕まえたである!」


「不届き者?」


 テントの中ではよだれを垂らして熟睡するトリシアがいて、その横でシュシュとシュシュと同じくらい大きさの糸の塊が転がっていた。


「だずげで〜!」


 よくよく見てみると頭が出ていて涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして泣きじゃくっている小さい女の子だった。


「こんなどころでじにたくないよー!


 うわぁーん!」


 中で暴れようとしてるのか頭だけがぴょこぴょこと動いている。


「やだー!


 助けてー!」


 なんだかこんな光景見たことがある。

 ショウカイの頭に突き刺さってきたスズメみたいな魔物、ファンバランのことを思い出した。


 ワチカミの糸にグルグル巻きにされてファンバランもこんな感じで泣き喚いていた。


「えっとこれは?」


「妖精である」


「これが妖精?」


 小さい女の子なイメージだったからさほど外れたものでもないけど。


「はっ、に、人間さん、人間さんですよね、助けてください!


 悪辣なクモに捕われてしまって大ピンチなんです。


 ……ああ!

 でも人間さんには私たちの言葉は分からないんでした!


 いや、でも幼気な妖精がクモの糸で捕われていたら助けれくれるはず!


 たーすーけーてー!」


 せっかくの妖精との初邂逅であるが第一印象はなんかうっさいなだった。


「なんで捕まえたんだ?」


 妖精がいたとしてもあんな風に捕まえる必要まではなかったのではないかと思う。


「こいつ荷物を漁っていたである」


「えっ、妖精ってドロボーすんの?」


「はわわ……人間さんかと思ったらお前もクモだなー!」


 ショウカイに気づいた妖精は人間なら妖精に悪いようにしないだろうと助けを求めた。

 普通の人間には妖精や魔物の言葉は分からないので察して助けてくれることを期待していた。


 しかしショウカイは普通にシュシュと話し始めた。

 つまりはショウカイは魔物が人に化けたものだと妖精は思った。


 クモと話していて、しかも様付けで呼ばれている。

 ショウカイの正体は高位のクモだとズバリ推測した。


「うわぁー、女王様ぁー!


 情けない私を許してください!


 先に逝く失礼を許してくださいー!」


「これが妖精か……」


 ショウカイはスッと手を伸ばして、迷って空中を彷徨わせた。

 鷲掴みにするのもなんだか可哀想で、しょうがなく糸のところを摘んで妖精を持ち上げる。


 頭しか出てないのでとりあえず顔を見てみる。

 涙と鼻水でひどいことになっているけど可愛らしい顔立ちはしている。


 赤みかがったウェーブした髪の毛は激しく頭を振っていたので爆発したみたいになっている。

 表情も騒がしくしないようになのか口を一文字に結んで涙を堪えているのでいじめているみたいで悪い気がしてきてしまう。


「食べないでぇぇぇ……」


 堪えきれずに泣き出す妖精。

 これじゃあどうみても悪者はショウカイだ。


「食べはしないからどうして荷物を漁ったか聞いてもいいか?」


「違うんです、ちょっと何か毒でも持っていないかと思いまして〜」


「ど、毒?」


 なんだか物騒だ。


「うぇ……命だけはお助けください……


 こんなちび妖精食べたって美味しくないですよ!


 そうだ、妖精の粉あげますから、許してください!

 クモサイコー!


 イェーイ!」


 そんな泣きそうな顔で褒めにもなってない褒めを繰り出して命乞いしなくてもショウカイに妖精を食べる趣味はない。


「ちなみにシュシュは妖精食べるの?」


「ん?


 ワタクシは食べないであるよ?」


「そ、そんなちんまいクモに与えるぐらいならオオグモのあなたが食べてください……いや食べないでほしいんですけど、いらないからあげるみたいにしないでください!」


 シュシュが今妖精を食べるかどうか聞いたのではなく、クモが妖精を食べるのかどうか聞いたつもりだった。


「ああ、クモは妖精も食べるであるよ」


 サラッと残酷なことを言う。


「ただ共存しているクモもいるので関係次第である」


「そなんだ……」


「私をどうするつもり!


 食べないなら助けてよー!」


 うにうにと暴れる妖精をどうするべきかショウカイも悩む。


「なんで毒なんて探してた?


 そんなもの持って……なくもないけど」


 断崖絶壁で取ってきた草の中には毒草もあった。

 販売するのは難しくても魔塔では使い道があるので買い取ってくれる魔道士もいるのでトリシアがホクホク顔で個別の袋に分けてちゃんと整理していた。


 だから毒物がないとは言えない。


「みんなを……みんなを助けるためなんです。


 みんなが危ないんです!


 うわぁーん!」


 再び泣き出す妖精。


「泣かないでくれよ……」


 話が進まないし罪悪感に苛まれるしで泣いてもいいことなんてない。

 糸巻きにされて木にぶら下げられたソリアと何故か熟睡するトリシアと泣きじゃくる妖精。


 カオスと言わずして何という。


「食べない!


 食べないから何があったか話してくれ」


 このままだとトリシアもいつ目を覚ますか分かったものじゃない。

 みんなを助けるためなのはわかったから、なんでみんなを助ける必要があるのか教えてほしかった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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