歩いて行こうよ、のんびりと5
「ただキノコのところはもうだいぶ妖精のところまで近いので!」
あまり迷惑はかけられない。
いくつか行きたいところはあったけれど醜態を晒した今通り道にあるところだけを寄ることにした。
ショウカイが取ってきてくれた薬草にはリストにない薬草も多かったけど希少なものもいくつかあった。
ポイントにはならないけど高く売れそうなのでひとまず金銭的な目標は達成である。
「キノコって何をとるの?」
「アヴァブォ茸と呼ばれるキノコです。
食べても美味しいキノコなんですが薬剤の材料にもなるんです。
量を消費するものなのでいつも不足気味なものなんです」
特に珍しいものではなく大量消費するものだから足りないようなものである。
一般の人でも取れるキノコだけど量が必要なので今回は少し森の奥に入ってキノコを探すつもりだった。
「魔塔全体で出せは足りないこともないんですけどそうすると私たちの分がなくなってしまいますからね」
キノコ料理についてはトリシアも好きなので死活問題である。
「森の奥ってのは安全なの?」
「多少は魔物もいますが苦労するようなレベルの強い魔物はいません」
「なら大丈夫そうかな」
旅は続く。
迷惑をかけたからとトリシアは積極的に野営なんかの準備をしている。
意外とトリシアはテキパキとして手際がよく、料理係も自ら進んで行っていた。
実は料理上手なトリシア。
知識もあるのでそこらの野草なんかも採取してきてさっと作る料理は美味しかった。
負けた気がするなんてソリアは呟いていた。
ソリアは実は料理が下手くそだったのでそこに関しては気がするではなくて、本当に負けている。
「なんかジメジメしてるなぁ」
結構な日数がかかってようやくキノコがあるという森にやってきた。
地面は湿っていて空気も湿度が高い感じがして、なんだかすっきりとしない森の中を地面に目をこらして進む。
背の高めな木々が生い茂っていて日の光を遮っているから昼間なのにやや暗い。
木々の根元に結構キノコが生えていて見つかるのでキノコを見つけると見つける度にトリシアに声をかけた。
茶色くて特徴もないようなものがアヴァブォ茸であった。
生えている様子を上から見ただけでは分かりにくい。
経験があれば違いがわかるのかもしれないけどトリシアもまじまじと見てアヴァブォ茸かどうか判別していた。
そこで気がついた。
詳細鑑定使えばいいじゃんと。
薬草をとるときにも使ったのにすぐに忘れてしまう。
そもそもこの鑑定能力をショウカイはあまり使わない。
というのも人の秘密を覗き見るもののような気がして使うことに気が進まないからだ。
基本的に言わないなら人の能力は深く突っ込まないのがマナーなので詳細鑑定で覗き見ることもショウカイは控えている。
ワダエにいた時は薬草取りの時に詳細鑑定を使っていたけど普段はこうして旅しているとあまり使わないのですっかりお忘れスキルになっていた。
(もっと活用すべきなのかな……)
小説とかならこういったスキルはみんなバンバン使っているけどショウカイは申し訳なさを感じて使っていなかった。
『アヴァブォ茸
湿度が高く湿った森でよく見られるキノコ。
食用としても美味であり、乾燥させて粉末にして薬品にも利用できる。
似た見た目に毒キノコもあるので経験がないものが取るのは危険である。』
「トリシア!」
「あ、はーい。
……これもアヴァブォ茸ですね。
ショウカイさん、すごい鑑定眼をお持ちですね!
キノコ取りが捗ります!」
「はははっ……」
ショウカイが詳細鑑定を使い始めてからキノコを集める速度が飛躍的に向上した。
呼ぶたびにショウカイがアヴァブォ茸を見つけてくるものだからトリシアも最終的にはショウカイが見つけたキノコをそのまま袋に入れていっていた。
「それにしても魔物も出ませんね」
「そうですね」
出ると聞いていたから警戒していたのに魔物のまの字もない。
「……なんだか見れば見るほどにみんな同じキノコに見えてきます。
よくショウカイさんは判別できますね。
あれは……」
「あれば違いますね、そっちはそうです」
「私視力はいいんですけどねぇ」
ダラダラとした雰囲気でキノコを探す。
「あっ、トリシア!」
「えっ?」
「危ない!」
言う通りソリアの目はいい。
トリシアの近くの木の影に隠れている魔物を見つけたソリアが剣を抜いて地面を蹴る。
木に手をかけて覗き込むようにトリシアを見ていたのは顔のついたエリンギのような大きなキノコの魔物だった。
「あっ、ダメです!」
「えあっ?」
一瞬でキノコの魔物に近づいたソリアは瞬く間にキノコの魔物を両断した。
気づくのが遅れて止められなかった。
「そ、それは剣で倒しちゃダメなんですよー!」
ボンッと音がした。
切られたキノコの魔物が爆発して2人が真っ白い胞子に包まれた。
「ソリア、トリシアー!」
距離があったショウカイは胞子の爆発に巻き込まれなかった。
モワモワと胞子がまっていて2人の様子が確認できない。
胞子を吸い込むわけにいかなくて収まるまで目をこらして2人の動きを待つ。
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