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青色魔塔7

 トリシアが集中して師匠の文字を解読する。

 本としてまとめられているがないようは殴り書きのメモに近かった。


 自分が後で読んだ時に分かれば良いもので、他人に見せるものではなかったので師匠の乱雑な字をそれなりに読み慣れているトリシアでも解読に苦労していた。

 あいつは字が汚かったからなとゴーディアヌスもため息をついていた。


 トリシアが頭を抱えて本の内容を解読する間にゴーディアヌスがトリシアの師匠について教えてくれた。

 トリシアの師匠はローデンバルドという人でこの青色魔塔でも一級魔道士の最上級の階級までいったスゴい人だった。


 主にゴーレムの研究をしていて青色魔塔や他の魔塔でも防衛にローデンバルドが作ったゴーレムが配備されていた。

 それだけではなくてゴーレムを応用した研究や便利なものを作ることもやっていて、魔具昇降機もローデンバルドが生み出したものだった。


「おほん、このクマーベラスは貴族の要望を受けて作ったもののようです。


 貴族の資金提供を受けて新しいゴーレムを作ろうとしたみたいです」


 結構時間がかかって読み終えたトリシア。


 このクマーベラスが作られた経緯としてはこうだ。

 とある貴族がとても子供を愛していた。


 人の護衛だけでは不安でゴーレムも子供を守るために置いておけないかと考えた。

 問題はゴーレムの見た目が物々しすぎることだった。


 子供がゴツいゴーレムを身近に置くことを酷く嫌がった。

 仮に心強い味方だとしても平常時にゴーレムは威圧感があり過ぎるのである。


 そこでローデンバルドは考えた。

 子供の側にあっても威圧感がなく、かつ不自然でもなくてゴーレムとしての機能を有することができるものを。


 鉄や石のゴーレムを可愛くしてみようとしたりと紆余曲折を経てローデンバルドは1つの答えに辿り着いた子供の部屋にあった人形ならば良いのではないかと思ったのだ。

 耐久性や魔法の定着率が悪く動きが鈍いことなどが問題になったが貴族の資金力でお高い魔物素材を使うことで無理矢理それを解決した。


 子供用ゴーレム。

 クマーベラスの正体は子供を守るためのゴーレムなのであった。


 柔らかい素材で出来ているがゆえに戦闘力の期待は薄いが子供に危機が迫るとクマーベラスが身をていして守ってくれる。


「我が師匠ながらスゴいものを作りましたね……」


 誰も思いつかない考え。

 子供を守るために作られた人形など誰が思いつき、そして作ろうというのか。


 試作品であるクマーベラスが作られた後貴族は没落してしまい、子供用ゴーレムの製作計画は立ち消えとなった。


 貴族が没落して財産が没収されてしまって失われた貴重な子供用ゴーレムの試作品が目の前にある。

 トリシアは手が震えてしまいそうな気分だった。


「こ、これをどこで手に入れたんですか!」


 傍目に見ればただの人形。

 魔力をたまたま込めても主人を守るためについて回るぐらいにしか見えない。


 捨てられてもおかしくないものである。


「そう言われても……」


 これはショウカイのものじゃない。

 オーガたちが持っていたもので人が持っている以上に経緯を予想するのは難しい。


 世代交代してまで伝わってるならかなり古くからあることになる。

 入手の経緯まで深く気にしなかったので聞きもしなかった。


「あっと、そうでしたね」


 ショウカイが自分のものではないと説明していたことを思い出す。

 修理を頼まれただけなら物の経緯など知るはずもない。


「それでこれを直してほしいということですか……」


「厳しそうですか?」


 トリシアの顔は明るくない。

 資料は師匠が残した古い本しかなくて、素材の1つであるメットンはもう入手が難しいことも分かっている。


「むむう……ゴーレム研究者としては是非ともやってみたいところではありますが……」


「ありますが?」


「やらなきゃいけないことがあるんです……」


「やらなきゃいけないこと?」


「はい……実は妖精の粉を集めなきゃいけないんです」


「どういうことですか?」


「実は……」


 魔塔は複数ある。

 今ではそれぞれの魔塔同士で交流もあり、イベント的なものも開かれている。


 イベントの中でも大規模なものが全魔塔が1番を競い合う魔塔大会というものがある。

 優勝した魔塔は最下位の魔塔にある程度の要求をできるのだけど今回の青色魔塔は魔塔大会で最下位に沈んでしまった。


 赤色魔塔が優勝して、最下位の青色魔塔に課せられたのが魔物の素材の収集であった。


「私は妖精の粉を集めなければいけないのです。


 三級魔道士の中でも下っ端なんで1番厄介なものを押し付けられまして……」


 青色魔塔で保管しているものは良いのだけど数が足りなかったり手元にないものは集めるしかない。

 妖精の粉という素材は多少貴重で青色魔塔にストックも少なかった。


 要求された量も多くて青色魔塔のストックでは到底足りなかった。

 誰かが取りに行かなきゃならない。


 二級以上の魔道士は自分に割り当てられた素材を自分のストックやお金で解決してしまった。

 なので実際に素材を集めるのは三級以下の素材を出せない魔道士たちが駆り出された。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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