青色魔塔6
トリシアが真剣な顔で調べるものだからショウカイも居住まいを正して真剣にその様子を伺う。
「……確かにぬいぐるみにしては不思議な魔法がかけられていますね」
魔法も破壊されて残りカスのようなものしかないのでそれだけでは細かいことまではわからない。
ショウカイがどんな魔法だったのか言ってくれなきゃ魔法だとも気づかなかった。
だが魔法だと分かってみるとなかなか高度な魔法であることの鱗片が見えた。
「このような魔法、私は聞いたことがなくてな。
しかしこうした動かせるものに魔法をかけて動かすのはゴーレムの領域の話ではないかと思ってな」
「…………ちょ、ちょっと待ってください!」
ハッと何かを思い出してトリシアは研究室の横にある部屋に入っていった。
開け放たれたままの部屋の中から何かを漁る音が聞こえてくる。
しばらくしてトリシアが一冊の古ぼけた本を抱えて室から戻ってきた。
それをデスクに置いてパラパラとめくる。
焦って曖昧な記憶を元にざっくりとめくるから見つけるのに時間がかかってしまった。
「これです、これ!
ナンバー16番!」
1人興奮するトリシアは本とテディベアを見比べてブツブツと何かを呟いている。
「トリシア」
「えっ、あ、は、はい!」
完全に自分の世界に入り込んでしまっていた。
ゴーディアヌスの低い声がぐわんと頭の中で響いて周りに人がいることを思い出した。
「何か分かったのか?」
何かしら分かったことは明らかな態度。
「はい。
おそらくですがこれは私の師匠の作ったゴーレムだと思います」
「ほう?
マークスが?」
「はい、師匠の作ったゴーレムナンバー16だと思います」
「えっと……?」
ゴーディアヌスとトリシアは話が通じているがショウカイとソリアは分かっていない。
「あっ!
ええと、どこから説明したら……」
困惑する2人を見てトリシアも困惑する。
「……いや、急ぎすぎたな。
まずは最初から始めよう」
ゴーディアヌスやトリシアは頭の回転も早く、知り合いで相手のことを知っているので特に説明しなくても会話の中身が分かってしまった。
しかしショウカイはトリシアと自己紹介すら交わしていない。
なんの研究をしているかも知らないし会話からなんとなく察することはできるが出来るなら説明してもらいたい。
「まずは紹介から始めた方がいいな。
彼女はトリシアだ。
青色魔塔の三級魔道士で優秀な学者だ」
「トリシアです。
……まあ、三級すら今落ちてしまいそうなんですけど」
「それでだ。
私はその人形を調べ、その人形にかけられていた魔法を見て、ただの子供のための魔法ではなくこれはゴーレムなのではないかと思ったのだ」
自慢ではないがゴーディアヌスは魔法の知識の関して造形が深く現存する魔法では知らないものの方が少ないと思っている。
特定分野や深くまでいくと知らないことも当然ある。
魔力を込めた人の後ろをついてくる魔法は聞いたこともないし、特別必要性も感じない魔法だと思った。
物を浮かすぐらいのことはできるしわざわざ後ろにずっとついてきてほしいものなんでものもない。
となればゴーディアヌスの知らない分野の話となる。
そして魔法をかけられている対象もまた奇妙だ。
人形に魔法をかける理由が推測できない。
柔らかくて壊れやすいものに魔法をかけるのは難しく、またすぐに破損してしまい、魔法が使い物にならなくなってしまう可能性があるので基本的には壊れにくいものや固いものに魔法はかけられる。
しかも魔法の定着が良くなるように良い魔物の素材を使ってテディベアは作られていた。
そうまでして手間をかけて、かけられた魔法も付いてくるというもの。
丸一日熟睡して頭が冴えている時でも分からないだろう。
ふと1つこうではないかと思いついたのがゴーレムだった。
物を動かす魔法を用いて戦闘だったり日常だったりに便利な物を作り出そうとしていた。
その過程で変な物を作り出していた友人の顔が頭に浮かんだのだ。
「どうやら当たりみたいだな。
この子もゴーレムを研究する魔道士なのだが、この子の師匠もゴーレム研究の第一人者なのだ」
「はい。
おそらくですがこれは師匠の作品の1つです。
ええと……この本は師匠が作ったゴーレムのことが書いてあるものなんです。
その中でこちらのページにあるナンバー16番、クマーベラスがそうなのではないかと思うんです」
「クマーベラス……」
非常にオシャレな名前のゴーレムのことが書かれたページをショウカイとソリアで覗き込む。
味のある字でクマーベラスと書いてあって、下に味のあるイラストまで添えてある。
使った素材やかけた魔法、作った経緯まで書いてあるけど中々文字のクセが強くて読みにくい。
「ははっ、読みにくいですよね。
えっと……えっと?
ちょ、ちょっと待ってください」
何が書かれているのか弟子のトリシアでもパッと読めなかった。
「なんて書かれてるか分かった?」
「癖が強めで……ちょっと」
ぶっちゃけると下手。
イラストの方は物はなんだかわかるのでヘタウマだと表現してもいいが文字の方は下手くそだった。
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