青色魔塔5
「初めて来た人は使わせてもらえないらしい。
私も最初は階段を上って上に上がらされたんだ」
なんでそんな便利なものがあるのに上まで階段で行かされたのだと顔に出ていた。
笑いながらソリアが懐かしいものだと言う。
その時はまだもうちょっと下の階だったから楽だったけど二級魔道士の階まで階段でくるのは楽じゃない。
ショウカイもよく上ったものだ。
再びチンと音がして扉が開く。
「あっ、お疲れ様です、ゴーディアヌスさん」
「お疲れ様。
トリシアの部屋がどこか知らないか?」
「トリシアさんの部屋ですか?
それならもう1つ下の階です」
「そうだったか」
たった1階のことなのでゴーディアヌスは階段を使って1つ下に降りる。
また人に聞き、トリシアという人の部屋の前に来た。
「は、はーい!
ちょっと待ってください」
呼び鈴を鳴らすと中から慌てた声がする。
ちょっとした騒がしい音がして、静かになる。
「お、お待たせ……ぎゃー!
ごご、ゴーディアヌス様!
お待たせしてしまってすいません!
どうぞお入りください!」
ドアが開くと中から丸メガネの女性が顔を覗かせた。
「……どうした?
中に入っていいのではないのか?」
「あ、あははぁ……」
トリシアの部屋の中に入ろうとしたゴーディアヌスをトリシアがブロックした。
不思議そうに見下ろされてトリシアが気まずそうに笑う。
「ど……どうぞ」
「失礼するよ」
もうどうにもできない。
諦めたようにトリシアが道を開ける。
「う、うぅ……」
トリシアは身なりに興味がなさそうだ。
腰まである長い髪はボサボサでヨレヨレの白衣のような服を羽織っている。
そして部屋の中も無頓着さが出ている。
先ほどしていた音は片付けていた音ではなかったのかとツッコミたくなる。
まるで泥棒に家探しでもされたような部屋の惨状を見られてトリシアが恥ずかしそうにうつむく。
訪ねてくるなんて知り合いの魔道士ぐらいなものなので油断していた。
軽く足の踏み場があるぐらいにはものを避けたけど友達が来たと思っているからある程度しかやらなかった。
まさか上級の魔道士が来るなんて夢にも思っていない。
ただドアの前で待っているのがゴーディアヌスだと分かってももうどうしようもなかった。
待たせることも失礼で、出直しさせることも失礼。
実験してましたなんて嘘をつくこともトリシアには出来ない。
なのだがこの荒れ果てた部屋の中に通すのもまた失礼なのかもしれないかもしれない。
こんなことなら前に友達に言われた時に片付けておくべきだったと後悔ももう遅い。
「ふむ、もうちょっと整理整頓はしておくべきだな」
「耳が痛いお言葉です……」
こうは言うもののゴーディアヌスも特にこんな光景に何かを思うこともない。
魔塔の魔道士で部屋が汚いものなどごまんといる。
ここまでひどいものも少ないかもしれないが大体の場合魔道士の部屋とは完全に整頓されているか、完全に汚いかのどちらかである。
だから部屋が汚いからといってゴーディアヌスが不快に思うことはない。
年配者としての一言は言っておくが同じ二級魔道士でも部屋が汚い者もいる。
「えっと、奥の研究室にどうぞ!」
トリシアは思いついた。
リビングなどの居住空間は荒れている。
しかし研究室は研究をするために普段からちゃんと整理整頓してあったはずだ。
「あっ、違うんです!
これはたまたまこんなことになっているだけで普段はもっと綺麗なんです!」
けれどたまたま、偶然にも研究室も荒れていた。
前日まで調べ物をしていて床中に資料が散乱していた。
これでは様々な汚さをお見せしているだけである。
「……何でも良い。
イスを1つ借りるぞ」
「……はい」
どうとでもなれ。
自分の全てのズボラさを見られて、トリシアは遠い目をしてイス周りとデスクの上を片付けた。
「お客様もイスをどうぞ……」
すっかり気落ちしたトリシアにかける言葉も見つからず、早めに用事を済ませてあげようとさっさと2人もイスに座る。
「それでこんな私になんの御用でしょうか」
なんだかネガティブにもなっている。
「君の知恵を借りたいんだ?」
「私の知恵ですか?
私が知っていてゴーディアヌス様が知らないことなんてないでしょう」
「基本的なことに関してはそうかもしれないな。
しかしゴーレムに関しては君の方が詳しかろう?」
「ゴーレムですか?
確かにそれに関してはそうかもしれませんが……」
「ショウカイ君、すまないがあれを出して説明してあげてくれないか?」
「分かりました」
話を飲み込めていないのはトリシアだけどショウカイもいまいちトリシアに会いに来た理由が分かっていない。
ショウカイは一度しまったテディベアをまたカバンから出してゴーディアヌスにしたのと同じ説明をする。
トリシアもショウカイの持つカバンに興味を示していたようだけどまずはショウカイの話を優先して聞いてくれた。
ショウカイの説明を一通り聞いたトリシアはゴーディアヌスがやったようにテディベアをまじまじと観察する。
魔法を使ったりして反応を確かめたり、ゴーディアヌスよりも細かく調べている。
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