青色魔塔4
「ぬ?
そのカバンは魔道具ではないか」
「あっ、はい」
「…………後で見せてもらえるかな?」
ショウカイが持つカバンは超貴重な魔道具。
ゴーディアヌスとしても貴重なもので是非とも見せてもらいたい、可能なら買い取りたいぐらいのもの。
今は話を聞いている最中なので好奇心をグッと堪えた。
「分かりました。
それでこれなんですけど」
「…………これがどうしたのだ?」
いわゆるクマをかたどった人形。
普通に販売しているものよりも大きく見た目も可愛らしくて品質は良さそうだけどそれ以上の感想もない。
見た目に反して人形が趣味、ということは一切ない。
「これは実は魔道具だったんです」
「これがか?
何の魔法がかけられていたのだ?」
「実は魔力を込めた人の後ろをついて歩いてくるっていう魔法なんですけど、今はこの人形壊れてしまっていまして、直せる人を探していたんです」
「……なんと、人の後ろをついて回る、だと?
少し触ってみても?」
「どうぞ」
ゆっくりとゴーディアヌスが立ち上がり、顔を近づけてまじまじとテディベアを眺める。
ゴーディアヌスが手に取ると大きいはずのテディベアがちょっと大きいぐらいに見える。
イカツイおじさんがテディベアを観察する様は少しだけ面白い。
購入するかどうか悩んでいるみたいだ。
ただ見るだけでなく魔力を送ったり壊れないようにしながらも握ったりと色々確かめる。
「確かに、ほんのわずかだが魔法の残滓を感じるな」
優しくテーブルにテディベアを戻す。
「しかし私は力になれないな」
「そうですか……」
「待ちなさい。
人の話は最後まで聞くものだ」
またソファーにゆったりと腰掛けるゴーディアヌスはチェナットを口に放り込んで紅茶をすする。
「魔法の感じを見るにそれなりに古いものだろう。
人形は大切にされてきたようだが時間を感じる。
私は特に魔物の素材を研究しているからな、触って分かるのはこの人形には魔物の素材が使われているということだ」
外見には魔物の素材が使われている。
非常に上手く加工してあるがゴーディアヌスには分かった。
「そういえば中身もメットンだか何だかだったが入ってたって言ってような?」
「メットンだと?
そりゃ一気に高級品になるな……」
「えっ、メットンって高いんですか?」
「そりゃもうここらでは高級品だ」
メットンは別の大陸にしか存在しない。
魔物であるので養殖も出来ず、一時期狩りすぎて絶滅しかけたほどの魔物である。
輸入するしかなく、かつ絶滅を避けるために数も絞られている。
結果としてメットンは貴族ですら簡単に手を出せないほどの代物となってしまった。
ゴーディアヌスが魔塔に入った時にはまだ高くても手が出せないほどのものではなかったのに、今では私財を投げ打っても手のひらに乗るほどを買うことが精一杯だろう。
目の前の大きなクマいっぱいにメットンが詰められていたとしたら国も買えるほどの金額になっていたに違いない。
「そんな……」
「メットンが欲しくても今は厳しいだろうな」
ただそんな時期も長くは続かないだろうとゴーディアヌスは予想している。
投資のような価値を持ったメットンだがその正体はただの魔物である。
絶滅しない限りは存在し続けるもので、絶滅しかけた魔物というのは何かのきっかけで大増殖を起こすことがある。
そのうち価値が下がって首をくくるような人も出てくるはずだ。
「人形に魔法をかけるなんて聞いたこともない。
いや、専門の職業があるからそうした人は人形を操って戦うこともあるらしいがこのようなフワフワしたものでは戦わないだろうな。
ただこのような物を作る変わり者に心当たりがある」
「ほ、本当ですか!」
「ああ、この世界のどこにいるかは分からないがな」
「……」
上げたり下げたりと話の着地点が見えない。
「はははっ、悪いな。
そう落ち込んだ顔をしないでくれ。
その方の居場所は知らないが、その人の弟子を知っている。
おそらく彼女もそう言ったものに詳しいはずだ」
そう言われてゴーディアヌスは立ち上がる。
「早速訪ねてみよう」
「今からですか?」
「そうだ。
ちょうど彼女も青色魔塔の所属だからな」
一歩が大きいゴーディアヌスは歩くのが速い。
慌ててついていくと部屋を出てすぐにある別の扉横のスイッチを押した。
ここまで来ると一階につき一部屋だと聞いていたので何の扉か気になっていたものだった。
少し待つとチンと音がして扉が横に開いた。
頭をぶつけないように屈んでゴーディアヌスが扉の中に進んでショウカイたちも続く。
「えーと……確か、三級魔道士の……」
今度は扉横にあるたくさんのスイッチの中の1つを押した。
扉が閉まって一瞬フワッとした感覚がショウカイにあった。
これはエレベーターだ、とショウカイは既視感の正体に気づいた。
「これは魔具昇降機というんだ」
驚いているショウカイを見てソリアがそっと耳打ちしてエレベーターのことを教えてくれた。
魔塔は縦に長い作りになっているのでどうしても昇ったり降りたりする必要が出てくる。
そこで開発されたのがこの魔具昇降機だった。
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