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青色魔塔3

 デカい。

 腰の曲がったおじいちゃんどころの人物ではない。


 ショウカイが見上げるほどの大男、それがゴーディアヌスであった。

 ただデカいだけではない。


 スキンヘッドで彫りが深く、ローブを着ていても体つきが良いことが分かる。

 悪いが魔法使いにはとても見えない。


 ドアの作りとかも大きかったのはこのためだったのかと妙に納得した。


「ほうほうほう?」


 ソリアの顔を見て興味深そうに覗き込むゴーディアヌス。

 腰と膝をかがめてようやくソリアの顔と同じ高さになる。


「何があった?」


 声には年齢が滲み出ていて、それなりに声からは年齢を感じさせた。


「何がとは何ですか?」


「そう怪訝な顔をするもんじゃない。


 悪いことではないんだ。

 前はもっと感情が読めない子だったのに今はしっかりと感情が見て取れる。


 私に会えて嬉しいとな」


「な、何ですかそれ……」


 恥ずかしそうに頬を赤らめるソリア。

 会えて嬉しいことには間違いないがそれを口に出して言われると恥ずかしい。


「その頬を赤らめる仕草もそうだ。


 今までは私が何を言ってもタチの悪い冗談みたいに受け流してたではないか。


 良い変化だ。

 是非とも何があったのか知りたいものだ」


「そ、それは……」


 何があったと一言で言える話ではない。

 あえて挙げるとしたら出会いだろうか。


 チラリとソリアがショウカイに視線を向けたのをゴーディアヌスは見逃さなかった。

 何の変哲もなく見える青年。


 顔は悪くないけど特別良くもない。

 感じる魔力はそこそこだが魔道士系統の職業ではなさそうだ。


 ソリアの氷のような心を溶かせる人物であるようにはとてもじゃないが思えない。

 ただ何があるか分からないのが人生。


 不思議な出会いが人を変えることなどある話だ。


 見た目だけで人を判断できないことは散々経験してきた。

 逆に見た目通りなこともままあることだが。

 

「無理に話すことはない。


 願わくばこのままもっとソリが柔らかくなるといいのだがな。


 実験で疲れているから座らせてもらうよ」


 2人がけにしては小さく1人がけにしては大きなソファーにゴーディアヌスが腰掛ける。

 ゴーディアヌスが座るとソファーはピッタリで、深く沈み込んで体を包み込む。


 部屋の至る所が体の大きなゴーディアヌス仕様になっていることにようやく気づいた。


 見た目から年齢が分かりにくいけれどそれなりにおじいちゃんであることは本当なのであった。


「カークレン、甘いものでも持ってきくれ。


 そうだな……ソリの変化も祝してチェナットのお菓子があったろう。

 あれを出してくるんだ」


「分かりました」


「お待たせもしたようですまないな。


 手が離せなかったものでな」


「いえ、私たちがいきなり訪ねてきたのだから当然です」


「そうだな、ソリの方から訪ねてくれるとは驚きだよ」


 ゴーディアヌスはソリアのことをソリと呼ぶ。

 親愛の気持ちを込めてでソリと呼ぶのは世界でただ1人ゴーディアヌスだけである。


「それで何の用でここまで来たんだい?


 私に会いたくなって来たなんてことはないだろう?」


「まあ、会いたくはありましたよ」


「はっはっ!


 言うようになったな。

 ソリにそんなふうに言ってもらえる日が来るとは長生きしてみるものだ!」


「もちろんそれだけじゃありません」


「ああ、ソリの頼みなら何でも聞こう」


 ソリアにはお世話になっている。

 依頼料は当然支払われるものだから何か別にお礼をしたいのだけどソリアには物欲もなく、常に他の依頼を受けている状態だったのですぐに帰ってもしまっていた。


 叶えられる望みであるなら喜んで叶えるつもりがゴーディアヌスにはあった。


「私ではなく、私の友人が困っていまして助けてほしいんです」


「もちろんだ。


 そういえば自己紹介もしていなかったな。


 私は青色魔塔で二級魔道士をしているゴーディアヌスだ。

 私は魔物の素材の研究をしてるんだ」


「ショウカイと申します。


 えっと、冒険者です。


 よろしくお願いします」


「折り目正しくて良い若者だな」


「ありがとうございます」


「それでは本題に入ろうか。


 話しながら是非食べてくれ」


 カークレンがいくつかの黒いものが乗ったお皿をそれぞれの前に置く。

 フォークも添えてありゴーディアヌスは黒いものを刺して口に運ぶ。


「ふむ、美味いな」


「いただきます」


 ショウカイもそれを食べてみる。


「ん! 美味しい……これは…………」


 栗だ。

 この味や風味は栗である。


「食べたことあるのかい?」


「似たようなものを食べたことがありまして……」


「これはとある木の実でね。


 茹でて皮をむいたものをシロップにつけておいたものなんだ。


 こう頭を使う仕事をしていると甘いものが欲しくなってしまう。

 昔は甘いものが苦手だったのに今では全く逆になってしまったよ」


 ソリアはさっさと自分の皿の栗、チェナットを平らげるとカークレンにおかわりを要求していた。


「ええと、話なんですが……」


 ショウカイはカバンを手に取ると逆さにしてテディベアのことを思い浮かべながら振る。

 するとテディベアがカバンの中から飛び出してきて、テーブルの上に座った体勢で置かれる。


 何回見てもこの小さな口からちゃんとした向きでテディベアが出てくるのは理解ができない。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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