青色魔塔2
大人しく待っていると門番さんと若い男性が塔の中から出てきた。
「冒険者のソリアさんとそのお連れ様ですね。
私は四級魔道士のゼルディスタと申します。
ゴーディアヌス様はお会いになられるそうです。
現在手が離せずすぐにはお会いできないので、中でお待ちください」
「ありがとうございます」
ゼルディスタの後を歩いて魔塔の中に入る。
横を通るときに一瞬門番さんのフードの奥にある目と視線がぶつかったような気がショウカイにはしていた。
なんだか人っぽくないような不思議な雰囲気があったような、言い表せられない感覚が僅かな時間の視線の交わりの中で感じられた。
魔塔の中は思っていたよりも綺麗だった。
低層階は若くて階級の低い魔道士が使う場所でそんなに所属する人数の多くない魔塔では例え五級魔道士でも1人部屋が与えられて好きに使うことができる。
実験室や書庫といった共有で使うこともできる場所もあって、魔法の訓練場やミーティングルーム、教室みたいなところもある。
複雑で分かりにくいというよりもシンプルすぎてどこも似たような雰囲気で迷子になりそうであった。
階層が上がっていくに連れて部屋と部屋の間隔が空いてくる。
1つの部屋が大きくなって自由に使えるスペースが増えていくのだ。
中層階になると三級や二級魔道士と言った上級の人が使う場所になり、当てがわれた広い部屋の中に研究室もあったりして部屋で研究が完結することも珍しくない。
ソリアが訪ねるゴーディアヌスは二級魔道士。
かなり高い地位にある魔道士ということになる。
大体研究研究で金がない魔塔の魔道士でSランクのソリアに依頼できるということは余裕があるということであり、お金に余裕ができるほどの地位にいるといえる。
それなりに階数を上がってきて、とうとう一階につき一部屋となった。
「はいはい」
「失礼します、ゼルディスタです。
お客様をお連れしました」
ソリアもゼルディスタも涼しい顔をして階段を上る中、そろそろキツくなってきた。
休ませてくれとも言いにくい雰囲気でまだ余裕ですみたいな顔を装ってようやくゴーディアヌスの部屋に辿り着いた。
ゼルディスタが扉の横にあるスイッチを押すと中から男性が出てきた。
「ああ、どうもありがとうございます。
ソリアさん、お連れ様、どうぞ中にお入りください」
ゼルディスタからバトンタッチして案内役が変わる。
「私は四級魔道士のカークレンです。
師匠は少し手が離せないのでこちらでお待ちください。
何かありましたら遠慮なくお申し付けください」
客間に通されてカークレンが紅茶を淹れてきた。
「それほど時間はかからないと思いますので」
ペコリと頭を下げるカークレンはゴーディアヌスの弟子である。
ゴーディアヌスの部屋に住み込みで身の回りを世話をしながら魔法や研究について教える、ちゃんとした師弟関係がある。
「ゴーディアヌス殿とは依頼を通じて知り合ったんだ」
手持ち無沙汰なのでどうやってゴーディアヌスと知り合ったのか聞いてみる。
ソリアと魔塔の関係は依頼があったことから始まっている。
1番最初は一介の冒険者としての仕事だった。
まだAランクに上がったばかりの頃、魔法を使わなくても強い冒険者が集められた。
ソリアも魔法は使うこともあるけれど主要な攻撃ではないのでソリアにも声がかかった。
それが魔塔の魔道士を護衛する依頼であった。
魔法を使わずに魔物を倒して魔道士を護衛しろという依頼で変な条件がつくものだと思ってソリアも依頼を受けた。
その魔道士が当時三級魔道士だったゴーディアヌスであった。
結果的には成功したのだけど冒険者にも被害が出るような大変な依頼だった。
ソリアはそんな中でも活躍をしてゴーディアヌスに顔と名前を覚えられていたのであった。
そして時が経ち、ソリアはSランクになってまだ二つ名はないながらそこそこの活躍をしていた。
そこでまた魔塔からの依頼があり、ソリアを名指しで指名してきたのが二級魔道士になったゴーディアヌスであった。
以来、何回かゴーディアヌスの依頼を受けて、今の関係に至っていた。
「魔法使いは冒険者にもいるが魔塔の魔道士はそうした魔法使いとは違った人たちでな。
それに冒険者ギルドと魔塔は対等なんだ。
だから魔塔の魔道士はSランクでも媚びへつらうようなこともないんだ」
確かに魔塔の人たちはソリアのことを知っているようなのに冒険者ギルドであったような下に出る態度は取らない。
敬意は払っても必要以上に下手には出ていなかった。
「ゴーディアヌス殿はさらに輪をかけて……いや、むしろ少しおじいちゃん、みたいな感じでもあるな」
「へぇ……」
ソリアが柔らかに微笑む。
ショウカイの中では魔法使いのおじいちゃんのイメージは優しそうで立派なヒゲを蓄えた老年の男性。
ソリアがそんな顔をして説明するものだから余計にそんな緊張しなくてもよさそうな感じを勝手に抱いていた。
「失礼するよ」
「ゴーディアヌス殿、お久しぶりです」
「…………は、初めまして」
そんな会話の直後に部屋に入ってきたゴーディアヌスはショウカイの想像をはるかに上回る人物だった。
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