隣国へ3
続いてCランクは逆に女だけの4人パーティーと混合5人のパーティー。
パーティーランクはCだけどそれぞれ2人ずつDランクのメンバーがいる。
混合5人のパーティーについては素行があまり良くないとギルドの評価が添えられているので早々とショウカイの中で選択肢から消えた。
何もなければ女だけのパーティーに依頼しても良いかもと思うのは残念な男の本能である。
依頼料は銅貨700枚。
Dランクと比べるとお得にも感じる値段設定である。
実力的にも女性パーティーがこれまでの中では第一候補と言っていい。
最後にBランクパーティー。当然これが本命となる。
男女混合5人のパーティーで前衛3人、後衛2人とバランスもいい。
ギルドの評価も真面目で護衛依頼にも十分勧められるパーティーと書いてある。
依頼料は銅貨900枚。
グッと値段が上がった気もするが手持ちの金額からすると安いものである。
「……決めました」
Bランクともなれば情報を隠すのも難しいのかパーティーメンバーの職業や戦闘スタイルなど他のパーティーよりも詳しく書いてある。
伏せられている情報もあるけれど情報が多くて一番戦いをイメージしやすい。
ほんの少し、ほんの少しだけ悩んだ。
「こちらのBランクパーティー『ウルガス』に護衛依頼することにします」
ギルドのおすすめもあることだし、やはり高ランクパーティーがいれば安心。
実際会ってみないことにはまだ分からない部分もあるけれどダメなら断ればいい。
護衛依頼の注意事項やその他必要なことをしっかり聞いてから書類にサインする。
依頼料とギルドへの手間賃などで銀貨10枚を払う。
大きな出費だがお金を惜しんでいられる立場でもない。
あとの細かいことは顔合わせをして当人同士でとのことだったが急ぎならこのまますぐにウルガスを呼んできてくれると言うのでショウカイはそのままギルドで待つことにした。
待っている間手持ち無沙汰なのでウルガスの情報を再度確認する。
パーティーランクはBだが個人で見ると3人がBランクで前衛後衛に1人ずつCランクがいる。
品行方正で真面目、討伐系依頼を多くこなして少し前にBランクパーティーに上がった。
遡ればこの町以外のところでやっていたようだけど歴はここにいる間が1番長い。
直近でもBランクの討伐依頼をこなしていてその実力は申し分ない。
「ウルガスの皆様が到着しました」
もう一読していよいよ暇になるといったところでドアが控えめにノックされた。
もはやお馴染みともいえる受付の男に連れられてゾロゾロと5人の男女が部屋に入ってきた。
「あなたが依頼人のショウカイ様ですね。
私がウルガスのパーティーリーダーを任されています、ウィランドと申します」
とりわけガッシリとした体型の鎧を着込んだ男性が前に出てスッと右手をショウカイに差し出した。
「ショウカイです。護衛依頼を受けていただきありがとうございます」
ショウカイも立ち上がりウィランドに応えて握手をする。
ショウカイも身長が低いわけではないがウィランドはそんなショウカイよりも頭一つ大きく、鎧を纏っているのもあって非常に大男に見える。
ただ顔は優しく大きさに比べて威圧感はない。
「こちらこそ、Bランクともなれば決して安くはないでしょうに……我々としても有難い依頼です」
目を細めて笑うウィランドは少なくとも悪い人には見えなかった。
ここから相性なんかを確かめて依頼していくことになるのだがそんな時間はない。
第一印象とギルドの資料を信じるしかショウカイにはない。
だからいい人そうという印象を信じることにした。
ウィランドがウルガスを代表して依頼の受注書にサインして正式にウルガスがショウカイの護衛となった。
その場で軽くウルガスのメンバーが自己紹介をして、依頼についての話をするためにギルドを出ることにした。
ギルドで話してもよかったのだけれど待っている間にちょうど昼時、ウルガスの面々も昼御飯はまだとのことだったのでお昼を取りながら話をしようということになった。
「出来るだけ早く出発したいとのことでしたが」
ギルドからほど近い食堂がウィランドのおすすめで中はすでに満席に近いほど賑わっている。
席についてショウカイはウィランドの勧める料理を頼み、メンバーたちもそれぞれ注文を終えたところでウィランドが依頼の話を口にした。
「はい。出来るならすぐにでも」
「我々も素人ではないので旅に出る簡単な準備ぐらいはあります。
流石に今日このままとはいきませんが、明日にでも出発は出来ます」
「なら明日出発が自分としてもありがたいです」
「分かりました。なら、というわけでもないのですが……経費も負担してくださると、事前に聞いているのですが…………」
ややバツが悪そうな顔をするウィランド。
当然聞くべきことだからショウカイも気にはしないが話の流れから早く出発したいなら金を出せと言っているようにもなってしまったのを気にしているのだろう。
「もちろんです。正直俺はあまり旅というものが分かってなくて、出来るなら俺が足りなかった場合のために少し多めに荷物を用意していただけると助かります」
そう言いながらパチンと銀貨をテーブルに置いて指でスライドさせるようにウィランドの前に持っていく。
ウィランドが銀貨を見て驚いたようにショウカイを見る。
ウィランドだけではないウルガスのメンバー全員が驚いた表情をしている。
ショウカイも分かっている。
旅の準備をするのに何もないから必要な物を買い、ちょっと必要じゃないかもしれないけど欲しい多少高額な物を買ったりしたけれどそれでも銀貨1枚あれば余裕な買い物だった。
ある程度旅の下地のある冒険者ならそれほど揃える必要のあるものは多くない。
サラッと銀貨1枚を経費に使ってよいと出してきたショウカイに皆驚きを隠せなかった。
実は銀貨1枚ならさほど痛手でもないがだいぶ価値が高いことは分かっている。
貰い物の泡銭だからバンバン使ってしまおうとショウカイは決めていた。
まずは信頼。最低でも金は払う。
これからの旅路においてもケチることはないとアピールする。
「あと出来れば旅とはいえやっすい硬いパンばかりじゃなく多少はいい物食べたいのでそこらへんもお任せしたい」
一応携帯食料的なものは買った。
硬く焼きしめられたパンなんかが携帯食料として一般的で道程を思うとショウカイはげんなりしていた。
だからといって何が日持ちするとかそんなことも判断出来ないので任せてしまおうというのだ。
「……正直あなたを疑っていた。
途中の経費まで払うような物好きはそういない。最初だけ良いように言って高ランクパーティーを釣り上げる、そんな輩もいる。
だがショウカイ様は違うようですね」
「たまたま大きな収入があってな。こちらにも事情があるだけに金は惜しまないさ」
「分かりました、ウルガスはショウカイ様を絶対にお守りいたします。
1つ提案なのですが早く行きたいというのであれば馬を買うのはどうでしょう?」
「馬?」
「一応旅は歩きを想定していますが馬であればより早く行けるでしょう」
確かに馬に乗っていければ荷物も乗せられる、移動速度も速い。
「済まないが俺には馬の心得がない……」
当然ながらショウカイは馬に乗れない。
あのまま城に残っていれば馬やなんかの訓練もあったようではあるがその前に飛び出してきてしまったのだからまだ乗ったこともない。
「そうですか……」
「なら馬車はどう?」
「レーナン……」
口を開いたのはやや日焼けしたまだ少女とも言える年齢に見える軽戦士の職業の女の子。
ウィランドとは違い、皮で作られた胸当てなど軽い装備を身につけ武器も一本の細身の剣を携えている。
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