知らないと偉そうな態度取れるよね2
「わ、私も頑張りましたよ!」
「…………」
ちょっと羨ましくなって張り合ってしまった。
唖然とするショウカイと目があい続けて恥ずかしくなってくる。
「……えっとなんでもないです」
もうなんでもないも何もない。
「ソリアさんも凄かったですね。
戦うところを初めて見ましたけどSランクの戦いってビックリしました」
褒めておく。
ソリアだって誰かに褒められたい時もあるだろう。
Sランクだからと当然としてはかわいそうである。
テラリアスナーズやマギナズは圧倒的すぎる感じがしていて分かりにくかった。
すごいのは分かるけどただ凄いだけというか別次元の凄さだった。
ソリアも凄いのであるがやはり人であり、人としての最高峰というか人の戦いの凄さを見た感じがある。
「そ、そうですか」
嬉しそうに頬をかくソリア。
なんだか最近すっかりソリアのイメージが崩れてしまっている。
キリリとしたクール美人だったソリアは打ち解けると思いの外フランクで子供っぽかった。
悪いことではない。
「あんな動き人にも出来るんだな」
「別に私が特別だからではありませんよ。
何事も努力です」
「そんなもんかなぁ?」
「そんなもんです」
本人が言うとそれっぽく聞こえるけどきっと天才は凡人の気持ちがわからない的なところはあると思う。
一切戦闘系スキルがショウカイにはないのでどうしても差は出てきてしまう。
ソリアと同じ努力をしたとしてもソリアと同じ域に到達するのは無理だと思っている。
出来たとしてもその時にはソリアはもっと高みにいることだろう。
スキルという形で才能の有無がわかってしまうこともまた残酷なものだ。
「ご主人様?」
まあ、代わりに頼もしい仲間がいる。
手を出すと期待したようにすぐにミミをペタンとするノワールの頭を撫でる。
剣の才能がなくてもノワールやミクリャと会えたのだから、どちらがいいか今は考えるまでもない。
ショウカイと仲間たちとソリア、そしてジュードの生首は旅を続ける。
ついでにショウカイやノワールはソリアに戦い方の指導を受けたりしてもいた。
ギラデールというのがショウカイたちが今いる領地の名前であった。
特徴としては何もない農村地帯にある比較的大きめな町がデラズだった。
この町ならば冒険者ギルドの支部もあるというのでここまでやってきたのだ。
デラズの冒険者ギルドは大騒ぎだった。
Sランクの冒険者が来ただけでも田舎の冒険者ギルドにとって大きな出来事なのにSランク犯罪者の首を取ってきたとまで言うものだから受付の若い子は泣きそうになっていた。
この町の冒険者ギルドでは本当にジュードかどうかも判別ができないのでもっと大きなギルドに首を送って判断してもらう必要があるとおじいちゃんギルド長がペコペコと頭を下げていた。
ジュードの首はソリアにとって副産物にすぎないのでそこまでしなくてもいいと言ったけどもうギルド総出で平伏する勢いだった。
小さい田舎のギルドにとってSランク冒険者は天上人なのである。
とりあえずジュードの氷漬けの首は冒険者ギルドが預かることになった。
そして冒険者ギルドで聞いたところデラズに領主も住んでいることも判明した。
ギルド長が席を設けますというのを押しとどめてソリアたちは領主の館に向かった。
ソリアは冒険者ですとだけ伝えて領主に会わせてほしいと門番に言った。
「…………」
「あーあ……」
薄々感づいていたけどここの領主は判断を誤る傾向にあるようだ。
門番が入ってからどれほど時間が経っただろうか。
Sランクと伝えないただの冒険者ソリアは門前で長いこと立たされたままであった。
仮に冒険者としての格が低くてもなんの返事もせずに待たせたままというのは失礼だ。
平穏無事に話し合いでことが済むと思っていたのに一悶着ぐらいはありそうな気配がしてくる。
領主の館はこんな田舎町には不釣り合いなほど大きく、広い庭園とそれを囲む塀がある。
他の町の人の暮らし向きを見るに質素に暮らしているように見えていたのにここだけ少し雰囲気が違う。
ソリアも若干苛立ち始めていて、段々と目も据わってきている。
「領主様がお会いになられる。
入れ」
走ることもせずにゆっくりと屋敷から出てきて見下すような目をして尊大な態度を取る門番。
お前じゃソリアの足元にも及ばないぞと思いソリアの顔色を伺うがソリアもここで怒ってもしょうがないことが分かっているのか大人しく中に入る。
応接室のようなところに通されると恰幅の良い頭のてっぺんがハゲた男がソファーにふんぞりかえっていた。
部屋には他に剣を携えた護衛の男が2人ほどいた。
「それで、お前らの冒険者ランクはなんだ?
俺のところで働きたいならそれなりに経験がないとつとまらないぞ?」
背もたれに体重を預けたまま自己紹介もなく男が口を開いた。
このソファーにふんぞりかえる男こそこの地域の領主であるブラーダであった。
相手を座ることを促すこともせず、指で耳をイジりながら見定めるようにブラーダはソリアを見る。
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