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てってけてーと戦って7

 2人は倒れることがなかったけど先に立ち直ったのはノワールだった。

 ジュードは殴られた衝撃でぼんやりする視界に戸惑っていた。


 ジュードは小さい頃から天才だった。

 誰にも負けたことがなく、ジュードに剣を教えた師匠ですらあっという間にジュードに勝てなくなった。


 ジュードは誰かに負けた経験はおろかダメージを負ったことも少ない。

 まして顔面を思いっきり殴られたことなど人生で初めて。


 ジュードはダメージとの向き合い方が分からなかった。


 ノワールの拳が迫ってきて、ジュードは本能的に避けた。

 まだ若干視界がボヤけていてダメージから立ち直っていなかったがこれまで培ってきた経験がジュードの体を動かしていた。


 ノワールも遅くないのにジュードを捉えきれない。

 段々とジュードが落ち着いてきてノワールの攻撃をギリギリでかわし始めてきた。


「ぐっ!」


 ノワールの拳に合わせてジュードがノワールの顔に一撃。


「そうだ、別に当たらなければいい」


 攻撃なんて当たらなければ何の意味も持たない。

 ダメージで混乱していたけどいつもの何ら変わることがないのだ。


 冷静になればノワールの動きも特別速くもない。

 さっきのように深く攻撃しなきゃ反撃を喰らうこともない。


 素手での戦闘は不慣れだけど速さに差があるから回避することは余裕だった。

 ノワールの攻撃の隙をついてジュードがノワールを殴る。


 パンパンと素早いパンチは軽そうに見えるけれど元Sランク冒険者の力は凄まじい。

 ジュードの拳が顎に当たってノワールの膝がガクンと折れる。


「終わりだ」


 膝をついていては思い切り殴っても反撃できない。


「何も終わっていないぞ!」


 ノワールにトドメを刺そうと拳を振り上げたジュードの後ろにソリアが迫っていた。

 たかだか蹴り1発で終わらせられるほどソリアも軟弱ではない。


「チッ!」


 ソリアの攻撃は素手ではない。

 ノワールの拳も当たれば大きなダメージだけど剣は切られれば致命的である。


「ノワールさん、大丈夫ですか!」


 距離を取るジュード。

 自分の剣は切られてしまった。


 流石にソリアの速さを回避だけでやり過ごすことはジュードにも難しい。


「そうだ」


 ないなら奪えばいい。

 あるではないか、ジュードの剣すら簡単に両断してみせた最高の剣が。


「ファイアストーム」


 ジュードが魔法を使う。

 剣に卓越したジュードだけど当然魔法も使うことができる。


 本職には敵わなくても魔法に関してもジュードは上手かった。


 炎が渦巻きソリアとノワールに襲いかかる。


「アイスウォール!」


 ソリアも対抗して魔法を発動させる。

 氷が2人の周辺を取り囲み、炎と熱さから身を守ってくれる。


 剣まで優れているのに魔法も弱くない。

 Sランクになり才能があると言われてきたソリアですら嫉妬する。


「ご主人様!」


 ノワールの言葉はソリアには分からない。

 けれど焦るノワールの視線の先を考えると何があるのか予想できた。


「ショウカイさん!」


 ジュードは魔法で目隠しをした隙にショウカイの側に行っていた。


「ぐぅ……」


 ダメージに弱いのは何もジュードだけではない。

 戦いの経験が浅いショウカイもまたダメージに非常に弱かったのである。


 平和な世界からきた現代人のショウカイにいきなりそこら辺を期待するのは酷である。

 気絶しなかっただけすごいのである。


 むしろ痛みからすると気絶でもしてしまった方がよかった。


 みんなが戦っていることは分かっているのになかなか動けるまでに回復しない。

 顔の片側がパンパンに腫れていて右目が開きにくい。


 どんな状態になっているか鏡を見なくてもよく分かる。


「元気そうだな」


「お、お前!」


「これ、もらうぞ」


「あっ、おい!


 放せ!」


 ジュードはショウカイの側に落ちていた熊公を拾い上げる。

 そう、武器がないなら奪えばいい。


 弱いショウカイが使ってもこの剣はかなりの破壊力があった。

 剣に卓越したジュードが使ったならもはや止められるものはなくなる。


「まずはお前で試してやる。


 剣をくれた礼だ、苦しまずにいかせてやる」


 試し切りにもならないだろう。

 どれほど切れ味がいいか分かれば気分は良くなるからショウカイの首で試してみようと思ったのだ。


 ショウカイの目では追えないほどの速さで剣を振ったが熊公はショウカイの首を切らなかった。


「な……に?」


 不自然なほどピタリとショウカイの首に剣が当たったところで止まった。

 何をした。

 そう口に出す前にショウカイの胸元からミクリャが出てきた。


 非常に冷たい目をしている。

 ミクリャもショウカイを傷つけたジュードに対して怒っていた。


 いつもやるように両手を上げるとスッと手を握った。


「体が……!」


 無数に張られた細いクモの糸。

 気づかぬ間に絡め取られて全身に張り付いていた。


 ジュードは何も分からずに混乱していた。


 なぜ剣は首を刎ねずに止まった。

 この小さい生き物はなんだ。

 どうしていきなり体が動かなくなった。


 ショウカイに疑問をぶつけようとしたジュードの胸から剣が飛び出してきた。


「私たちを忘れてもらっては困りますよ」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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