てってけてーと戦って2
「へ、へへっ、それでお命だけは助けてくれますか?」
「そうだな、私はお前らのように無駄に人を殺すような悪人ではない」
「へへっ、ありがとうございます……」
「だが逃しはしない」
「へっ?
ぶっぎゃっ!」
パッとヤンキーの襟を放して殴りつける。
パンチがまともにアゴに入ってヤンキーは気を失った。
ソリアはどこからかロープを取り出すとヤンキーたちを縛って近くにあった木に吊るす。
こうしておけば逃げられないし魔物にも多分襲われない。
あれが鉄血団の全てを表したものではなくても、その一面を表したものであることは間違いない。
村だけじゃ飽き足らず近くを通る旅人からも金銭を巻き上げている。
このような田舎ではソリアの顔は知られていない。
きっと剣帝だと分かっていたなら手も出さなかったろう。
ヤンキーたちがいた岩から程なくして家が見えてきた。
鉄血団が根城にしている村の跡。
「……何でしたっけ…………てってけてーを制圧してくるので少々お待ちください」
「鉄血団……行っちゃった」
覚えられないのか覚えたくもないのか徹底しててってけてーになってしまう鉄血団。
ソリアは鞘を付けたまま剣を手に取って鉄血団の根城に駆けていった。
先ほどのヤンキーは助けて、ここで鉄血団を血の海にしては言動が矛盾してしまう。
骨ぐらいはいってしまうかもしれないけど鞘ごと殴りつけることで殺さずに鉄血団を倒すつもりだ。
いきなり怒りの表情で鞘の付いた剣で殴りかかってくる女性が来ては鉄血団も混乱していた。
ショウカイが村に近づくまでの間に何人もの鉄血団ヤンキーがソリアにやられて気を失っていた。
鉄血団は意外と人数が多くてゾロゾロと家々から人が出てきてソリアを取り囲んでいた。
「おい!
貴様何者だ!
なぜこんなことをする!」
「貴様らがてっ、鉄血団だな。
最近魔物から守る代わりに村に女性を寄越すように言ったらしいな……
その女性たちをどうするつもりだ!」
「チッ……話すなといったのに誰か話しやがったな。
後で探し出して痛い目見せてやる。
それであんたは正義感出して女性たちを助けに来たってか?
ふん……顔も悪くないな、お前も女たちの仲間に入れてやるよ!」
「おいおい、何をしている?」
「あ、兄貴!
すいません、お休みのところ……」
「お前がてってけてーのリーダーか?」
「てってけ……まあそうだ」
村の中でも1番大きな家から鉄血団に兄貴と呼ばれる男が出てきた。
他のヤンキーどもとは毛色の違う雰囲気をまとう鉄血団のリーダー。
見た目はインテリっぽく、鉄血団のヤンキーたちの中に入るとむしろパシられる下っ端ぐらいに見える。
けれど鉄血団のヤンキーたちはリーダーにぺこぺこしている。
ショウカイが村についた時にはソリアがリーダーに切りかかっていた。
剣を抜いたのだ。
背筋が冷たくなるような鋭い雰囲気を感じて、ソリアはリーダーが只者ではないことを察した。
奇襲にも近い攻撃だったのにリーダーはそれを剣を抜いておもむろに防いでみせた。
「お前何もんだ?」
「あなたこそ何者ですか?」
たった一度で十分だった。
その一度で互いが互いに簡単な相手でないことが分かった。
鍔迫り合いの中でソリアが力を込めてリーダーの剣を押していく。
細腕のどこにこんな力があるのか徐々に押されていく。
「こいつ相手は俺がする。
お前たちはそっちをやれ!」
「あっ、バレてた」
周りにいるヤンキーどもではとても勝てる相手ではない。
リーダーはこっそりとショウカイがソリアを囲むヤンキーの後ろにいたこともわかっていた。
そっち?と振り返ると後ろにショウカイとノワールがいた。
「ノワールやっちゃえ」
「はい!」
先手必勝。
素早くヤンキーの1人に近づいたノワールがアゴを殴り上げる。
軽く空中にヤンキーが浮き上がる。
「何をしてる、早く戦え!」
騒ぎを聞きつけとりあえず家から出てきたのはいいもののヤンキーたちは状況も分かっていなかった。
変な女が暴れている。
それぐらいのことしか分からずソリアを取り囲んでいた。
そしたら今度は変な男と獣人の女。
アッパーで人が浮き上がるほどの腕力を見せられて動揺もし始めた。
訳が分かっていなけれどリーダーの叱責に突き動かされて今度はショウカイたちを取り囲む。
「へへっ、こっちも美人じゃねえか」
「不愉快」
頭空っぽのヤンキーたちは仲間が殴り飛ばされたことをすぐに忘れてノワールの容姿の良さに目を奪われた。
ノワールはそういった視線を浴びることに嫌そうな顔をしている。
「ほー、いい剣持ってんじゃねえか」
ショウカイも剣を抜いて戦闘態勢になる。
「やっちまえ!」
ヤンキーたちがショウカイとノワールに襲いかかる。
「ご主人様に手を出すな!」
ショウカイを守るんだとノワールは拳を振るう。
ノワールの拳が脇腹に当たって骨の折れる音がショウカイにまで聞こえた。
主守之時。
ショウカイを守るためにノワールの能力は普段よりも高くなり、人ではあり得ないほどの力を発揮していた。
ノワールが拳を振るえば人が飛び、ただの山賊崩れなヤンキーたちはなすすべもなかった。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます!
もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、
ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
評価ポイントをいただけるととても喜びます。
頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。