魔塔へ3
同時にサラッと職業を教えてくれもしたのでその点では信頼してくれているのかなと考えた。
「しかし魔物と仲良くなれる職業がどうしてこれまで注目されることがなかったのでしょうか?」
「うーん、今こうして仲良くなれたから分かるけど魔物と仲良くなるって難しいからね……」
ノワールと仲良くなれたのも偶然だった。
そもそもよく考えてみると魔物側が困っている状況にばったりとあっていなきゃみんなとは関係を持てなかった。
つまりは今のところ魔物と仲良くなる第一歩としては人間を嫌うことよりも大変な状況にある魔物を助けてあげることが大事である。
そのハードルは言うまでもなく高い。
でもこうしてなんやかんやと魔物の言葉が分かるようになった今でも魔物助けをしている。
異世界人であるから魔物を助ける気にもなるのかもしれない。
もう一つの方法としては魔石から召喚する方法もあるみたいだけどそちらの方法はいまだにどうなるかも不明である。
「私の職業は剣王なんですよ。
剣帝って呼ばれてるのにおかしいですよね」
一部の職業は進化していく。
不思議なものだけど言ってしまえば職業というものそのものが不思議なものだからどんなシステムなのかもこの世界の人ですらわかっていない。
剣士のようなベーシックな職業でも腐らずに研鑽を積んでいけば職業が上がることもあるのだ。
剣王は最上級職で剣帝とか剣君とか剣聖とかそんなのも同じく最上級職である。
その違いは誰にも分からない。
職業の名前の進化も幅が広くて結構自由な感じもある。
さらに自分じゃ進化したなんて分からなくてある時教会とかで鑑定してもらって進化してたなんてこともある。
「小さい頃は剣士だったんですけどね、いつの間にか剣王になってたんです」
SランクはSランクにふさわしい職業であるのだな。
じゃああの剣聖イケメンもSランクとかそんな所までいける潜在能力があるということになる。
「魔物のお言葉が分かるのもサモナーだからですか?」
「たぶんね」
「ちょっとだけなんて言っているのか興味が湧きますね」
ノワールを見る。
人の姿の時は聞いたこともない言葉を話していたノワールはウルフの時とあうあうとウルフっぽい言葉というか鳴き声で時折ショウカイに話しかけている。
あうあう言っているのは可愛いけど何と言っているのか気になってしまう。
「大体ノワールが話しているのはたわいないことである」
「シュシュさんも不思議ですよね」
ショウカイの肩に乗っているシュシュはミクリャと違ってソリアに乗ることを拒否された。
クモが間近にいることは流石のソリアも嫌だった。
ミクリャもクモの仲間だけど見た目は大きく違うので仕方ない。
落ち込んでいたけどショウカイだってずっと一緒にようやく肩に乗せても大丈夫になったのだ。
「ふむ、確かに他に人の言葉を話せる魔物はあまり見たことがないであるからな」
「そ、そうですよね」
「魔物がわざわざ人の言葉を話す必要はないである。
ワタクシが人の言葉を話せるようになったのは生存戦略的な側面と興味からである。
人の世界に行くつもりもないのに覚える魔物はいないである」
少しホッとする。
人の世界に入り込んでいる魔物もいるみたいだけど大多数の魔物はそんなことしない。
ソリアが不安に思っていた魔物が人に化けて入り込んでくることはほとんど起こりうる可能性がない。
「みんな、村が見えてきた。
隠れるんだ」
「分かったである」
「分かりました!」
ミクリャとシュシュはリュックの中に入る。
ノワールについてはノワールの判断に任せている。
今回ノワールはそのまま小さくなってリュックの中に入る。
なんだかリュックからみんなを呼び出したり、帰したりしているみたいにも見える。
「……なんだか雰囲気が暗いな」
「ええ、歓迎してくれる雰囲気ではありませんね」
遠くから見た時には数人見えていたのに村に近づいてみると誰もいなくなっていた。
けれどよくみると窓やドアの隙間からショウカイたちの様子を窺っていることが分かる。
ジロジロと見られて気分が良くない。
何かしてもいないのに排他的な人たちであるのか村の人たちの視線がまとわりついてくる。
泊まれるところでもないかと期待していたがそんな雰囲気ではない。
ソリアとアイコンタクトを取る。
ここは早く出て次に行ったほうがよさそうだ。
「お姉さんたち冒険者?」
うっ、とショウカイは思った。
ガリガリで細くて頬のこけた女の子。
目に生気がなく、ボーッとショウカイたちを見上げていた。
「そうよ。
あなたのお名前は?」
ソリアはそんな女の子と膝をついて目線を合わせる。
「私はホロア……お姉ちゃんを助けて」
「お姉ちゃんを?
一体何があったか聞いてもいい?」
「ホロア!」
母親と思われる女性が飛び出してきた。
「すいません、何でもないんです。
ほら、行くよ」
「お姉ちゃんを、助けて!」
「待ってください」
「な、何ですか……?」
「何があったのか教えていただいてもいいですか?」
「……あなたたちに何ができるというのですか」
「私はSランク冒険者のソリアと言います。
少なくともそこらのやつには負けない自信があります」
「え、Sランクの冒険者様……」
ソリアは冒険者証を見せる。
ソリアのことを知らなくてもSランクの冒険者がどれほどすごい人物なのかは子供でも分かることだ。
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