魔塔へ1
魔塔とは魔法に関するありとあらゆる人やモノが集まる集団であり、組織であり、場所である。
しかし閉鎖的な者たちの集まりで情報もあまりなく、いきなり訪ねて話を聞いてくれるところでもない。
紹介状があったとしても疑ってきて会いたくないという連中。
偏屈な者が多くて人間のドワーフなんて言われることもあるとか。
魔塔は1つではない。
いくつか存在していて横に繋がりがある。
「本当によかったんですか?」
「何がです?」
「いや、ソリアさんにまで付いてきてもらって」
流石にSランク冒険者ともなると魔塔とのつながりもある。
魔物の素材の関係などでSランクに直接依頼が来ることもたまにあるからである。
ソリアも何度か魔塔からの依頼を受けたことがあった。
恩返しがしたいと思うソリアと治安維持部隊のみんなの後押しもあって魔塔までソリアが案内することになった。
ソリアも忙しいだろうと思っていたけれど今はちょうどよくスーハッフルスのゴタゴタもひと段落ついて落ち着いているらしい。
あの一件以来冒険者とも密に連絡を取って体制の強化も図ったのでソリアがいなくても大丈夫だとジェシェンは言った。
流石に外に出るのに白のワンピースは着ていられない。
そんな格好じゃ戦えないし、恥ずかしすぎた。
ソリアは紹介状を書くつもりでいたのにジェシェンに一緒に行かなきゃ失礼ですよと説得されたのであった。
「構いませんよ。
知り合いの魔法使いにも顔を出すように言われていたのでちょうどいいタイミングでした」
「そうですか、それならいいんですが……」
「今の私はやりたくないことはやらないようにしていますのでこれはやりたいことなので大丈夫です。
あっ、いえ、ショウカイさんと一緒にいたいとかそうことではなくて、いやいたくないのではないのですが……」
「すごく心強くて助かりますよ」
「そうですか、ありがとうございます」
Sランク冒険者がそばにいること以上に心強いことなんてあるだろうか。
まあ、マギナズとテラリアスナーズペアに比べるとあれかもしんないけど。
「ご主人様には私がいます!
私がご主人様を守りますのであなたは必要ありません!」
ショウカイにはノワールがいます。
ポッと出のよく分からない相手にショウカイを渡さない。
ショウカイを守るように前に出るノワールの言葉はソリアには分からない。
「なんと?」
「えっと、よろしくと言ってます」
「あっ、はい。
よろしくお願いします」
さらっとウソをつくショウカイを疑わず、ノワールに折り目正しく頭を下げる。
「ご主人様!」
「そういえば他の仲間もいるのですが、紹介してもいいですか?」
「他にもお仲間ですか?」
どう見ても連れている人は他には見えない。
「驚かないでくださいね」
ショウカイがリュックを下ろして口を開ける。
「いいのであるか?」
「んー、まあいいんじゃない?
ダメだった全速力で逃げて」
「なかなか難しいこと言うであるな」
ヒソヒソとリュックの中に声をかけるショウカイを不思議そうな顔をしてソリアが待つ。
ソリアはマギナズやテラリアスナーズ、ノワールのイメージからショウカイが連れているのは人になれる魔物だと思い込んでいた。
「じゃじゃーん」
「ん!」
両手をあげてどうだと言わんばかりの顔をしているミクリャと控えめにミクリャの頭に乗っているシュシュ。
これまでと違ってガッツリ魔物である。
ミクリャはまだ微妙に人っぽいけどシュシュは完全に魔物である。
「そ、そちらは?」
「俺の仲間だよ。
シュシュとミクリャだ」
「小さい、人?
でも、背中になんか生えて……」
「その子はアラクネ」
「アラ……」
アラクネと言ったら割と有名な強力な魔物。
積極的に人を襲う魔物ではないがそのテリトリーに入ってしまうともう帰っては来られないことになる。
少し前に同じくSランクの炎帝がアラクネ狩りに繰り出していたことをソリアも知っている。
粗雑であまり好きではないけど炎帝の実力は認めているし、それぐらいの人でないと倒すことも難しい魔物である。
「ん?」
「えっ、かわっ……」
トトトと歩いて行ったミクリャはソリアによじのぼりジッと見上げる。
本当に人見知りというか他種族見知りをしない子である。
背中のクモの足を除けば見た目はすごく可愛らしい女の子のミニマム版なミクリャ。
魔物としての容姿は残しつつもどことなく庇護欲を掻き立てるミクリャにソリアがやられる。
アラクネと聞いて驚いていたけれどとてもじゃないけど危険な魔物には見えない。
実際のところショウカイ程度では敵わないほど強くなってるらしいけど見た目じゃ魔物も人も分からない。
「よろしく頼むである!」
「ぬあっ、クモがしゃべった!」
「ワタクシこそクモの王であり賢なるクモと魔物の間でも噂になっているクモである!
頭が高いである!」
「えっ、えっ?」
「こら!
ソリアさん、すいません。
ただの冗談です」
「な、何が、どこまで冗談なのですか?」
「クモの王だとか賢なるクモだとかです。
じゃあしゃべってるのは……」
「本当です」
「…………あい」
常識崩壊再び。
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