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一進化さって3

 完全に忘れていた。

 そう言えばシズクがいつの間にかいない。


「えっ! いつから?」


「……分からないである」


「いや私たちは知んねーよ?


 ここに来た時にはもういなかったからな」


 思い返してみる。

 どこまでシズクがいて、どこからいなかったか。


 そもそもシズクはほとんど存在感がない。

 鳴き声もなく行動に音も伴わない。


 ノワールほどショウカイにも甘えてくることもない。


「……あの時はいた。


 つまり……」


 山岳地帯でノワールの毛の塊のところに留まっている時にはいた。

 なんかすごく静かだったけどいたはいた。


「こっちに来る時に置いてきた?」


 ノワールのことでいっぱいいっぱいになっていてシズクまで気が回らなかった。

 あそこのどこかにシズクがいた。


 ただどこにいたのかも分からない。


「どどど、どーしよ!」


 焦るショウカイ。

 もうこちらにきてから結構な日数が経ってしまっている。


 シズクに異変があったような通知とか来ていないけれどどうしているのか分からない。


「いや、呼べばいいと思うである」


「はっ!


 シュシュナイス」


 あまりの事態に焦りすぎてシズクを呼び出せることすら忘れていてしまった。


「シズク!」


 ショウカイはシズクを呼び出す。

 目の前にシュンと現れるシズク。


 プルンとしたフォルムのシズクには何かあったように見えず、無事であったことに安心した。

 けれどシズクは動かない。


「シズク?」


 ゆっくり手を伸ばして触れてみると表面が波打つ。

 怒っているのかもしれないと思うけどそれにしては全く動きすらしない。


「お、おーい」


「これはアレですね」


「あ、アレ?


 やっぱり怒ってる?」


「いえ、この子も進化しようとしています」


「えっ?」


 テラリアスナーズから衝撃のお言葉。


「でもノワールみたいにはなってないけど……」


「進化の形はさまざまですからね。


 それにシズクさんも私の血を飲みましたから下級の魔物であるスライムなら進化もするでしょう」


「いつの間にテラリアスナーズの血を?」


「ああ……ショウカイさんが気を失ったあとに飲んでしたよ」


 知らなかった。


 テラリアスナーズの血のためにノワールも進化するぐらいなのだからシズクも進化すると考えるのは自然なこと。

 隠れるように進化することも普通なのでもシズクも進化しようとどこか見つからない場所を探していたためにショウカイにも見つからなかった。


 忘れていたこともあるが隠れていたこともあるというどっちもどっちな出来事。

 いや、忘れていたショウカイが悪い。


「でもなんの表示も出ていないけどな……」


「この感じではまだ進化は始まっていないのでしょう。


 しようとはしているけどまだしてはいない状態です」


「まだしていないのか」


 じゃあこの無の状態はなんなのだろうか。


「シズク、私の方はもう大丈夫ですよ」


『シズクが進化しようとしています』


「どゆこと?」


 ノワールがシズクに声をかけるといきなり表示が現れた。

 訳がわからないがシズクの進化が始まったのだ。


 シズクが進化を始めなかったのはノワールとショウカイのためだった。

 スライムは知能が低いが全くものを考えないわけではない。


 死に対する恐怖や食べるものの好みなんかがある。

 ただし普段は外的な刺激がないので特に何かを考えることはないのだけど。


 シズクはショウカイと出会って生きる喜びを知り、常にショウカイとノワールのことを考えていた。

 知能が低いのでぼんやりとした形にもならない思考だったが考えることを始めたシズクの知能はだんだんとハッキリしてきていた。


 同時にシズクは考えや感情に敏感になっていった。

 繋がりのあるショウカイやノワールについては特に敏感だった。


 ノワールが進化を始める時最後に考えたのはショウカイを残してしまうことの心配だった。

 ショウカイは進化を始めたノワールをひどく心配していた。


 シズクはシズクで考えた。

 今進化を始めてはいけないと。


 自分こそがショウカイを守るのだと思った。

 シズクが活躍する場面はなかったけど秘めたる思いがあったのである。


 ただシズクもテラリアスナーズの血を摂取していた。

 ノワールすら進化したのだ、魔物のランクとしては最下層になるスライムが進化しないわけもない。


 耐えに耐えたシズクであったのだけれどいつ進化が始まってもおかしくない状態であった。

 本能として気配を消して見つかりにくいところに隠れていた。


 今はもうノワールの進化は終わった。

 シズクの気持ちを察したノワールはシズクに今度は自分が守るから大丈夫だと伝える。


「むむっ?


 進化が始まりましたね」


「し、シズク!」


 これまで丸い形を保っていたシズクの形がいきなりテロリと崩れる。

 溶けていってしまいそうで焦ったけどある程度とろけたように広がったところで止まった。


「これがシズクさんの進化のようですね」


「せっかくノワールの進化が終わったのに……」


 みんなが強くなることは歓迎だけどどうにも進化している間はやきもきしてしまう。

 ようやくノワールの進化が終わったと思ったら今度はシズクの進化が始まってしまった。


「まあここなら安心安全ですから」


「そーだけどさ……」


 ノワールも結構な変化があった、シズクの変化も期待することにしよう。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


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