一進化さって2
「ほ、本当に貰っても?」
「もちろんです。
このようなもので私の受けた恩を返せるとはとても思っていません」
「いやいや、十分すぎるぐらいだよ……」
1人じゃ持てる荷物にも限界があるのでいつかは欲しいと思っていた物だった。
「あとはですね」
「またあるのか」
「そのカバンの中に私のウロコと爪を入れておきました」
「ウロコと爪を?」
「安心してください。
何も無理矢理剥がしたものではなくて生え変わりでそこらに落ちていたものです。
なんでもドラゴンの素材は人間にとっても非常に価値あるものなのでしょう?
売ればいくらかになるはずですのでお好きに使ってください」
確かに一瞬体からウロコを剥がしたのかと思った。
アースドラゴンのウロコがいかほどの値段で売れるのかはショウカイは分からない。
生え変わって落ちていたものなら気兼ねなく貰える。
カバンに手を突っ込んでみると不思議な感じがする。
本来なら底に手がつくほど腕を差し込んでもまだ入っていく。
「取り出したい時は取り出したいものを意識するのです。
とりあえず全部出ろって思って逆さに振れば中身を全部出すこともできますよ」
「分かった、ありがとう」
テラリアスナーズのウロコを出したいと意識する。
するとこれまで空を切っていた手に何かが当たり、それを掴む。
腕を引き抜くと手に手のひらぐらいもある黒いウロコが握られていた。
「こりゃ……綺麗だな」
宝石のような美しさがウロコにはある。
「少し恥ずかしいですね」
日に透かして見たりするショウカイにテラリアスナーズは少し照れる。
生え変わって勝手に落ちたものとはいえ、自分の体の一部であったもの。
それをまじまじと見られてはテラリアスナーズも恥ずかしかった。
「いや、でもすごく綺麗だよ」
「ふふふっ、じゃあ悪い気はしませんね」
売ったらいいなんて言ったけど売るなんてとてももったい気がする。
というかいくつぐらいウロコをくれたのか後で確認しなきゃいけないな。
「私からはこれだ」
マギナズがショウカイに渡したのは剣だった。
「前にデミオってドワーフに会ったろ。
あいつに作らせたんだ」
手に持った剣は見た目以上に軽い。
抜いてみるとスラリと抜けて、初めて持つ剣なのに手に馴染むようで背中が寒くなるような鋭い美麗さを持った剣だった。
シンプルで飾りがないのに素人のショウカイが見ても見惚れてしまう。
「なんか軽くなったり鋭さを保つ魔法がかけられているらしい。
なんか過去にここに来た冒険者の剣を溶かした良い金属使ったらしいから無くなさないように気をつけろよって言ってたな」
説明が雑すぎる。
軽いから魔法がかかっていることはわかった。
ドワーフは武器を作る時に武器に魔法を込めることができる。
これは人がやる魔法の付与とはまた違う技術であり、ドワーフが魔法を吹き込んだ武器にさらに人が魔法を付与もできる。
なのでドワーフが魔法を吹き込んで作った武器は人の間では人気商品。
亜空間カバンにも引けを取らないのである。
亜空間カバンとドワーフ製武器。
見る人が見ると装備だけでショウカイは凄い冒険者にも見えることだろう。
装備だけ一流冒険者。
「うわぁ、凄い嬉しいよ!」
こんなの貰って嬉しくないわけがない。
苦労に見合うだけの報酬であると言える贈り物だ。
「ありがとう、テラリアスナーズ、マギナズ!」
「喜んでもらえて何よりです」
「なんか人の言葉で私のことも刻んであるみたいだから私だと思って大切にしてくれ」
「あっ、そうなんだ。
どれどれ……」
『熊公』
自分の国の言葉ではなく、他の国の言葉で書いてあると大体オシャレに見えちゃうものである。
この世界の言葉で書いてあるとオシャレに見えるけど、熊公と剣の根元には刻んであった。
いや、熊公なら漢字で書いてあれば意外とカッコよかったかもしれないな。
ただ熊公と書いてあることはマギナズに言わない方がいいだろう。
ドワーフ製の剣、銘は『熊公』。
なんだか急に凄い剛腕な剣にも見えてくるから不思議である。
マギナズは人の言葉が分からないからわからなかったのである。
「そのカバンならお人形も入るでしょう」
「えっ、本当?」
カバンの口とテディベアを見比べる。
どう見てもテディベアの大きさではカバンの口を通らなさそう。
中が広くても入らなきゃ意味がないのではないか。
「入れる意識を持ってカバンを近づけてください」
「こう?
おわっ!」
カバンの中にテディベアが入った。
入ると表現するよりもカバンがテディベアを吸い込んだというのが見た感じは正しい。
このカバンすごく便利。
誰もが欲しがる理由がよく分かる。
「本当にこれ以上ない贈り物だよ!」
テントとか本来は1人で持ち歩くようなものじゃない。
ノワールにソリでも付けようかなんて考えていたけどこれで旅もかなり楽になる。
お礼なんて期待していなかったけど頑張った甲斐があったと思うことのできるお返しであった。
「そういえば1ついいであるか?」
「ん、何?」
「話の流れを切って悪いのであるが……シズクはどこ行ったであるか?」
「………………えっ?」
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