おっきかったりちっさかったりひとだったり3
「惜しいって何が?」
テラリアスナーズの言い方に引っ掛かりを覚え、ショウカイが質問する。
「人に擬態できるというのは魔物にとって1つのステータスみたいなものです。
上級の魔物であり、知能が高いことの1つの証明であると言ってもいいかもしれません。
どんな魔物にもできることではないですからね」
「じゃあノワールは上級の魔物ってこと……?」
「そこが惜しいのです」
「んん?」
「ノワールさんは人の姿にはなれましたがミミや尻尾が残ってしまっています」
チラリと視線を向けるとノワールが尻尾を振る。
顔はウルフの時のようにクールな感じの美人なのにショウカイに対しては可愛らしく感じさせる振る舞いをする。
「ノワールさんは完全に人には擬態しきれてしません。
だから惜しいのです。
言うなれば上級になりきれていない……中級ではありませんし、準上級みたいなものです」
「なるほど……」
「まあ獣人という種族がいて、このような姿なのでこのまま人前に出ても問題はないと思いますよ」
「ただ服がなぁ……」
人になられるたびに裸では困る。
今も頭の中でちょっとだけノワールの体がチラつくのだ、ちょっとだけだけど。
「ここから練習すれば服もおそらく出せますよ。
ミミや尻尾はわかりませんが」
「おっ、それなら安心」
「ご主人様!」
ノワールがショウカイの腰に手を回して抱きつく。
「私のことも見てください!
スーハー……ご主人様の匂い……久々…………」
「お、おーしおーし」
ノワールの頭を撫でる。
なんだか行けないことをしているような気分にもなってくる。
ミミと尻尾がなかったらノワールだと分からないぐらいの変貌ぶりに動揺しっぱなしである。
「と、とりあえずいつもの姿に戻ってくれないか?
今の姿も好きだけどモフモフしているいつもの姿も好きだぞ」
「分かりました!」
人の姿でもノワールはノワールだけどショウカイにも慣れる時間が必要だ。
だってショウカイには女性に対する免疫があまりないのだから。
ショウカイの体に顔を埋めて匂いを嗅いでいるノワールはショウカイの求めに応じていつものオオカミの姿に戻る。
「どうぞ!」
しかしただのオオカミの姿ではなく巨大なオオカミの姿だった。
ゴロンと地面に寝転がり、お腹を見せて撫でを要求する。
これを人の姿でやらなくてよかった。
「ノワール」
「なんですか?」
「と、飛び込んでもいいか?」
「もちろんです!」
ただショウカイも普通の人じゃなかった。
一度触って感じたモフモフも忘れられはしない。
転がり、お腹を見せるノワールはモフモフとして魅力的だった。
お腹に顔を埋めるぐらいは何回もやってきた。
けれど全身モフみに包まれることはまだ未経験である。
「いくぞ、ノワール」
優しく、ベッドに倒れ込むようにノワールのお腹に飛び込む。
天国だった。
暖かくて柔らかでシルクのような滑らかな手触りでありながら動物の毛としての姿を失ってはいない。
それに洗い立てのような香りがしながらも毛の中に顔を埋めるとその奥にノワールの野生の匂いもちょっとする。
ノワールがやったようにショウカイもノワールの匂いを嗅ぐ。
大概ショウカイも変態なのである。
「私だって顔埋められるぐらいはあるぞ?」
「なんの対抗心であるか?」
「うるせえ」
1番最初の仲間のノワール。
無事に帰ってきてくれたことが嬉しくて、安心して。
多少の変化はあったけれどノワールはノワールで。
包み込まれるノワールの暖かさの中でいつしかショウカイは眠ってしまった。
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