おっきかったりちっさかったりひとだったり2
「え……えっ!?」
「リアクションが一々うっせえな」
大きくなることは分かる。
大体デカいって強いから。
しかし小さくなるとはどういうことなのか。
「可愛くはありませんか?」
小首を傾げるノワールはミニサイズなこともあって可愛い。
「か、可愛いぞ!」
褒めると尻尾がちぎれんばかりに振られる。
小さくて可愛いものを食べてしまいたいなんて表現するがそんな気持ちも今なら理解できる。
「こうすれば……」
シュタッとノワールがショウカイの腕を上がりスポリと胸元に入る。
「他の人間にバレずにずっと一緒にいられます!」
顔を出して前足をうまく襟に引っ掛けてぶら下がるノワールはかつてもっと小さかった頃のミクリャのようだ。
胸元を覗き込むとキラキラと期待する目をしたノワールと目が合う。
「すごいな、ノワール!」
指先でノワールの頭を撫でる。
服の中で揺れるノワールの尻尾が胸に当たって気持ちがいい。
ノワールは考えたのだ。
見つかるから一緒にいられないなら見つからないようにすればよいと。
シュシュやミクリャにヒントを得て、服の中に入れるほどに小さくなれば周りにバレることなく一緒にいられるのだと。
意外とノワールも知恵が回るのだ。
ただ小さくなってしまうだけではショウカイがガッカリしてしまうとノワールは思った。
ショウカイは撫でることが好きで、ノワールは撫でられることが好き。
ノワールは小さくても良いのだけどショウカイの立場になって考えてみると小さいと撫でられる部分が小さくて撫でによる満足が得られなくなってしまう。
むしろ大きくなれば触り心地が良くなるかもなんてポロッと漏らした言葉を覚えていた。
だからおっきくもなれるようになった。
デカいから強いとかそんな考えはノワールになかった。
ショウカイに撫でられるためだけにデカくなったのである。
「まだあります!」
胸元から飛び出すノワール。
淡く光り、大きくなっていく。
また巨大化するのかと思ったら様子が違っている。
ただ大きくなるのではなくてノワールの形が変化している。
そう、まるで人のよう。
「どうですか、ご主人様!」
いや、ノワールは人の姿になった。
「なぜ皆服を着ないのであるか!」
これまで健全男子を守っているようで守れていないシュシュも予想外すぎて行動が遅れた。
当然の如く人になったノワールは全裸であった。
「ご主人様にちゃんと見てもらいたいのです。
邪魔をしないでください!」
「見てもらいたいなら服を着るである!」
もうバッチリ見てしまった。
ノワールは褐色美人であった。
ただ見えたのは短い時間で、しかも男子たるが故のところに視線が行ってしまったのでうろ覚えだけどなんか頭についていた気がする。
「あー……多分服まではまだ無理だろうな。
どれ、待ってろ」
顔面にシュシュが張り付いたまま大人しく待つショウカイ。
もはやクモが顔に張り付いても動じもしない。
マギナズがゴソゴソと何かをしている音がする。
しかし魔物が人になると皆一様に美形になるのはなぜなのだろうか。
たまたま出会った人になれる魔物たちが美形なのか、それとも人になると美形になるものなのか。
「ほれ、これ着ろ」
「なんでですか?」
「お前見てるようで見えてねえのな。
ほら、ショウカイも服着てんだろ?
着るもんなんだよ。
乙女は肌晒しちゃいけねえんだとよ」
マギナズは人になった時に裸だったのでテラリアスナーズに非常に怒られた。
未だに減るもんじゃねえしいいじゃねえかなんて思ったりするけどショウカイ以外には見せない方がいいと言われてとりあえず納得した。
「むむ、どうやるのですか?」
「どうってこう……スポッと?
思い出しな、ショウカイの着替えシーンを」
「一体なんの会話だ」
何しようとしてるのかは分かるけどちょいちょい会話がおかしいぞ。
マギナズはショウカイの荷物を漁って服を適当にノワールに渡した。
服なんか着たことないノワールは着方も分からなかったのだがマギナズもマギナズで服は人になる時にそのまんま一緒に擬態してしまうのでいざ着方なんて聞かれると若干困った。
ショウカイが着替えてるとこを思い出して着てみろと言われてノワールはショウカイが服を脱ぎ着している記憶を呼び起こす。
「ん、とりあえずいいんじゃねえか?」
「いや、よくないねぇ」
マギナズが渡したのはローブだった。
前後ろ逆に来ていて、フードが前になっていた。
「ケモミミがあるな?」
可愛いんだけど完全に人ではないノワール。
頭にはウルフのミミとチラリと尻尾も見える。
顔や手足なんかは人なのに若干ウルフの特徴が残ってしまっている。
ニッコニコとするノワールは黒髪褐色肌の美人であり、その笑顔にショウカイもドキリとする。
「尻尾もありますよ!」
クルリと後ろを見せてくれるノワール。
一瞬お尻が見えてしまうのでは思ったけど後ろはローブの前であり、ちょうど閉じたローブの隙間から尻尾が出る形になっていた。
「なかなか惜しいところまで来ていますね」
感心したようにテラリアスナーズがつぶやく。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます!
もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、
ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
評価ポイントをいただけるととても喜びます。
頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。