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初めてのドワーフ3

 生活があるから武器を作って売るけど衣食住が確保されるなら武器だけ作って気に入った奴にそれをあげるだけでもいいぐらいなのである。


「なるほどである」


 シュシュが氷を食べ終わり、ミクリャも口の中いっぱいに氷を転がして遊んでいる。

 大体休憩も取れたのでデミオの紹介で裁縫や服飾を担っているドワーフの所に案内してもらえることになった。


「いや、自分の足で歩くから。


 持ちたいならこれ持って」


「なんだ?


 お姉さん離れか?」


「結構注目浴びて恥ずかしいんだぞ」


 家の外に出ると再びクマに戻って手を広げるマギナズ。

 もうなんだか抱きかかえてショウカイを運ぶことが普通みたいに考えている。


 もちろんショウカイも移動は楽だけどそこまで無気力に抱えられて移動するつもりはない。

 ショウカイの代わりにテディベアをマギナズに持ってもらう。


 クマが巨大なテディベアを持つ光景は意外と悪くない。


 ショウカイはミクリャを抱えてデミオについていく。


 不思議な集団。

 テディベアを抱えたマギナズと見慣れぬ人間と魔物。


 抱きかかえられなくても否が応でも視線を集めてしまう。

 こっそりと見るのではなくてドワーフたちは普通にショウカイたちのことを眺めてくる。


 ドワーフはみんな似たような容姿をしている。

 ちょっとずつ違うのだけど何がどう違うのか説明するのも難しく、個人の識別はちょっと出来ない気がする。


「シーダ、いるかー?」


 デミオが無造作にドアをノックする。


「誰ですか?


 もうちょっとドアは優しくノックしてくださーい」


「よう、俺だ」


「あらーデミオさんじゃないですか。


 ドアは優しくノックしてくださいと何回も言ってるじゃないですか」


「すまんすまん、ついな」


 家のドアが開いて、中からドワーフの女性が出てきた。

 声が女性だったのでドワーフの女性がどんな容姿なのかドキドキしていたけど普通に背の低い女性といった感じだった。


 ドワーフは女性も豊かな髭が生える。

 ある年齢を越えた頃ぐらいから顕著になり始めるものなのであり、実はショウカイがここにくるまでに見たドワーフの中にもドワーフの女性はいた。


 デミオが訪ねたこのシーダというドワーフの女性も気を抜いて過ごせば髭が伸びてくる。

 最近の若いドワーフには髭を剃って過ごす者も多く、シーダもそうした若いドワーフであった。


 体型もドワーフは樽型のようなずんぐりむっくりした体型が昔ながらのものなのだけど最近の若いのは細いドワーフも少なくはない。

 最近若いのは……なんて言う年寄りもいなくはないが髭があろうがなかろうが、体型が太かろうが細かろうが問題はないので、ショウカイのイメージしていないようなドワーフも今は多くいるのである。


「きょうはどうなされたのですか?」


「ちょっと頼みたいことがあってな。


 中に入れてもらっていいか?」


「今は特に仕事もありませんし、大丈夫ですよ」


「悪いな」


「そちらの方、マギナズさんですね?


 そのまんまじゃ入らないので……」


「わーてるって」


 当然のようにクマから人の姿になるマギナズ。


「これデッカ!」


 人の姿でも割と大きい方なマギナズだけどそれでもテディベアはデカい。

 クマの姿の時には邪魔にならなかったが人の姿では邪魔になるぐらいのサイズだった。


 シーダの家に入ると若干の窮屈感はあるものの、デミオの家よりも広く見える作りでいくぶんかミニチュアになった感は少ない。


「いきなり訪ねてすまなかったな。


 サムタンのジジイは元気にしてるか?」


「相変わらず鉱山にこもって石取りに励んでるよ」


「あのジジイも変わらず元気だな」


 デミオとシーダは知り合いだった。

 正確にはデミオとシーダの祖父が知り合いなのでシーダとも顔見知りであった。


「それでなんの御用ですかね?


 あんまりデミオさんは外でないのに」


「俺だって家から出るぐらいするわ。


 ちっと見てもらいたいものがあってな」


「そのおっきなクマさんのお人形ですか?」


「そうだ。


 直してほしいらしいんだが裁縫の腕ならここでもお前さんが優秀だろう?」


「まあまあ、そんなに褒めても何も出ませんよ。


 とりあえず見せてください」


 マギナズがテディベアをテーブルに置くとシーダはクルクルとテディベアを回しながら状態を確認する。


 裂けた背中の雑な縫い目の中を確認したり握ったりして感触を確かめたりと真剣そのものである。

 固唾をのんで見守るショウカイ。


「……これは人間製ですね」


 一通りテディベアの状態を確認したシーダは深いため息をついた。


「正直言ってこの直し方は酷いものですね。


 なんとかしようとしたのは認めますがこんな感じになるなら何もしない方がマシでした」


 それはショウカイも思った。

 裂けたところは直ってるとは言い難く、中の布の塊がいつ飛び出してきてもおかしくない。


 シーダが触ってみたところ足先の方は感触が違う。

 フワフワとして柔らかく、本来の感触がこちらなのだと分かる。


 胴体部分は詰められた布のせいで固い。


 それ以外のところの作りは精巧である。

 縫い目は丁寧で細かいところにまでこだわっている。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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