表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/340

初めてのドワーフ2

 うっすらと緑色の水に氷が浮いている。

 まさかと思って飲んでみるとそれはお茶であった。


 苦味は強いけれどショウカイも親しんだ味に近くて割とイケる味だった。 

 冷たい飲み物も久々なので暑い環境も相まってスーッと体に冷たさが染み渡っていく。


 ミクリャやシュシュにはちゃんと小さいジョッキで飲み物が運ばれてきている。

 それでもミクリャにとってはジョッキはまだまだ大きい。


「んあー、それでもデカかったか」


 そう言ってデミオはまた奥に行って今度は小さいお猪口のような器を持ってきた。

 デミオはお猪口にお茶を移し替える。


「ありがとうございます」


「気にすんな」


 ミクリャはようやくちゃんと飲めると嬉しそうにお猪口を抱えて口をつける。

 冷たいものは初めてでお茶よりも氷に興味を持っているみたいだ。


 ツンツンと触ってみたりして氷の冷たさを楽しんでいる。


「これってなんですか?」


「それか? それは森にある植物を乾燥させて水につけておいたもんだ。


 ちょっと苦いが風味が良くてここじゃみんなただの水よりもこうして飲むんだ」


「どんな植物ですか?」


「なんだ、興味あるのか?


 後で少し分けてやってもいいぞ。

 どうせタダで取ってきたもんだからな」


「本当ですか、ありがとうございます」


「お前こんなもん好きなのか?


 私はあっちが飲みたいな」


 冷たいものは冷たいものなので文句は言わないがマギナズはチラリとデミオの方を見る。

 実はデミオだけはジョッキにビールを持ってきていた。


 マギナズは羨ましそうにビールを見ている。

 お茶よりもお酒の方がマギナズにとってもいい。


「お前は酔うと気が大きくなるからダメだ」


「一杯ぐらいいいだろう?」


「お前一杯でだいぶ気持ち良くなるだろ」


「それはお前らの酒の酒精が強すぎんだよ」


「違うな、お前が酒に弱えんだよ」


「あんまし強くはないがちょっとぐらいいいだろーがよー」


「ふん、また今度な」


「ちぇ……」


「それよりなんの用事でここにきた?


 まあ……なんとなく予想はできるが」


 デミオがチラリとテディベアを見る。

 気でも狂ったんじゃなければあんなもの持って歩く理由なんて限られてくる。


「実は……」


 ショウカイは事情をデミオに説明した。


「なるほどな。


 どこのドワーフに持ち込んだのかは知らんが多分鍛治しかやらねえドワーフに持ち込んだんじゃねえか?」


 基本的にドワーフは鍛冶をやる。

 オーガと付き合いがあるやつなら大体鍛冶をやってるドワーフだろう。


 そして鍛冶をやってるドワーフは大体変なプライドがあるもんで、剣専門のドワーフに槍があるかを聞くだけで追い出されることもあるぐらいだ。

 もちろん服飾を行うドワーフもいるのでそう言ったところに持ち込まないと多分話すら聞いてくれない。


 相談してるだけなのに俺に針仕事やれってかって怒り出したりする。

 腕力ではオーガにも敵わないのに平気でプライドのためにオーガにも怒ったりする。


「俺は裁縫のことは分からんがそっちの方のやつに聞いてみればいいんじゃないか」


 グビっとビールを飲んで茶色い髭に白い髭を作るデミオ。


「ええと、紹介していただけますか?」


「いいぞ。


 熊公にゃお世話になってるしな」


 思ったよりも簡単に解決できるかもしれない。

 そんな淡い期待を抱きつつせっかくの冷たいお茶を楽しむ。


「しかしここは暑いであるな」


 ポリポリと氷をかじるシュシュ。

 お茶よりも氷の方が美味しいらしい。


「なんでこんなところに住んでいるであるか?」


 なんなら森の中の方が快適なのにと思う。

 わざわざこのような環境に身を置く必要もない。


「俺たちにとってはそんなに暑いもんでもないんだ。


 ドワーフってのは暑さに強いこともあるから鍛冶なんかやってる連中も多い。


 ここに住んでんのはほかに天敵もいなきゃ、俺たちにとってはあまり負担にならない環境だし、いい鉱石も近くで取れるからなんだよ」


 ドワーフは生来の鍛冶師ということでもない。

 気温的な暑さにも強いし、火の近くの熱さにもとても強い。


 人なら毛も焼けてしまうがドワーフの毛は固くゴワゴワしている代わりに燃えにくく火のそばでも問題がない。

 それに凝り性で長く集中することも苦にならない。


 背が低く重心が安定しているのでハンマーを振るうのにも適していた。

 生来の鍛治師でもないが生来鍛治師に適しているから鍛治をしている。


 性にも合っていたし、鍛冶だけでなくそのために鉱石を掘ることなんかも嫌いじゃなかった。

 溶岩地帯は他の生き物にとっては暑いのだけどドワーフにとっては問題にもならない。


 森だと火を扱うのに注意が必要になるが地面が露出したここなら特に注意することもない。

 洞窟の中にある町なので騒音についてもほかに迷惑がかかることもなく、たまたま近くに鉱山もあった。


 全くもってドワーフのための環境のようなものである。

 商売相手が魔物になってしまうが元より人を嫌って集まった連中だったので、理性のある魔物相手で、向こうから襲ってこなきゃ相手なんか誰でもいいのだ。


 というか作った武器なんかも売らなくてもいいと思っている。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ