表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ショートショート10月~2回目

結婚式

作者: たかさば

 愛するミユキと俺の門出を祝うのは…数えきれないほどの、友人、知人、著名人。


 皆、口々に、俺たちの結婚を祝福している。


「おめでとう!幸せになれよ!」


「お似合いのご夫婦ね!」


「末永くお幸せに!」


 だが、その中に、俺の血縁者は、いない。


 …俺の両親は、俺とミユキの結婚を、認めてはくれないのだ。


「では、誓いの口づけを。」


 神父の言葉を確認し、俺はミユキの唇を、奪った。


 にっこり微笑む、ミユキの唇に、俺の唇を、重ねる。


 何度も、何度も、唇を、堪能する。


 にっこり微笑む、ミユキの唇が、にじんでいる。


 何度も、何度も、唇を、堪能する。


 にっこり微笑む、ミユキの顔が、ゆがみ始める。


 何度も、何度も、唇を、堪能する。


 ……ああ、ミユキ、俺の、ミユキ。


「ちょっと!!!なにやってんの?!」


 ……この、声は。


「いいかげんにしなさい!!!」


 ビッ!!ビリビリぃイイい!!


 ミユキが、ビリビリと引き裂かれてゆく。


 細かく引き裂かれた、愛する妻が、俺の足元に散らばってゆく。


「いいかげんに現実逃避はやめなさいよ!!」


 唾液でふやけて、所々にじんだミユキが、バラバラになって、俺の足もとに散らばっている。


 机の上の結婚式会場では、相変わらずにぎやかに、俺とミユキを祝福している。


 …数えきれないほどの、友人、知人、著名人。


 皆、口々に、俺たちの結婚を祝福している。


「おめでとう!幸せになれよ!」


「お似合いのご夫婦ね!」


「末永くお幸せに!」


 B4の紙を埋め尽くす、俺とミユキの結婚を祝う来賓。


 花嫁惨殺という恐ろしい事件を前にして、一ミリも表情を変えることなく、俺とミユキの結婚を祝い続ける、来賓。


 花嫁だけが、引き裂かれて、姿を消した。


 呆然とする俺と、半狂乱の母親。


 俺の、ミユキ。


 俺を愛してくれる、唯一。


 俺が愛している、唯一。


 俺の、ミユキ。


 二次元にとらわれている、かわいそうなミユキ。


「バカなことやってないで、早く仕事に行きなさい!」


 ……もう、そんな時間か。


 俺は、バラバラになったミユキを拾い集め、ごみ箱に、捨てた。


 ……仕事に行かなければ、ミユキを描くこともできなくなってしまうからな。


 肌色のマーカーペンのインクが切れていたんだよ。


 これがなくては、ミユキの血色のいい素肌は……描けないからな。


 ……俺は、愛する妻のため。


 職場に、向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 唾液でふやけたミユキ……(笑。 ちゃんと仕事してるから、いいんですよね。たまには現実逃避をしても、はい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ