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67 直情的

「うにゃ? それは何をしているにゃ?」


 キースが行なっている事をミィーケは興味深そうに覗き込んでいる。鼻をひくつかせ髭をピンと伸ばし、目をパッチリと開いて凝視するその姿、まさに猫そのものである。


「これは塗布剤だな。知り合いのじぃさんから腰に効くやつを頼まれているんだ」


「塗り薬にゃ」


「そのじいさん腰が悪くてな。だからこうして薬を調合して定期的に届けているんだ」


「そうだったにゃ」


 キースが調合している薬をミィーケは興味津々といった様子で見つめる。それは見るというよりかは学んでいるといった雰囲気である。


「珍しいか?」


「んにゃ? 調合自体はそう特別なものでもにゃいけど、素材が珍しいにゃ」


「そうか。因みにこれはじいさんの腰痛を和らげる為のものだな」


「腰痛にゃ! じいさまにとっては死活問題だにゃぁ」


「だな。見ていて可哀想になるぐらいだ」


「その植物はどんな効用にゃ」


「これはメルントール草といって患部を冷やす効能目的で使用する。これにハッカ油を混ぜてそれに鎮痛作用のあるアケビン草を加える」


「アケビン草はこっちでも使うにゃ!鎮痛だと他にもアカガワ草とかも使うにゃ」


「アカガワか。それはこっちだとあまり手に入らないな」


「そうにゃんにゃ。やっぱり国が違うと材料も変わってくるんだにゃぁ」


 ミィーケは納得といった様子でうなずいていく。


 こうして話してみると、なるほど、どうやら本人が言っていたように薬剤師というのは本当なようである。


 ミィーケは自身が気になった事を積極的にキースへ質問していく。そしてキースも同じように気になったことをミィーケへ訪ねたりしていく。ミィーケの話す内容はキースをして感心するものが多々あった。本人の言う通りミィーケはなかなか優秀な薬剤師のようである。




 しばらくの間薬草談義に花を咲かせている両者であったが、そこへ訪問者が現れる。


「キースさん」


「おっ、テトか」


 治療院で働いているテトが、その可愛らしい顔に笑みを浮かべてキースの元へ歩み寄ってくる。そして傍にいるミィーケに視線を向けると驚いた様子をみせる。


「あっ、お客さんがいらっしゃったんですね。すみませんでした」


「いや、構わないさ」


「にゃっ! 気にするにゃ!!」


「ありがとうございます。えっと、猫族の方ですよね? はじめまして。テトといいます」


「にゃっ! ウチはミィーケって言うにゃ! よろしくにゃ!!」


 手をピッと上げて自己紹介をするミィーケ。それに対しテトは丁寧なお辞儀をしてそれに応える。両者の性格がよく現れているようだ。


「それでテト、いったい何のようだ」


「はい。シルビァーナさんがキースさんをお呼びしていたので、それを伝えに来ました」


「シルビィが? 今日何かあったとは記憶していなかったが……。了解した。それで、これから向かえばいいのいか?」


「そうして頂けると助かります」


「なんにゃ、キースは行っちゃうにゃ?」


「これも仕事だからな」


「仕事なら仕方がないにゃ」


 残念そうな顔をするミィーケ。その垂れ下がった髭を見て、何かを思いついたのかキースがミィーケへと向き直る。


「そうだ。折角だからミィーケ、お前仕事してみるか?」


「にゃ?」


 ミィーケは首を傾け疑問の表情をその顔に浮かべる。


「いやなに、別に大層なことじゃないさ。じいさんから腰に効く薬を頼まれている話をしただろ。その調合をミィーケに頼もうかとな」


「にゃ!?」


「調合のやり方は一通り見せたろ。せっかくだ。こちら側のやり方を学ぶのも一興だ、やってみないか?」


 キースの提案にミィーケは目をキラキラと輝かせている。先程の話のやり取りでミィーケが腕の良い薬師だというのは分かった。ならこの程度の調合なら任せてなんら問題ないであろう。何も調合が複雑な物をやらす訳ではない。ましてや服用薬などではなくただの塗り薬だ。これらは子供でも出来る単純なもなのだ。


「やるにゃ!!」


 鼻をヒクヒクさせ、興奮した様子のミーケが髭をピンと立てて返事をする。やる気に満ちた良い表情である。


「なら任せた。材料は部屋にある物を適当に使って構わない。なんだったら自分で調合を考えながらやってみるのも良い勉強になるだろう」


「にゃにゃにゃっ!! 自由に使っていいにゃ!!」


「依頼として頼むんだ、材料はこちらで持つさ。もちろん依頼料も出す。とは言えただのぎっくり腰用の薬だ、大した額は支払えないけどな」


「全然問題無いにゃっ!! むしろ勉強させてもらうんだからこっちがお金払いたいぐらいにゃ!!」


 腕をワキワキさせ意気揚々といった様子のミィーケ。そんな元気いっぱいなミィーケを室内に残し、キースはテトと共に治療院へと向かうのであった。






――――――――――――――――――――――――




「良かったんですか? キースさん」


「ん?」


「えっと、ミィーケさんを一人部屋に残して来ちゃって」


「そのことか。それは問題ないと思うぞ」


 キースの応えにテトは疑問を浮かべる。確かに人が良さそうな猫族はあったが、いささか不用心過ぎやしないだろうかと。世の中善人ばかりではない。中にはあえて犯罪などを犯す者もいる。もしあの猫族がその気になれば、金目の物を盗んで立ち去ることは可能だ。だがキースは問題ないといっている。それほどあのミィーケという人物を信用しているのだろうか。


「ああそうか。テトは亜人と会うのは初めてか?」


「はい。ミィーケさんが初めてお会いした亜人の方です」


「ならそう思うのも仕方がないな。ああいった亜人……まぁ全ての者がそうだと言うわけではないが。彼女らは直情的というかなんというか。そのなんだ。自分にすごい正直なんだよ」


「正直、ですか?」


「ああ、端的に言えば嘘をつかない。というより嘘がつけないと言った方が正しいな。偽りを述べるのがすごく苦手なんだ。だから故意に人を騙そうとか、陥れようとか、そういったことをしないし、むしろ毛嫌いする。そんな人種なんだよ。もちろん全ての亜人種がそうだと言うわけではない。中には狡猾な種族もいるさ。だが、俺が会ったことある範囲でいうのであれば、これまで会った犬族や猫族のやつらは皆例にもれず正直者だったな。単純というかなんというか。会話した感じミィーケなんて正にそういった手合いだな」


 キースの話を聞いて、なるほどと思うテトであった。テトの目から見てもミィーケは嘘が苦手そうであり、人のものを盗んで利益を得ようとする人種には見えなかった。


「ま、今頃は珍しい薬草類を手にし気分が盛り上がってる頃だろう。だから心配しないでも平気だ。それに少ししたらシャルティエルが部屋に来るはずだから、もし何かあったらその時に知らせてくれるだろう」


 おそらくその考えは間違っていないであろう。むしろ夢中になりすぎて部屋を散らかしてしまう方が心配である。そんなことを考えながらキースはテトと共に治療院へ向かうのであった。





―――――――――――――――







「……これはいったいどういう事なんだ……?」



 治療院へ向かいシルビァーナとの用を済ませたキース。

 そして自身の部屋へと戻ってくると、そこで目にした光景にキースは唖然とする。


 そこには身体を抱えるようにして床に小さく丸まっているミィーケがいた。

 頭をこれでもかと低く、というよりもはや床にめり込むのではと錯覚するほどに頭を下げて、何をすればここまで頭を下げられるのかと感心してしまうほどに。


 遙か東方の地にて最大級の謝罪を伝える行為がこれに似た何かであった……などと何処か遠い目をしながらキースが何事かと考えていると、ミィーケが震える声でボソリと言葉を発する。


「……し……死んでお詫びするにゃ……」


「いや死なんでいいから」


 大きなため息を吐き出し説明を求むキースなのであった。


ミィーケはいった何をやらかしたのでしょうか。

正解した方にはミィーケ1年分贈呈!!できたら面白いんですけどねぇ


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