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18 語られる真実

 テトを引き連れ治療院へと向かうキース。その道中テトがニコニコした様子でキースの横をトトトと歩いている。そんな上機嫌のテトを見て、キースはなんとも微笑ましい気分になりテトの頭を撫でつける。


「ほぁ!? キースさんいきなりどうしたんですか!?」


「あ、いや。テトがあまりにも楽しそうにしてたから、ついな。」


「……ボクそんなに楽しそうにしてましたか?」


「ああ、おじさんには眩しいぐらいだったな。」


 そういうとテトは恥ずかしそうにして俯いてしまった。


「あ、いや別に子供っぽかったとか、そういうわけではないぞ?」


 そう説明するが、テトはさらに下を向いてしまった。年頃の男の子はなんとも扱いが難しものだ。


 自分がこの年齢の時はどうだったかな?


 などと考えている間に二人は治療院へと到着したのだった。


「それでは、キースさんがいらっしゃったことを先生に伝えてきますね。」


 テトは足早にスタスタと治療院の奥へと入っていく。それを見送っているキースは、入口入ってすぐの部屋にいるナタリーを見つける。ナタリーもキースの存在に気が付き、椅子から立ち上がるとキースの傍へ近寄ってくる。


「ソフィアが目を覚ましたようだな。」


「そうみたいですね。」


 二人で立ち話をしていると、奥からシルビァーナが姿を現す。


「来たか。あの子が目を覚ましたのはテトから聞いたね。」


「ああ。今は状態が落ち着いているんだろう?」


「幾分ね。さっきよりは落ち着いているが、それでも思いつめた表情しているのには変わらないさね。」


 シルビァーナはそう言うと、二人に付いてこいと促す。二人もそれに従い付いていくのであった。




――――――――――――――――――――



 案内された部屋には、ソフィアが寝台の上で俯くようにしながら座っていた。その表情は憔悴しており、とても正常な状態とは言えなかった。目元は赤く腫れ、唇は水分を失いひび割れている。


 室内に入ってきたキースに気がつくと、ソフィアはビクッと体を硬直させ、明らかな動揺を見せる。そしてまた下を向き目に涙を浮かべていく。


 キースはゆっくりとソフィアへ近づくと、そっと肩に手を置く。緊張したように体を固くするソフィアだが、次の瞬間勢いよく顔を上げ、キースの方へ視線を向ける。


 先程まで赤く腫れた目元は正常に戻っており、乾き切れた唇には潤いがもどっていた。


 自身に身代りを使われたことを理解したソフィアは、キースの顔をみて、そして声を押し殺すようにして泣き始めた。


「……ソフィア、いったいどうしたんだ? もうワイバーンの心配はない。ソフィアを傷つける者はいないんだ。」


キースは優しくソフィアに語りかける。シルビァーナやナタリーは、キースの言葉をただ黙って聞いている。


「やはり、それが原因ではないんだな……。」


 静かに語りかけるキースに、ソフィアは俯くことしか出来ないでいた。


 少しの沈黙の後、キースは意を決したように話を続ける。


「ソフィア、君が取り乱してしまった原因___君のスキルと関係があるのか?」


 ソフィアが反応する。やはり、スキルになんらかの原因があるようで間違いないようだ。ソフィアは怯えた表情で下を向きぎゅっと毛布を握りしめる。その手は震えていた。


「ソフィア、君のこれまでの事は俺にはわからない。だが、これだけは言わせてくれ。俺は君をどうにかしようとは思わない。俺だけじゃない、此処にいるナタリーもシルビァーナも、君の秘密をもらすようなことはしない。決して。」


 キースは部屋にいる二人に目を向ける。その視線に二人は無言で肯く。


「こんな下っ端の言葉なんて信じられないかも知れないけど、それでも下っ端なりの誇りはある。他人を騙し利用し己の利を得ようとは思わない。だから信じてほしい。俺は君に危害を加えるつもりはない。」


 キースはソフィアの震える手に自分の手を重ねる。


「俺はソフィアには命を救われた。その恩を仇で返すなど畜生にも劣るクズだ。命の恩人を見捨てるような事は死んでもしない。そんなことするぐらいなら俺は自らの死を選ぶ。」


 これは嘘偽りない言葉であった。キースはその長い冒険者生活で、たとえどんな苦渋をなめたとしても、その誇りだけは失わないで生きてきた。たとえ下っ端だとしても、いや、下っ端だからこそその誇りを胸に冒険者として生きてきたのだ。たとえ高級冒険者に実力で敵わないとしても、せめて気概だけはだけは負けないように。その心情が今のキースを形つくっていた。


「もし、そのスキルのことでソフィアに危険が及ぶのであれば___俺は君を助ける。それがせめてもの恩返しだ。」


 ソフィアの手に力が入る。その手は未だ震えていた。


「だから安心してくれ。この町にいる限り、誰にも手出しさせない。たとえ権力者がソフィアのスキルを利用しようと手を伸ばしてきたとしても。盾にぐらいならなってやれるつもりだ。だから____」


「……違う…」


キースの言葉を、ソフィアは震える声で遮る。


「……違う、違うっ! 違う!!! 」


「ソフィア…?」


「違う違う違うっ! 違う!!!!!」


 ソフィアは勢いよく顔を上げる。その顔を見てキースは驚きそして戸惑いを見せる。


 顔を上げたソフィア。その表情は苦痛に歪んでいた。恐怖か絶望か、そのどれかはわからない。ただキースには、それが罪悪感に染まっているのだと何故か感じ取ることが出来た。


「違う……違……うん…です……」


 ソフィアの悲痛の叫び、それが何を意味するのかキースには分からなかった。ソフィアの言葉をただ黙って聞いてるキースは、ソフィアが落ち着くのを待ち続けた。



 しばらくして、落ち着きを取り戻してきたソフィアは、キースに聞かせるように、ゆっくりと語り始めるのであった。



次の更新は本日夕方の17時頃を予定しております。

引き続きお付き合い頂けますと幸いです。

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