働き者青年が死んでしまった
昔々、ある村にとてもよく働く青年がいました。
彼は、早くに家族を流行り病で亡くしてしまいましたが、両親が大切にしてきた農地を守るため、一日たりとも休むことなく働きました。
村の人々も、そんな彼をお手本によく働き、自らの子供にも彼を見習うよう教えました。
ある年の夏、村に何日も雨が降らない日が続きました。
このままでは、働き者の青年が丹精込めて世話をした農地も干上がってしまいます。
困り果てた青年ですが、それでもできることを探しては、ひたすらにそれをこなしていきました。
そんな彼の前に突然、天から美しい女性が降ってきたのです。
女性は、青年に言いました。
「良く働いたお前に報いるために、この地に雨を降らせましょう」
女性が魔法を唱えると、たちまち村の上空に雨雲が集まり、ザーザーと音を立てて雨が降り始めました。
その日は、村に降った久方ぶりの雨を祝って酒宴が開かれることになりました。
その席で、女性は働き者の青年に問いました。
「お前の頑張りをもっと報いてやりたい。何か願いがあれば私に言いなさい」
女性の美しさに惚れ込んでいた青年は、彼女に妻となってくれるよう願いました。
その後の酒宴は、いっそう賑やかなものになりました。
あくる日、青年の家には家族が一人増え、彼はより一層仕事に精を出すようになりました。
しかし、無理をしたせいか、彼は腰を痛めてしましました。
次の日、鍬を振ることもできない青年に、妻は仕事を休むように言いつけました。
そして、青年が治るまでの間、彼女が代わりに仕事を行いました。
三日後、すっかり腰が治った彼は、再び鍬を握って仕事に行きました。
しかし、どうにも力が出ません。
なんでか、鍬を振っているとスグに疲れてしまうのです。
帰って妻にそのことを話すと、妻は言いました。
「病気かも知れない。明日は大事を取って一日休みなさい」
青年はその言葉に従い、次の日は全てを妻に任せ、一日中眠って過ごしました。
そしてまた次の日、すっかり元気になった青年は、再び仕事に行きました。
ですが、やはりすぐに疲れてしまうのです。
再びそれを妻に相談すると、また昨日と同じことを言って、翌日は青年の代わりに妻が仕事を行いました。
それからというもの、青年は頻繁に体調を崩すようになりました。
その度に、妻にすべてを任せ、青年は家で休むのです。
村の人達は、そんな青年のことを心配して、代表の一人がお見舞いに行くことにしました。
「なんだよ、案外元気そうじゃないか」
しかし、妻に看病されている幸せそうな青年の姿が窓から見えたため、団欒の時間を邪魔しないよう、気を使ってこっそこ帰ることにしました。
それから、看病に来た村人は、他の村人にもそのことを伝えました。
「むしろ、結婚するまえより太ってたよ。ありゃ、幸せ太りってやつかね」
それから、一年が経ちました。
青年はどうなったのかと言うと、あいかわらず体調が良くないのか滅多に家から出ることはせず、一日中家で過ごす日が多くなりました。
看病に来た村人は、人が変わった青年をみると口を揃えてこう言いました。
「まるで抜け殻だ」
更に二年が経ちました。
もはや、青年は家から出てこなくなっていました。
体もガリガリにやせ細っていて、青年は起き上がることも出来ないほど衰えてしまいました。
そんな青年に、妻はいつも優しく甘い声色で囁きます。
「おまえの代わりに私が全てやってあげる」
その言葉通り、妻は仕事も家事も身の回りの世話も全部全部やってくれました。
腹が減れば手ずから食べさせてくれるし、一人では厠に行くこともできないので下の世話も任せっきりです。
しかし、妻は何一つ文句は言わず、それどころか嬉しそうに青年につくしました。
それから半月後、青年は妻の腕の中で眠るように息を引き取りました。
村ではしめやかに葬儀が行われました。
「青年は幸せものだな」
と村人の一人が言います。
その視線の先には、最期の時まで献身的に青年に尽くしてくれた女性の姿がありました。
埋葬が終わると、一言告げて女性は村を出ることになりました。
曰く、
「青年のような人の手助けをしてあげたい」
そうです。
それを聞いた村人たちは、心を打たれ、働き者青年と同じく、献身的な女性を手本として子供たちにも話して聞かせましたとさ。
ところで、結局青年は何で死んでしまったのでしょうか?
練習で書いてみた。