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夏、是枝悠人が友達を作るまで  作者: 脳内企画
Chapter1 惑星ルウィーエ
9/11

Chapter1-8 ルウィーエ人とのコミュニケーション


 カーラとのやり取りの後、悠人は部屋の中へ戻っていた。


 「さて、段々と僕たちのことがわかってきたぞ」


 悠人は部屋にあったテーブル似備え付けられた椅子に腰かけて言った。彼の向かいにはミーシャが座り、脚をひらひらさせて悠人の言葉の続きを待った。


 今の彼女は先ほどまでのワイシャツ一枚だけの格好ではなく、しっかりと肌着を身に着け、その上にわずかに大きめのワンピースを着ているといった格好をしていた。このアパートの大家であるカーラが用意してくれた服である。


 カーラは悠人との会話の後、すぐに自分の部屋から女児用の衣類一揃えをかき集めてこの部屋まで持ってきてくれたのだ。


 カーラはミーシャの耳や尻尾を見ても驚いた様子は無かった。悠人はカーラが自分と同じように人間の姿をしているため、この世界でも彼女のような姿が一般的なのかと最初考えた。むしろ、ここがルウィーエではなく地球のどこかなのではないか、すらもまだこの時は思っていたのだ。

 部屋の様子を見れば、そこには見慣れた構造のものが多く、話す言葉も全て内容が理解出来ていたからである。しかしそうだとすれば、カーラがミーシャの姿を見てなにも驚かないのは妙である。悠人はカーラの様子に違和感を覚えた。


 結論から言ってしまえば、悠人はここが地球であるという考えを早々に投げ捨てることとなってしまった。

 

 カーラにミーシャを見て何故驚かないのかをそれとなくを聞いてみたところ、この星の住人たちは個々に生き物としてのルーツを持っているようで、人型をベースに色々な動物の因子が混ざっているのだという。


 はて、とここでまず一つ悠人は首を傾げた。

 そんな説は聞いたことがない。

 

 目の前の女性はそれを当たり前の、ごく一般的な常識のように語る。カーラは悠人の視線に「私が何のルーツか気になる?」と笑った。そんなつもりではと悠人が言うやいなや、カーラは髪の毛の一部をかき分け始めた。


 そこから出てきたのは薄茶色の小さな角であった。


 それはカーラのルーツを示すもので、恐らく鹿のような生き物がその因子として入っているのだろうということが見て取れた。


 しばらく角を見つめていると、カーラは恥ずかしそうに照れながらそれをまた髪の中へとしまいこんでしまった。


 どうやら人によっては因子の露出を恥ずかしがることもあるらしい。

 このようにして悠人は、カーラとの会話で自分たちの置かれている状況をある程度までは掴むことが出来ていのである。


 「言葉は通じているらしいけど、これも何か変な力が働いていそうだね」


 悠人はそう言うと、テーブルの上に置いてあった、ミーシャ用にカーラが持ち込んでくれた服を一枚拾い上げた。そうして服の内側に手を入れてタグ部分を引っ張り出すと、そこに書かれている文字に目を落とした。


 タグの上に書かれていた文字は、悠人のまったく見たことも無いような文字であった。もとより外国語に通じているわけではないが、文字の見た目の種類くらいならば多少はわかるというものである。しかしそこに書かれている文字は日本語ではもちろんなく、かといって漢字とも、ローマ字とも、アラビア文字ともとれない。およそそのほかのマイナー言語、古代言語からなるアルファベット類型の中にも同一のものがあるとは思えなかった。


 これだけであれば、未知の言語が一般的に使われているという驚きで済むのだが、悠人の心はもう一段深いところで揺さぶりをかけられた。


 不思議なことに、そこに書いてある文字の意味がはっきりとわかるのだ。


 タグ上の文字は誓って、悠人に少しの馴染みもない文字である。しかし目を通していくうちにその文字が意味する言葉が頭の内に浮かび上がるのだ。服のタグに書いてある洗濯時の注意書きが悠人にはすべて理解できた。


 悠人は先ほどカーラが部屋に来ていた際に、試しにと思い浮かんだ言葉を口に出してみたところ、言葉は滞りなくカーラに通じてしまった。


 悠人はこの時、日本語としての発音で言葉を放った。カーラはそれを違和感なく受け取り、洗濯をする際の注意を補足してくれた。その時のカーラが口にしていた言葉は、悠人には日本語として聞こえた。


 はじめは、流ちょうな日本語だと思った。だがここに至り、会話に違和感を覚える。見知らぬ文字の読み方がまるっきり日本語と同じなんていうことがあるだろうか。


 悠人は念のために文字自体の読みを尋ねた。


 「あの、この文字の読みは『洗濯時、他の物と、分けて、洗う』…で、良かったですか?」

 「ええ、合ってるわ」


 文字を指で追いながら読み上げる。するとカーラは少し不思議な顔をしてから、頷いたのだった。


 カーラとの会話を思い出しながら、悠人は手に持っていた衣類を元の場所に戻した。


 「文字はその意味が自動的に変換されて頭の中に浮かぶ。言葉も理解できる言語に変換されて相手の耳に届く、そういうことなのかもしれないな」


 「ふーん……。よくわかんないけど、便利ってことだよね? ならいーじゃん、悠人とこうやって喋れるのもそのおかげだね!」


 ミーシャはそう言って楽しそうに笑った。


次回更新日が固まり次第追記します。

現在ほぼ日刊で更新中。だいたい午前二時頃の更新です。

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