失ったものと得たもの
初めての投稿ですがよろしくお願いします。
僕はあまりにも簡単に人を好きになってしまうようだ。だから好きにならないように意識していた。そしたらほかの感情までわからなくなった。はじめは最近顔が疲れないな程度だった。次に笑顔が作れないことに気が付いた。そしてそのことに気付いたその日から僕の中から喜びが消えた。
僕が次に失ったのは以外にも空腹感だった。いくらでも食べれたし、食べないまま過ごすこともできた。便利だなとは思ったがうれしくはなかった。喜びを失っているのだから当たり前といえば当たり前なのだが。それに少しショックを覚えた。しかしなぜ空腹感を失ったのか解らなかった。
しばらくしてから空腹感を失った意味を知った。それは心の満足感を失ったのと同じように体も満足感を失ったのだ。何をしても満たされず、何をしても癒されない。そんな私は周りから徐々に浮いていった。この時焦りよりも好奇心が先に浮かんだ。周りと同じように過ごせば騙せるかと。今思えばこの少し前から世間でいうなら「壊れている」状態であったのかもしれない。僕はまず最初に普通の「ふり」をした。作り笑顔の練習をした。くっそくだらない同級生の話に対して笑って見せた。周りから見ればそれが「普通」であったようで、一時期がうそのようになった。しかし周りに合わせるのもだんだんめんどくさくなってきた。勤勉さをいつの間にか失っていたのだ。しかしその反面、面白い能力が身についていた。最初は国語の時間だった。物語を30秒と少しで読み終わっていたのだ。いや正確に言うと途中まで読んだ時点で終わりが見えたのだ。最初は勘がさえた程度だと思っていた。しかし、その後先生が板書をする前にノートをとっていた。いや、とっている自分を「見た」のだ。変な言い方かもしれないが三人称目線で見た自分がいた。驚きはなかった。が、どれまで先が見えているか見てみたい衝動にかられた。
え、こうなることは見えなかったのかって?何言ってんですか。ちゃんと見えてましたよ。
そう言って青年はつまらなそうにため息をついた。ここは取調室。青年は被疑者。3年間で11人殺し。うち三人の体の一部を氷漬け、ホルマリン漬け、UVレジン固めて持っていた病的殺人犯。しかし目の前の青年はどこにでもいそうな普通の青年だった。病的な感じなどどこにもなく普通に淡々と今までのことを話している。ただ、淡々としすぎていた。この手の犯人は殺した時のことを興奮しながら話したり、かたくなに何も話さない人はいるが、ここまで落ち着いて淡々と話さない。青年は自分で感情を失っているって言っていた。そのためか青年からは生きている感じを受けなかった。