夜の浜辺
月明かりを剥いて
消えた影を撫でて
波の音を拾うためだけに
浜辺へと繰り出そう
見えない足跡を残して
沈む足裏の感触だけを頼りに
佇むだけでも
ぎこちない夜に
溶けた水平線
あの遠くの船の光は
海を行くの?
空を行くの?
ただ
広げられた闇の中
目を瞑るよりも
深い夜に
奏でられないから
耳をすませて
彼方より集めた
波の音を纏えば
その響きは
つま先から駆け巡り
純粋な闇から闇へ
掻き消える足跡を置いて
寄せる度に広げた両手
指先からわたし
波の音になって
月明かりを畳んで
消えた影を寝かせて
隅々まで響かせたのなら
頼りなく佇んでも
わたし
海を行くの
空を行くの
なめらかに均した境目
今はまるで
近しい世界へ