プロローグ
……まぶたの裏が明るい。朝か。さて、今日は何をしようか。
「やあ、おはよう」
「おはようござい……、誰ですか?」
私が体を起こすと、目の前にスーツを身に付けた青年が立っていた。少なくとも一度も面識はない。なぜ私の家にいるのだろう?
「神の使いとでも呼んでくれ。さて、今君はなぜ僕がここにいるのか疑問に思っただろう。唐突だが、今の人生に飽きてはいないかい?」
人生?確かに言われてみれば、愛犬のジョセフィーヌと戯れるぐらいしかすることがない。家事は全て使用人に任せているし、日々生きることに刺激がない。人生に飽きていると言えば飽きているだろう。
「飽きていると言えば飽きています。ですが、それがどうかしたのですか?神の使い、でしたか。本当にそれほどの者なら、なにか目的あってのことでしょう?」
「君は神の使いと聞いて驚かないんだね。でもそれが良い。僕の見込み通りだ。人生に飽きているのなら、異世界に行ってみないかい?所謂剣と魔法のファンタジー世界だ。それも、君がするのはダンジョンの運営。予想もつかない新しい刺激を体験できるよ。どうだい?異世界に行く気はないかい?」
いきなり非現実的だな。でも、面白そうだ。
「わかった。貴方の言う異世界に行ってみましょう。ですが、一つお願いがあります」
「なんだい?僕に叶えられることならなんでも言ってみるといい」
「ジョセフィーヌを、連れていかせてくれ」
そうして、異世界での私の新たな人生が幕を上げた。