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ボクの家崩壊 〜ろっ骨折れちゃったよ〜

ここは北海道にある小さな街。

普通に暮らしていれば何も問題は発生しない落ち着いた街なんだけど・・・それは一般人の場合なんだよね。

ボクはきっとその一般人からこぼれてしまった存在なのかもしれません。

ただ一人の少女の行動・・・いや、存在によってボクの生活は変わりつつあるのです。

これはそんなヘンテコな彼女が巻き起こす小さな小さな物語。


さてと・・・この奇妙な少女が起きる前に学校に行かなくちゃ・・・って。

「あれ・・?」

ボクは寝る前までに部屋にあったはずの扉がなくなっているのに気がついた。

これはこの忌々しい少女が夜中に寝ぼけて扉を消したに違いない。

あぁ忌々しい。

しかしこんなことでへこたれるボクではない。

ボクの部屋には窓がある。

「よし・・・。」

ここから一階に下りれるだろうか?

もたもたしていると、きっとこの少女が目を覚ましボクに対して理解不能な行動をとるに違いない。

ボクは勇気を振り絞って窓を開けるつもりだ。

窓を開けることに勇気がいるのかという意見はもっともだと思う。

普通の生活をしている人たちにとってはね。

でもボクには普通の暮らしから遠く離れてしまっているのだから何事も用心しなくてはならない。

さぁ。

開けるぞ。

ガラガラ!

キーーーーーン・・・・グシャ!!!

「ぐっほぉ!?」

窓の外から金庫が飛んできた。

300kg級の。

ボク、朝から災難です。

あぁ・・・ろっ骨折れちゃったよ。

その音に布団の中でピクンと反応する少女。

「ふにゅっ!!?」

独特の反応ボイス。

それに続けて彼女は重くなった目をこすりながら。

「おはよぉ〜。どぉしたの〜。」

あぁ。

寝ぼけている。

ボクが大怪我してるっていうのに。

それに部屋の付属品が増えてしまった。

金庫なんて必要ないよ・・。

「あぁ!賢介くん!大丈夫!!?今治してあげるから!」

彼女はボクに手を振りかざすと何か呪文を唱えてるようだった。

なんて言ってるのだろう。

ゆっくりと耳を傾けようとしたそのとき。

「えい!」

ゴキゴキ!!

・・・この少女は魔法使いではないのだろうか。

すごく痛い。

「ゴボォ!」

血へどがでました。

無理やり折れたところを治そうとしています。

魔法使えよ。

忌々しい。

その時ボクの耳に呪文のようにごにょごにょ言ってる彼女の声が聞こえた。

「痛いの痛いのとんでけー。」

この娘は・・・全く魔法使いという自覚がないのか。

非常に痛い。

あぁ、目の前が真っ白に・・・。

くらくらする。

もう意識が・・・なくなって、き・・た。


「おはよー!!」

彼女がボクに朝のスイートボイスを聞かせてくれる。

ボクにとってはスイートではないのだが、彼女にとってはスイートボイスなのだろうか。

妙に可愛く聞こえるぞ。

くそ。

そのハートフルボイスをもっと自重してくれ。

朝からその高い声はきつい。

でも潤いのある透きとおった声だ。

あぁ可愛いなぁ。

ちくしょう・・・。

ってあれ・・・?

痛みが消えてる・・。

「おはよぅ賢介くん。さっきはごめんね。私、寝ボケちゃうと手当たり次第に魔法をかけちゃうの。」

彼女はテへへといった感じで説明してくれる。

「怪我したときに魔法使わなかったよね・・・。」

重々しく言うボク。

「ごめんね。賢介くんには魔法を見られたくなかったの。」

彼女は恥ずかしそうに言う。

「え・・・何で?」

こういう質問が妥当だろう。

さぁ訊こうか。

どうせ理にかなってない答えを返してくれるに違いない。

さぁ。

「あのね・・・か、かゆくなるから。」

と彼女は答えた。

よし、まとめよう。

彼女がボクに魔法を見られたくない理由というのは、魔法をかけてる時に見られると身体のどこかが猛烈にかゆくなるようだ。

そのかゆみは人に痛みを与えてまで避けたいものなのだろう。

これが彼女にとっては普通のことなのだろうか。

あぁ・・普通だろうな。

こんな常識のない娘には。

非常識極まりない。

くっ・・。


さて、いよいよ時間が厳しくなってきた。

学校に行かなくちゃならないのに朝からとんでもないタイムロスだ!

朝ごはんを食べに一階に行かなくては。

あ、扉はいつの間にかに付いていました。

これで出られるようです。

いつの間に扉が復活したんだろう・・。

まぁなんにしても自分の部屋から出られるようになった。

いや、しかしちょっと待て。

さっきボクに直撃した金庫が柔らかそうに震えている。

例えるならプリンだな。

真っ黒のプリン。

ゴマ入りなのか?

ゴマが入っているんだね!

ひゃっほー!

いや、そんなことはどうでもいい。

早く朝食を。

ガラガラ。

トタトタトタ。

一階に下りてリビングに行き、冷蔵庫を開けると牛乳を取り出すボク。

そのまま冷蔵庫を閉めつつコップを手に持つ。

トーストが見当たらない。

そうだった昨日食べきっちゃったんだった。

仕方ない。

牛乳だけで学校にいこう。

ゴクゴク。

「なかなか美味いじゃないか。」

と、さりげなく感情表現豊かにふるまってみるとしよう。

「なにがおいしいのー?」

ぼくはギョッとした。

いつの間についてきたのだろう。

「こ・・・これは牛乳っていって。」

「ぎゅーにゅー?」

「そ、牛乳。」

「ぎーーー・・・ぎーー・・・ぎゅうにゅう。」

彼女はにこっと笑って言った。

牛乳の存在を知らないようだ。

まったく、今回もほっぺたが柔らかそうだ。

言っておくがボクのキャラはこんなんじゃない。

でも・・・柔らかそうだ。

つんつんしたいぜ!

ぷにぷにつまみたいぜ!!

おっと・・・取り乱してはいけない。

こんなのボクのキャラじゃない。

とりあえず牛乳を飲ませてみよう。

なんて突発的なことを思いついたボク。

もう学校なんてどうでもよくなってきた。

今日からこの娘はボクのおもちゃだ。

「飲んでみる?今入れるから待ってて。」

ボクは彼女の返事は待たずに牛乳をコップに入れた。

コップに牛乳を入れているときに、ボクはちょっとした悪戯を思いついた。

ちょっと痛い目を見せてやるか・・・。

さてこの牛乳に何を入れようか。

とりあえずは塩だな。

岩塩があったな・・・。

入れちゃおう。

サーーーー、サーーーー。

これで仕返しを遂行する。

ほかに調味料は・・・。

あぁ!!

にがりだ!!

ニガリを牛乳に投入!

ボジョジョジョジョ。

よしよし。

「おまちどうさま。愛ちゃん。」

「ありがとー。・・・あ!でも私ちょっと出かける時間だから!賢介くん飲んでいいよ。」

「え・・・でも。」

「じゃあ私行くから!ばいば〜い。」

そのときボクは今まで感じたことのない恐怖に襲われた。

残されたコップに入った牛乳をどうすれば・・・。

真っ白な牛乳が恐怖で黒く見える。

あ、行ってしまった。

しかもスキップしながら鼻歌交じりに。

「ふにゅんにゅるり〜ん。すぱっぱらぷぅーー。」

なにがそんなに楽しいんだろうか。

謎のメロディーが頭をぐるぐると。

とりあえず遅刻は確実だな・・・。

こうなったら一時間目は欠席で眼覚ましテレビでもつけようかな。

リモコンの端のボタンを押すボク。

ポチ。

ズゴォォォン!!!

ボクの家が崩壊しました。

あぁ・・・これもあの忌々しい少女のトラップか。

かろうじて二階への階段とボクの部屋、それとテレビだけは残っていた。

お父さんとお母さんは?

あ、テレビに映ってる。

なるほど、今の爆発でテレポーテーションしちゃったのか。

しばらくは理解に苦しむなぁ。

あれ?

テレビのニュースキャスターが違う。

眼覚ましテレビじゃない・・・これは眼覚まし土曜日だ。

昨日は木曜日だったはずなのに。

まさか時間軸を越えたのだろうか。

これが魔法使いの力!!?

なんてすごいんだ!

でも、それなら昨日は学校を欠席したことになってるのか。

あ〜ぁ、皆勤賞だったのに。

いや、それでもいい。

とにかくボクは思わぬところで休みを手に入れたのだ。

部屋に戻ってゆっくりしよう。

階段を上ってドアを開ける。

ガラガラ。

どうでもいいけどなんでボクの部屋のドアはこんなに重いんだ。

擬音がガラガラって。

いかにも古めかしい。

どれもこれもあの少女の陰謀だ!

そうだ!

そういうことにしよう!

そしてボクは今から本を読むことにする!

もちろんライトノベルです。

ボクはのめりこむことにする。

時間を忘れて。

自分だけの世界へ・・・。


あれからどれから時間が経っただろうか。

ボクは時計を確認すると12時を指していた。

もうすぐお昼の時間です。

おなかもグーグー鳴り始めています。

金庫が美味しそうに見えます。

ぼーっと割れた窓から外を眺めていると・・・。

玄関のドアが開く音がしました。

お母さんかな?

お父さんかな?

とにかくお腹がすいたから食事が待ち遠しい。

トタトタトタ。

廊下を歩いている音が聞こえる。

誰だろう。

「賢介く〜ん!ただいま〜!」

あぁ・・・愛ちゃんか。

ボクは一気に鬱になった。

トタトタトタ。

「ハァ・・・ハァ・・ハァ・・。」

息を切らしているようだ。

よっぽど急いで帰ってきたらしい。

ドア越しなのに息切れが聞こえる。

彼女はドアをゆっくりと開けた。

ガラガラ。

その無情な少女はロケットランチャーミサイルを肩にかかげ、しゃがみ込んだ。

照準は・・・ボク。

にこにこする少女。

びくびくするボク。

すると彼女が優しくこう言った。

「好きだよ。」

チュドーーーーーーン!!!

愛情表現がミサイルでした。

彼女の名前は柊愛(ひいらぎ あい)

非常識で魔法使い。

だけど魔法は使わない。

ボクの部屋とプリンのように柔らかくなった金庫とボクはバラバラになった。

この苦しみは終わらない。

目が覚めたら魔法で元通りになっているから。


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