出会い
連載第1話です。
拙い箇所が目立ちますが、よろしくお願いいたします。
最初は小説でも読んでいるのだと思った。でも、多分違う。自分の見ている夢というか幽体離脱というか、多分そんな感じ。
僕は駅前のベンチで泣いている女の子の隣に座っている。女の子はもう長いこと泣いているみたいだ、目は少し腫れ、顔も少しくずれている。お兄ちゃんの高校の女子の制服…かな。ミディアムの髪が頬にかかり、顔はよくわからない。高校1年生位かなぁ。
だいたい僕はどうしていたんだっけ?あぁそっか、インフルエンザで高熱出して、病院行って点滴打ちながらベッドで寝てるんだ。きっと起きた時には少しはすっきりしているだろうな。
僕は休んでいるはずの中学の制服を着て、お兄ちゃんの学校の文化祭でしか来たことない駅のベンチに座っている。寒くも暑くもない秋の日らしい、夕方の風が首筋を撫でていく。端から見ればきっとカップルみたいな感じなんだろな。まぁ僕の方が年下だからあれだけど。
すっかり自分の内側に意識が集中していたから気がつかなかったけど、イヤホンはめて、音楽を聞いていた。最近買ったばかりの好きなバンドのアルバム。僕はその片方を隣の女の子に差し出してみる、なんとなく、差し出してみなきゃいけない気がしたんだ。
女の子は、少しビックリした顔をこちらに向けてからそっと受けとった片方を風で赤く染まった耳に差し込む。
―今君が見ている目標が幻だったとしても、歩いて行こう
今の向こうの君のために―
ギターを弾きならしたメロディが秋の静かな夕方に溶けていくようだ。
”あら、私これ好きよ。あなたも好きなの?”
女の子がやっと口を開き、空気が少し緩んだ。少し泣き止んで、きれいな声でやっとこちらを直視した。
“最新のアルバムの三番目の曲ね。”
僕は年下らしく、こくんと頷いた。
”ふふ。ありがと”
そうしてしばらくすると、女の子はゆっくりイヤホンを耳から外すと、僕の手に包み込むように返した
”どうしてここに座ってるか、わかる?”
”うーん、わかんない。だって、僕は寝てて、夢をみているだけだから。”
違うよ、女の子は口の中に言葉を含み転がしながら答えた。あなたもわたしも、ここで向き合わなきゃいけないからよ。ずぅっと考えてるのは辛いけど、今はここにいなくてはいけないの。
なんで?ここってなに?
と、聞く僕に
それは…と女の子が、口をひらきかけた時・・・
”…さん~点滴終わりましたよ~…”
看護婦さんの声が遠くから聞こえる…
僕の前からゆっくりと女の子は消えていった。
これが、僕とあの女の子の出会いだった。




