表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の奥で  作者: 関根ゆい
1/21

出会い

連載第1話です。

拙い箇所が目立ちますが、よろしくお願いいたします。

 最初は小説でも読んでいるのだと思った。でも、多分違う。自分の見ている夢というか幽体離脱というか、多分そんな感じ。


 僕は駅前のベンチで泣いている女の子の隣に座っている。女の子はもう長いこと泣いているみたいだ、目は少し腫れ、顔も少しくずれている。お兄ちゃんの高校の女子の制服…かな。ミディアムの髪が頬にかかり、顔はよくわからない。高校1年生位かなぁ。


 だいたい僕はどうしていたんだっけ?あぁそっか、インフルエンザで高熱出して、病院行って点滴打ちながらベッドで寝てるんだ。きっと起きた時には少しはすっきりしているだろうな。


 僕は休んでいるはずの中学の制服を着て、お兄ちゃんの学校の文化祭でしか来たことない駅のベンチに座っている。寒くも暑くもない秋の日らしい、夕方の風が首筋を撫でていく。端から見ればきっとカップルみたいな感じなんだろな。まぁ僕の方が年下だからあれだけど。

 すっかり自分の内側に意識が集中していたから気がつかなかったけど、イヤホンはめて、音楽を聞いていた。最近買ったばかりの好きなバンドのアルバム。僕はその片方を隣の女の子に差し出してみる、なんとなく、差し出してみなきゃいけない気がしたんだ。

 女の子は、少しビックリした顔をこちらに向けてからそっと受けとった片方を風で赤く染まった耳に差し込む。


 ―今君が見ている目標が幻だったとしても、歩いて行こう

今の向こうの君のために―

ギターを弾きならしたメロディが秋の静かな夕方に溶けていくようだ。


”あら、私これ好きよ。あなたも好きなの?”

女の子がやっと口を開き、空気が少し緩んだ。少し泣き止んで、きれいな声でやっとこちらを直視した。

“最新のアルバムの三番目の曲ね。”

僕は年下らしく、こくんと頷いた。

 ”ふふ。ありがと”

 そうしてしばらくすると、女の子はゆっくりイヤホンを耳から外すと、僕の手に包み込むように返した

 ”どうしてここに座ってるか、わかる?”

 ”うーん、わかんない。だって、僕は寝てて、夢をみているだけだから。”

違うよ、女の子は口の中に言葉を含み転がしながら答えた。あなたもわたしも、ここで向き合わなきゃいけないからよ。ずぅっと考えてるのは辛いけど、今はここにいなくてはいけないの。


なんで?ここってなに?

と、聞く僕に

それは…と女の子が、口をひらきかけた時・・・

”…さん~点滴終わりましたよ~…”

看護婦さんの声が遠くから聞こえる…

僕の前からゆっくりと女の子は消えていった。


これが、僕とあの女の子の出会いだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ