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伝説の始まりは現実の終わり  作者: 一ツ柳八重
アンダーグラウンド
7/49

錦戸さんの強さと僕の弱さ2

二回に分けたパート設定ですが、読みやすさを重視してみました。

暖かい目で見守ってください。

「ここは二㎞四方の立方体だ」

「で、でも角なんてどこにもありませんよね?」

「確かに無いな」

「じゃあなんで立方体って分かるんですか?」

 素朴な疑問をぶつけてみた。

 錦戸さんはニヤッと不敵な笑いをした後反対側に歩いて行った。

「まあいい。それより始めるか」

 そう言って二十mくらい離れて大声で言ってきた。

「鏡は武器を使え。俺はこれだ」

 遠目でもここはシステムのサポートを受けるみたいだから鮮明に分かる。周りの状態もぼやけない。

 人の視界は、中心は鮮明になる。大体二十~三十度くらいの範囲。それ以外の一五〇度は不明瞭でぼやけて見えにくい。そうしないと情報が多すぎるから脳に負担がかかると思う。

 でも、サポートを受けているからって錦戸さんの周りには武器の類は何もない。

 ただ、腰をかがめて右手を前に出し、左手を腰の所で地面と平行に構えている。

「あ、あの! 僕も武器なしでやります!」

「何を言っている? 鏡は武器を使うのだ」

 バカな事を言った時みたいな反応を返されて少しカチンと来た。

「素手の人をボコボコにはしたくありません!」

「お? そうか言ってなかったな。これは装備の特殊スキルだ。格闘戦闘。つまり腕が武器になる」

「! そうなんですか……なら遠慮なく。リアクト……ショートソード」

 一瞬の粒子の集合のうち右手に諸刃が握られていた。

 僕は剣先を相手の方に向ける形で腰を低くし、右足を前に出した構えを取る。

 その構えは相手が間合いに入って来た時、突きでけん制するためにそう構えている。

「お? 結構様になってるじゃないか。じゃあいくぜ……! リアクト! 格闘術……レベル1! オープン! 地形ノーマル」

 錦戸さんの腕にいつの間にか巻かれた包帯らしきものから真っ青な粒子が吹き荒れた。

すると、錦戸さんの腕と脚から微量に粒子が舞ってる。

『システムコード確認。フィールドをノーマルに設定。戦闘モードなし』

 システム音声が響いた。

 何の事か分からなかったが、とりあえず相手の出方を見る。

「ほぅ……出方は見れるのか……。ならこちらからいくぜ」

 そう聞こえると背筋が凍った。

 相手は二回軽くステップした瞬間に消えた。

 僕は反射的に右回転で遠心力を乗せた薙ぎ払いをする。

「良い判断だ……。だが甘い!」

 薙ぎが終わった直後、左手側から大柄には思えないスピードで目の前にその体格が現れた。

 そして、お腹のあたりに何かが当たり吹き飛ぶ。

 吹き飛んだ後に剣を支えにして膝立ちになった。

「かは……」

「甘いな。嬢ちゃん」

 肉体にはダメージは無いけど殴られただろうところがすごく怠い……。

 相手は右腕を振り上げた態勢からボクシングの構えに似た状態で軽くテンポを取っている。

「ほら……立ち上がれ」

 そう聞こえると同時に目の前にその体が来ていた。

 僕はしゃがんでいる態勢から、少し起き上がって後ろに跳ぶ。

 目の前を大きな足が通過した。

「やるな……」

 僕は立て直しを図って剣を構える。

 もう体の一部には力が入らない。足や腕に当たると何もできなくなる。それに加えてもう一撃腹部に当てられると間違いなく下半身が動かせなくなる。

「こ、今度はこちらからいきますよ……」

 僕は剣をぶら下げるように下に垂らして深呼吸をした。

 そして少し伸びをした瞬間、一気に態勢を低くして前に駆け出す。剣や腕はだらんとしている。

 右にステップを踏みそのまま回転を加えて切りつける。

「! 早いな!」

 でも後ろに少しのけぞる形で避けられる。

 回転を右足で支えて剣を空中で止めて、左手を剣の包むようにして、左足を前にだし二撃目を与えようとする。

 それはバク転の要領で足でけられて上に弾かれる。

 すごい力だ……。

 相手は足が付いた瞬間に踏み出してきた。

「ワン! ツー!」

 今度も腹部に拳が二発入った。

 吹き飛ばずにその場で前に倒れ込む……。

 意識が一瞬飛んだ。

「その程度か? ほら使え」

 息を荒くして投げられた……と言うより撒かれた粉に埋まるようにブレスレットを持っていき深呼吸をした。

 するとあの時と同じように奔流が起き楽になる。

「後二回だ。それで一撃でも当ててみろ」

 僕は立ち上がり深呼吸をする。

 相手はその際もテンポをとっている。

 腰を低くして、剣を腰にしまう構え。左手を添えて目を瞑る。

「ほう……居合か」

 全神経を集中する。相手のステップの音と、息遣いが聞こえてくる。

 そして、トントンと聞こえた瞬間音が消えて風が流れた。

 僕は左に流れるように上半身をずらして、その際に左腕が後ろに下がり、剣先が上になる。

 右の耳元を大きな丸太が通過したような感覚に襲われたが、臆する事もせず、腰をもう少し落とす。

「やるな……」

 相手はよけられた事に関心を示したようで、その後すぐに風が右巻きに動いた。

左手が来るのを予想して後ろに跳び回避。

 相手が重心を少し崩したのを感じると、僕は片足が着いたと同時に一気に沈み込んで、踏み込みながら目を開けて左手を剣先に持っていき柄を下げる。

「な!? 居合じゃないだと!」

 相手は全力で潰しにきた事によりすぐには態勢を戻せない。

 そして……。

相手の腹筋を狙って振りぬいた……はずだった。

同時に頭部にかなり重い怠さと疲労感が来た。

 何が……起きたの?

 意識がもうろうとして倒れている事に気が付いたのは、数十秒後だった。

「まさか居合から抜刀に替えるとは……少し効いたぜ」

 重い頭を起こし相手を確認した。

 相手は少し前かがみになりながらでも立っていた。

 でも、剣が当たるはずだった所には真っ青な粒子が集まり所所に赤い粒子が見える気がする。

「はぁ……。攻撃速度は文字通りの物じゃない。まだ理解してないから、俺に一撃を与えられなかった。それでも、鏡の攻撃は早いとわな」

 もう一度粉をかけられて、意識が少し明確になるけど、さっきみたいな楽さは無かった。

「さあ……これが最後だ。そろそろ回復も効かなくなって来ただろ」

 確かに言われた通り体の怠さも、頭の怠さも疲労感も、少し残っていて動きが鈍るのは自分でも分かる。

 また、テンポとステップを取り、踏み込まれる感じがした。

「今度は避けないのか?」

 そして、うまく回らない頭で……ぼやける視界で迫りくる、真っ青な粒子と拳をただ見ていた。

 剣を持った右手はぶらぶらしていて、力もそんなに入っていない。

 ここで終わるのなら……僕は何も強いわけじゃないって気が付けたのかな。スライムもこんな気持ち持つのかな? 弱いと思っていたけどやられる方はたまったもんじゃ無い。

「大丈夫だ……死にはしないからな」

 そして、軽く回避行動をとろうとして体を反らしたけど、もろに当たった。

 完璧に回復してなかったのと、無力感や、何故か思ってしまったスライムの気持ち。

 負けたくない……。一矢報いたい……。

「終わったか……。さて運ぶか」

 言葉だけが聞こえる。戦いは終わったらしい。

 目の前は真っ暗で何も見えない。後一撃食らったら死ぬんだ。これがこの世界なんだ……。

「な……に?」

 自分は立っているのか……な? 感覚が何となく研ぎ澄まされている。

 さっきまで目の前が暗かったけど、今は白い部屋が良く見える。倒れる前より鮮明に。

「そうか……。鏡。君の職業が決まった」

 今まで相手だと割り切っていたけど。

 錦戸さんは本気でやってくれていた。僕は本気だった。そのはずだった。

「次が最後の一撃だ」

 今までとは違う構え方……。手を一度鳴らして、両手を腰で構えてる。

 僕はさっきと同じくだらっとして剣を垂らしている。

 でもなぜかいける気がしていた。僕は弱い。主人公最強の世界でもない。ノベルやアニメの主人公のように強かったら良かった。

 でも、僕は僕だ。女の子の体で、力もないし、撃たれ弱い……。本当に物語の主人公は羨ましい。

「行くぜ!」

 踏み込んできた。

 それをバックステップで避ける。

 正拳突きが来る。

 体を捻る。

 剣を振るう。

 しゃがまれ下からの蹴り上げ。

 振った勢いのまま回転して避けた。

 一度距離をとられる。

「動きに無駄がなくなっている」

 僕はこの戦いが始まって一度も話してない。それだけ必死だったけど……。

「!? どこ消えた?」

 体は勝手に動いていた。大きく弧を描いて疾走。

 目の前に錦戸さんが見えて突き刺すつもりで踏み込む。

「なっ!」

 不意打ちにも関わらず避けられたとしても、そのまま左に飛ぶ。

 横を真っ青な粒子が通過する。

 そのまま足を止めず相手の背後に周りまた踏み込む。

 今度は拳で相殺されて、直ぐにしゃがみ相手の視界から消える。

「くっ!」

 そのまま離れず足を払い態勢を崩させ、背中の方から斜めに切る軌道で振る。

「がはッ」

 今度は深くあたった感じがした。

 後には赤い粒子が密集していた。

「そうか……これが本当の力なんだな。なら、俺も一つ解放しよう」

 一度左手を前に出して、握り、右手を添える。

「これを使うときは無いと思ったんだけどな」

 どんどん錦戸さんの元に真っ青な粒子が収束していく。

 少しすると姿が見えなくなるほど溜まっていたのが一瞬で消えた。

「さあ……最後に一撃を来いよ」

 僕は一気に駆け出し、間合いに入る前に回転する要領で切りかかった。

「はあ!」

 錦戸さんは拳を左腰から右腰にスライドさせ開きながら、力強く横に振った。

手の形はひっかくような感じで、一気に粒子が放出した。

それは剣を弾き、僕の体を止める。

直ぐに手を引き戻し拳を握り、一歩踏み込まれ、拳が僕に当たる。

「これはスキル……閃竜槍波……装甲を砕く一点の槍」

 拳がふれた瞬間体の中を何か大きな力が貫いた。

「な……」

 でも、僕の剣は左腰に構えられていて、左手は添えられてる。

「まさかこれが鏡のスキルと……本当の攻撃速度!」

 そして、一閃。

 僕は意識を失う前に目の前に赤い粒子の嵐を見た……


今回は二回に分けたパート構成にしてみました。読みやすさを重視してみて、短時間に読める事を前提にして、戦闘シーンは区切らずに読めるように配慮しました。

区切らないとパート1、パート2で5000字越えますから……。

ここの目安が毎分500字でカウントされるみたいなので、10分……。簡単に読めなさそうと感じましたので。あまり機能知らないからなのでしょうけど。

本編に関して。

今回の戦いは錦戸さんとの戦闘で、由紀は成長したのと、過去を乗り越える事をできるようになります。

どちらが勝ったかは次回かその後にでも書こうと思いますので、楽しみにしといてください。

ここまで読んでくれた方々に感謝を――

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