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フェノメノ ~日本サッカー架空戦記~  作者: 三輪和也(みわ・なごや)
繚乱
59/59

転章

エピローグ



 日本サッカーはおよそ100年前からあるゲームに興じている。


 それは日本代表のワールドカップ優勝、ナショナルチームの世界選手権制覇を目的とした至高のゲーム。

 そのためにプロリーグを立ち上げ大会開催を誘致し代表を強化し続けていた。日本だけではなく参加するすべての国があのトロフィーを掲げる方法を模索し努力し続けている。

 知名度においてワールドカップに比する大会はなく、故にサッカー界にこれより上のタイトルはないといってかまわない。ワールドカップほどサッカーに密接な大会はない。4年に一度の祝祭。

 すべてを投げ出す価値があると思う選手もいるだろう。だからこそ多くの人間が熱狂する。多くの人間が当事者であると認識する。


 ……では代表チームがトーナメントの頂点に立つために何が必要なのか。

 いくつか例を挙げよう。

 もちろん有能な『監督』、選手を応援する周囲の人々の適度な『プレッシャー』、戦いたいチームといつでも試合が組める『コネクションおよび高評』、本気で優勝を狙うという選手全員の『意志』、チームのためにプライドやキャリアを捨てられる『献身性』、数百万数千万の人間が眼に焼きつけるようなビッグゲームで成功あるいは失敗することを『経験』し、協会が長期的な視野に基づき正当で確実性のある『プラン』を組むこと。

 こんなところだろうか。

 他にもたくさんの条件がある。あげていけばキリがないくらいだ。

 だが前提として、これまですべて大会で優勝したチームにも共通する条件がある。


 それはシンプルに『優秀な選手をそろえる』ことである。


 たとえば『もしあのスタープレイヤーが代表にいたら』であるとか、『世界レヴェルのGKが日本からも出てきたら』とか、そのような小規模な補強を想像する人は多いかもしれない。

 一人の英雄が現れ弱かったチームを教化し強化してビッグトーナメントの頂点に導く。物語の題材としてはうってつけだ。だがそれは弱者の思考にすぎない。


 強者ならばこう考える。

 一人の選手ではない。スターティングメンバー11名はおろかベンチまで23名全員がそれぞれある部門で世界一の実力をもってさえいれば、日本代表はその時点で優勝候補筆頭になるはずだ。そして高い確率で優勝する。

 求めるのは


 止まったボールの前に立っただけで相手が失点を覚悟するプレースキッカー。


 サイド・中央、速攻・遅攻どの局面でもチャンスをつくりだせるドリブラー。


 超世の才とも呼ばれるボールテクニックをゴールのため発揮してきたエース。


 無尽蔵の体力と無二のサッカーセンスで攻守共に最高とされるサイドバック。


 判断力が問われるピッチの中央で最適解を出し続けることができるアンカー。


 現代センターバックに必要とされるすべてのスキルを身につけたキャプテン。


 相手の次のプレイを予知しあらゆる手段でボールを獲り返すセンターバック。


 比類なき存在感を放ちゴールで観る者すべてを魅了するセンターフォワード。


 スピードと変化でブロックすることのできないシュートを撃つストライカー。

 

 視野の広さでピッチ内の全選手の位置を把握しゲームを組み立てるボランチ。


 強靭な意思と実力でどんな敵を相手にしても自分の優位を疑わないトップ下。


 体のほとんどの部位でボールを正確にコントロールできるポストプレイヤー。


 ロングパスとミドルシュート、二つの『必殺』を身につけたゲームメイカー。


 才能をもちながら勝利のために我欲を捨てられるユーティリティプレイヤー。


 ゴールの前に立っただけでチームメイトに安心感をあたえるゴールキーパー。


 コンビネーションプレーを得意としゴール・アシストを量産するリンクマン。



 これだけの人数を挙げたとしてもスターティングメンバープラス交代枠候補がそろった程度。ベンチすら埋まっていない。

 トッププレイヤーはいればいるほど良い。実際優勝するチームには選外にすら有名な選手がいるものだ。

 層の厚さは競争を促すし、監督に対し選択肢の多さを与えることになる。誰か一人飛び抜けた選手を軸にしてチームを組み立てる必要はなくなる。連携の良さ、調子の良さから客観的にメンバーを選出できるわけだ。

 実力の水準が等しければ誰か一人を特別扱いする必要もなくなる。互いがたがいを尊敬しチームとしてまとまるはずだ。

 過剰な自己主張もない、驕りもない。それは優勝を狙うチームとして当たり前のことだ。世界一の選手がいるからといって、彼一人のためにチームが犠牲になってはいけない。



 中学生の法水好介も上記の構想に至っている。

 日本代表があの大会で優勝候補になるとしたら、それはまず間違いなく『少数の精鋭を加えた並のチーム』ではなく『実績を残し強い連帯感のあるグループ』であるだろう。そのグループに自分も加わることになるはずだ。

 自分が1/11になれたとき、初めて代表はあの黄金のトロフィーに手をかけることができる。

 では法水好介が代表入りするとして、そのときチームに何がもたらせられるのか? レギュラーを争う他の名手すら身につけていないセールスポイントは何か? それは先天的なスピードではなくキック力でもなく意識して伸ばし続けてきた



 あらゆるシチュエーションの得点機で高い決定力をしめすゴールスコアラー。



 チャンスをゴールに結びつける決定力が選手としての長所。そこだけは他の誰にもゆずれない。

 得点のはいらないスポーツである以上、いつか日本は自分の長所を必要とするはずだ。

 自分の決定力で代表をあの大会で優勝させる。

 これは『夢』ではなく、地に足がついた『計画』なはずだ。

 だがしかし、法水好介はすでに神話上の人物ではなくなっていた。



 2年後。

 17歳以下のワールドカップ。この大会で日本代表は過去最高の準優勝という結果を残した。

 信じられないゴール、勇敢なボール奪取、そしていくつもの名勝負があった。


 史上最強とうたわれたそのチームのなかに法水好介の名前はない。

 これは彼が自分を取り戻す物語。

 ここからは法水好介と法水憂子、そして三輪和也の話だ。


 次は法水好介のエピソードではなく、U-17ワールドカップ本大会を題材とした物語を書きたいと思います。

 試合描写、文章などできる限り改善してまいります。

 本編の感想ご意見等をお待ちしております。


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