幕間1
だいたい600文字
幕間1
(試合のあった日の夜、男子寮において。自室のベッドに座る法水好介が電話をかけている)
憂子 試合は?
好介 サッカーっていうのは単純な競技だ。二十二人の選手がボールを追いまわし、そして最後には僕のチームが勝つ。
憂子 良かった。勝ったんだ。
好介 僕の得点でね。最後のさいごでゴールできてそれでおじゃん。
憂子 どんな試合だった?
好介 そりゃ最高の試合だったさ。流石代表ってチームだった。いい選手ばかりいた。
憂子 ……選ばれる気はまだないの?
好介 本大会ってんならわかるけど、それまでははいんないほうが面白そう。
憂子 面白そうって……。
好介 別に選ばれないでも強くなれるよ。
憂子 本当強気だね。
好介 サッカーについては本当そうだと思ってるよ。今日の試合で僕が一番だって確信できたさ。
憂子 この先逆転されることになったりはしないの?
好介 そだね、プロになってさ、大勢の人が見ている前で、お金をもらってプレイするのは将来なんだから、今の活躍になんの意味もないことくらいわかってる。
憂子 (沈黙)なら今日のことも通過点にすぎないんだ。喜びすぎないほうがいいよ。
好介 憂子はいつもクールだね。新人類だね、現代っ子だね、アプレゲールだね。
憂子 途中までしかわからないけど。
好介 僕ぁ結局、勝負事で勝たないと自尊心保てない、そんな幼稚な人間なんだよんな自己分析はとっくに済んでるさ。
憂子 (笑って)そんなこと言ってないよ。応援してるよ。
好介 そっちはどう?
憂子 それはもう話すとすご~くなが~くなるよ。