共にいくはずの鼓動よ、どこで鳴る
※注意※
何とも言えない後味の悪さがあるかと思われます。
読む際にはひどく感傷的な時や憔悴している時を避けてお読み下さい。ひきずられるかもしれません。
「……何を埋めてるの?」
その人は地面に向かって、スコップを何度も上げ下げしていた。
家にいるのも何だか暇だし、かといって友達と遊ぶ気分じゃない。そう思ってふらふらと散歩していた女の子は、人気の無い場所で一人、ザクッ、バサッ、と土をいじっている青年を見て、彼女の退屈しのぎに声をかけた。
青年は女の子を見もしないまま、それでも穏やかに返す。
「自分を埋めているんだよ」
ぱち、と瞬きをして、不思議そうに聞き返す。
「自分? お兄さん、自分を埋めてるの?」
「そう」
彼女は考える前に質問した。
「お兄さんはここにいるのに? その土の下にいるのは誰?」
それは幼いために真っ直ぐな、ともすれば背筋がひやりと感じるほどの露骨さだった。
土をかける手を止めず、青年は穏やかに答える。
「うん、僕の体はここにあるんだけど、本体って言うのかな、僕を成していたものはこの下なんだ」
聞いてもよく分からなかったので、少し飽きてその埋めている部分に近づく。
「何が埋まってるの?」
それはさっきと大して変わらない問いだったけれど、今度は違う言葉が降ってきた。
「ずっと大切にしてたやつ」
「えー、大切なのに埋めちゃったの?」
こんなに土をかけられたら、きっとその大切なものはひどく汚れただろう。空は明るいけれどくもってて、雨が降るかもしれないし、そうなったらすごくどろどろになる。
自分なら部屋のカギ付きの机とかにしまうのに。
今まで流れるように答えていた声が、少しゆっくりになった。
「なんていうのかな……すごく、大切な人がいなくなっちゃったから、自分も一緒に埋めてしまいたくなって、でも出来ないから、代わりにすごく大切にしてたものを埋めてる、のかな」
女の子は、変なの、と思う。自分がしている事なのによく分かっていないような言い方が不思議だった。
そして彼女には、内容のほとんどがよく分からなかった。
そのために、ただ純粋に聞く。
「なんでできないの?」
そこだけが、彼女にとって聞けるところだったのだ。
暇でふらふらと散歩していた女の子にとって、退屈しのぎのための、質問する、というその積極的な行為をするための、その目的のための、ただのとっかかりであったのだ。
そう問われて初めて、彼は傍らの女の子を見やった。
「……なんでだろうね」
ぽつん、と落ちた言葉には、何の感情も見えなかった。
それで幼いその少女は、質問するのに飽きてしまった。
相手の反応が味気なくて、つまらなく感じたのだ。
家に帰ろうと思い、元来た道に向かう前に、
「わたし帰るね。お兄さん、ばいばい」
そう挨拶して、くるりと方向転換した女の子はもう、青年のことなど気にかけていなかった。
しかし青年も、その女の子のことなど見ていなかった。
その人は、目の前の土の山を、じっと見つめている。
その手にあるスコップを、強く、握りしめながら。




