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第六話:過ちの消し方

作者の脳内小説メーカーその一、「先輩、今度の時雨は上半身と下半身が合体して戦うっていうのはどうでしょう?」「後輩よ、考えろ・・・・・それじゃ、コメディーではなくてSFの世界になってるからな?ほら、読者の皆様に何か一言言うんだよ!」「あ、皆さん、今回も短編から連載になった小説をよろしくお願いします」「それ・・・・挨拶か?」「大体、前書きって注意書きを書くところですよね?」「そうだ、だからこんな感じにするのが一番いいんだよ。え〜皆さん、感想をお一つよろしくお願いします」「・・・・それ、注意か?」

奴は迫ってきている


もうまもなく、私の元へと来るに違いない


だが、まだ確定したわけではない


決まったことなど、一つなどないのかもしれない


過去のみ、決まったことなのだ


………過去にやった過ちはどうしたら消せるのだろう………


六、

 僕の目の前を歩くのは僕より頭が一つ分小さく、物静かな少女だ。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 僕らの間に会話なんてないし、張り詰めた空気が漂っている・・・・いや、そうじゃないのかもしれないな。ちょっと話しかけてみれば変わるかもしれない。世の中っていうのは自分から動かさないといけないのだ。経済世界を巻き込めるほどでなくとも、この生き地獄のような静寂を打破することはできるはずだ。

「・・・あ、あのさぁ・・・・美羽さんって強いんでしょ?」

「・・・・強いかどうかはわからない・・・私は私に課された事をこなせるように努力をしているだけ・・・・」

「そ、そうなんだ・・・・」

 こ、こんなところでくじけている場合ではない。もっと攻めるのだ、僕よ!

「・・・え〜と、家はどの辺り?」

「・・・それを聞いてどうするの・・・?」

 完璧に怪しい奴を見る前にシフトチェンジしてしまった美羽さん。ああ、どうしようか?こ、こうなったらやけくそである!進め、進め!僕には前進あるのみだ!

「・・・彼氏とかいるの?」

 か、完璧にはずしてしまった!そ、そんなで僕を見ないで・・・

「・・・・私に興味でもあるの・・・・?」

 その無垢な瞳で僕を見ないで欲しい・・・・は、話をそらさなくては・・・・何か、何か辺りに会話を成立させるようなものはないのだろうか?

 静寂な校舎に変わりはなく、一階を歩いている僕たち・・・・・そして、外を歩いてどうやって中に入ろうか考えている(フリをしているに違いない)“影”たち。中には僕に正体というより、それが仕事だということがばれたのを知っているのか露骨に僕に何かのサインを送ってくるような連中もいる。おい、そこ、そのポーズは何だ?

「・・・・今度は、急に黙り込んで・・・変な人・・・」

 遂に、遂に変人か・・・・いや、まだまだ!何か会話を続かせねばいかん!そうしないと僕が絶体絶命のときに助けてもらえないし、良好な関係を保たなくては!絆が大切なのだ、絆が・・・・

「あ〜まぁ〜さっき興味があるのかって聞いたけど・・・・ほら、やっぱり何かと知っておいたほうがいいでしょ?」

「・・・・・何を・・・・・?」

 そんな不思議そうな顔をしなくてもいいじゃないか・・・・うう、なんだかこの人は何も知らなさすぎるという感じがする。

「・・・・その、お互いのこととかさ・・・・」

「・・・・・・そ、そんなこと・・・あなたといるとちょ、調子が狂う・・・・・」

 いえ、調子が狂うのはこちらのほうです。見事に話すタイミングなどをあなたの無口が妨げています。

「・・・・・私のことを知りたいというのなら、ここを出てから・・・・・教えてあげる・・・・・」

 そういって顔を伏せるようにして歩き出す美羽さん。その後姿においていかれないように僕は歩を進めたのだった。


「・・・・いい風・・・・」

「そうだね」

 そして、なぜだかそのまま学校の屋上へとやってきてしまった僕たち。ここまで来る間に交わされた会話は一つもない。なんだか外からは

「ひゅーひゅー」とか

「お熱いねぇ!」などという非常に子供じみた言葉が聞こえてきた気がする。そのたびに校舎の外を睨みつけてやると彼らはまじめに

「ぶぁ〜ぶぁ〜」といって僕らを掴もうとしたりするのだった。まったく、奴らは何をやっているのだろうか?まじめに仕事をこなして欲しいものだな。

「・・・・ここ、変・・・・・」

「・・・・そうだね、変な連中がたくさんいる・・・」

 僕は眼下に犇いている“影”に水をぶつける。野郎どもはいまだに下で僕らをあおっているように見える。

「・・・・いや、あの“影”のこともあるけど・・・・時雨に感じる何かを感じる・・・・気がする・・・」

「どういう意味?」

「・・・時雨は確か、次期当主ではないといってた気がする・・・・」

「そうだよ?それがどうかしたの?」

「・・・・この島に来て変わったことは・・・・?」

 僕のほうを揺ぎ無い瞳で覗き、僕はそんな彼女に

「ドキリ」としながらも考える。この島に来て変わったこと・・・?

「ああ、そういえば以前はほとんど“能力”が使えこなせてなかったのに楽に使えるけど?普段はあふれ出すエネルギー?に振り回されるような感じがするんだけど・・・お箸を振り回すぐらい簡単だなぁ・・・・」

 今まで気がつくこともなかった新事実!

「・・・・・なるほど、やはり時雨は“器”・・・私が感じたことは間違いなかった・・・」

「・・・・“器”?それって何?」

 僕がそう尋ねると彼女は呟くように答えた。

「・・・・それは文字通り。この世界に広まった“能力”を受け取る杯・・・・皆、元から“器”の才能はある。まぁ、“能力”を持つものはさっきも言ったとおり持っていないと使えないものだから・・・・でも、世の中には“能力”という水が入っていない空の“器”がある・・・・・きっと、私の知るところでは時雨だけだろうね・・・・」

「え?でも僕は普通に“能力”が使えるけど?」

 それならちょっとおかしいことになるのではないのだろうか?

「・・・・きっと、それは時雨の元からの“能力”じゃない。誰か、誰かが時雨に“能力”をあげたと思う。だけど、やっぱり他人の“能力”だから使いすぎると“器”にも影響がある。他人の靴を何日かはいてみればわかるけど、足がだんだんと痛くなってくる・・・いずれ、その“能力”も使いすぎると“器”である時雨の体に何らかの影響を与えると思う・・・」

「そ、その何らかの影響って具体的には何?」

「・・・・それは・・・・やっぱり、体が動かなくなるとか、押さえ出る“能力”を制御できなくなって内から破裂するとか・・・・そんなのじゃないかと思う・・・・」

「す、推定!?そんな適当に言わないで欲しいんだけど!」

 ああ、さようなら、いずれ僕は内から破裂するのか?いやいや、意外と穴という穴から水が吹き出てそのまま逝ってしまうかも知れない。

「・・・・・あ〜大丈夫だと思う・・・・」

 僕を慰めるようにしてよしよしと頭を撫でてくれる美羽さん。あの三人からは非常に恐れられていたのだが、本当は優しい人に違いない。

「ありがとう・・・・根拠のない優しさはなんだか返って傷つきそうなんだけど、僕は無表情な美羽さんに慰められたことを光栄に思うことにするよ」

「・・・・何だか素直に喜べない・・・・」

 立ち上がって背伸びをする。そろそろ夕焼けがやってくるだろう。現に、屋上に二人して立っている僕らを太陽は茜色に染め上げてくれている・・・・・

「・・・って!ちょっとまった!これじゃ、校舎に戻れないんじゃない?」

「・・・・まぁ、確かに・・・・夜通しで探すのは“影”の数にもよるけど、今は無理そう・・・・時雨、あなたは今何が出来る・・・?」

 そうたずねてくるのだが、この僕に出来ることは・・・・ないといったほうがいいだろう。

「・・・・ごめん、思い浮かばないや・・・・・」

「・・・そう、それなら立ち入り禁止区域の詳しい場所とか知らない・・・?」

 その言葉になにやらかんじるところがあり、僕の記憶の細部までつめていく。

「・・・・あった!思い出したよ!僕の部屋の隣に行ったらいけないっていわれている場所があった!」

 あまりのうれしさに僕はジャンプをしていた。

「・・・・それなら、そこに行くしかなさそうね・・・・」

「うん、そうだね・・・でも、そこに行くときは私を連れて行って欲しいって美奈さんが言ってたんだけど?」

 その旨を伝えると、彼女は顔をしかめながらも決断を下した。

「・・・・構わない。どうせ、食堂の前を通るのだから・・・・・」

「そう?それなら急ごうか?」

 僕らは沈み行く太陽を見ることなく、校内へと戻り始めたのだった。


 屋上から走ること、数分。僕らは一階の食堂へとたどり着いた。外にいたはずの“影”たちは何かを待っているかのように外で瞑想をしている。そろそろ、時間だからだろうか?あの時話し合っていた“影”の二人組みは僕を見つけると手を振っていた。僕は美羽さんを見ながら隙を突いて手を振ったのだった。

「・・・・美奈さん!」

「おや、なんでしょうか?」

 にんじんを剥いている美奈さんはいつものように振り返った。

「・・・僕の部屋の隣に行きます!だから、ついてきてください」

「・・・・わかりました。ちょっと待っててくださいね♪これが終わったら向かいますので・・・・」

 彼女はにんじんの皮を丁寧に剥いて僕らの元へとやってくる。

「あの、他のお手伝いさんはいいんですか?」

「ええ、いいんですよ。私の代わりにきちんと職務(夕食)をこなしてくれるでしょう。プライベートではあまり付き合いなんてありませんが、とてもいい人たちですからね♪」

 そういって走って僕らと一緒に食堂を抜けたのだった。食堂からは

「あっ!美奈!さぼるなっ!!何?『働かざるもの食うべからず?ということで夕食をお願いします?』ってあんたがさぼってるでしょ!何なのよ、もうっ!」

というお叱りの言葉が飛んできたのだった。

 僕は苦笑しながらも美奈さんと美羽さんとともに校舎の廊下を駆け抜けた。


さてさて、なんだか暴れ始めてきているような雰囲気に終わりを伝えてきそうなこの状況・・・・今のところ第九話ほどでこの話は終わると思われます。ちなみに、前書きで後輩のほうが言っていた「時雨の合体」は実際に考えていたことなのですが、文字通りSFになってしまったのでやめました。まぁ、これからも新しい前書きシリーズを楽しんでください。

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