第五話:自身の約束
〜作者とのお約束〜小説の初期段階を読んだら続けて読み続けましょう。面白くないという小説もいずれ面白く感じることができるようになります。
“影”と戦う奴は強かった
初めて私の元へとやってきたときとは比べ物にならない
私の“能力”の上に間違いなく行っている
だが、いずれ奴の“能力”は自ら潰れるだろう
所詮は借り物・・・それは“能力”といえど変わりはない
………期限までに私の元へたどり着けるのなら、私は奴を助けよう………
五、
「いやぁ、やはりご飯はカレーに限るわ!」
カレーを前にしてがっついている焔華さん。それを見て剣治がため息をついている。
「何故、もうちょっと優雅に食べることが出来ないのだろうか?」
シチューをゆっくりとスプーンですくって食べている剣治。
「まぁ、たのしいんならいいんじゃないんすかね?」
そんな適当なことを言ってご飯と魚を食べている罍さん。意外と庶民派だ・・・・
「・・・・うるさい・・・・」
静かな声でそう呟く美羽さん・・・はプリンを食していらっしゃいます。
「・・・さぁ、まだまだありますのでどんどん食べてくださいね♪」
ここに来て美奈さんを発見。彼女は食堂で僕たちを待っていたのだ。他の人たちはおなかが減っているようで彼女がここにいることになんら疑問を抱いていないらしい。僕はおにぎりを食べ終えると真っ先に彼女の元へ向かった。
「あら、やっぱり村雨様は私に気があるんですか?」
「いえ、そんなことより美奈さん、他の人は?教師とか、他の人のお手伝いとか・・・」
「ああ、先生方は巻き込まれると大変ですので地下ルートを通って帰りました。残念ながらそこから逃げることは私たちには出来ませんよ。期限が過ぎるかやられて全員GAME OVERで記憶を失っておうちにつれて帰られるかです。ちなみに、私以外のお手伝いさんたちは奥の部屋でテレビを見ているんじゃないんでしょうか?今日は私が食事を担当してますからね♪どうでした?おいしかったですか?」
「ええ、おいしかったです。ところで外にいるあの・・・・」
外で何故か僕らと同じようにランチタイムに突入している“影”たちを指差す。
「・・・“影”のような人たちは一体全体なんですか?」
「あれですか?あれは簡単に言うなら不死なる者達ですね・・・いえ、既に死んでるから不死かどうかはわかりませんけどね♪知能もありますし、相手にばれないように窓に近づいてみたら面白いことが起きますよ♪」
美奈さんにそういわれたので相手に気がつかれないようにして窓に近づく。まだ太陽は空に上がっており、彼らが中に入ってくることは出来ないだろう。
窓に近づくとなにやら聞こえてきた。
「・・・・・ったくよぉ、仕事とはいえ、こっちの世界の連中は人使いが荒くねぇか?」
「そうだよなぁ、まぁ、高給だからいいんじゃね?ほら、俺たちって結構怖いじゃん?」
「そうだな、見た目だけが怖いからなぁ・・・・あ、こっち見てるぞ?」
僕のほうに視線を向かわせる相手。そして、可愛いランチボックスをさり気に後ろに隠してこっちへと
「あ〜ぶぁ〜」とゾンビのような奇声を発している。
「あ〜すいません。あの、立ち聞きしてしまって・・・・」
「・・・・ちっ、ばれたのか・・・だが、さっさとあっちに行け。仕事を邪魔するんじゃないの!ほら、俺たちは謎の細菌に感染された人間ってことにしておいてくれ!じゃ、今からもう一度行くぞ?・・・・ぶぁ〜ぶぁ〜」
「そうだぞ、さっさとあっちのお前らの仲間のところに行けっての!ぶぁ〜ぶぁ〜・・・相棒、この鳴き声であってるのか?」
「え?あってるだろ?映画もゲームもやったし、そうだなぁ、弾を温存してたらあっさりやられた記憶もあるなぁ・・・・ほら、さっさと行けよ!」
なんだかとっても嫌なもの(ヒーローショーの裏方を見てしまった気分)を見てしまったと思ってしまった僕はもう一度“影”たちに頭を下げてその場を後にしたのだった。
「時雨君、何していたんだい?」
「あ〜まぁ〜外にいた“影”たちの様子を見てきたんだ・・・・」
「そうなの?村雨君って意外と度胸があるんだねぇ?それで、どうだった?」
「ど、どうって?もっと具体的に言ってくれないと・・・・」
なんだか具体的に見てきてしまった僕としては夢を壊された気分だ。美奈さんのほうを見れば彼女はにこりと笑っている。
「・・・何か、食べてた・・・?」
美羽さんがそんなことを言ってきている。
「え、あ〜可愛い・・・いや、ちょっとゲテモノだったかな?ほ、ほら・・・モザイク掛けないと映せないような奴?」
「「「なるほど〜」」」
一同納得してくれているのだが・・・・本当にこれでよかったのだろうか?そう思って外のほうを見てみると先ほどの“影”と思われる二人組みが親指を立てて
「そうだ、それで間違ってないぞ!」というような表情(いや、真っ暗でわからんのだが・・・)を見せる。うん、どうやらこれであっていたようだ。
「じゃ、これからどうするの?外に出てみる?」
「何を望んでそんな危険なことを?私らが求めるものは安全にそして、記憶を維持したままでこの島を脱出すること。だから、さっきの放送であったとおりにこの島のどこかにある“ゴール”に向かって進めばいいんだ。残りの五人と顔を合わせていない今、私たちに出来ることはそれだけ・・・・いずれ、生き残っていれば残りの五人とも会うことが出来るのではないか?」
剣治のその提案にみんなは頷き、立ち上がる。食堂を出る途中、先ほどの“影”の二人組のほうを見ると手を振ってくれていた。僕も手を振ったのだが・・・・それがいけなかったようだ。
「・・・ねぇ、あなた本当に村雨君?」
「え?」
焔華さんが疑うような視線を僕に向けていた。その言葉に他の人たちが止まる。そして、僕にみんなの視線が注がれる。
「・・・さっきからなんだか怪しい行動を繰り返してない?」
完璧に僕を何かの犯人に仕立て上げたいような視線を送ってくる。
「・・・・焔華君、どうかしたのか?」
剣治が彼女に尋ね、彼女は剣治のほうを見る。
「・・・村雨君って怪しい。そう私は思ってるのよ。大体、自ら“影”の近くによって行ったり、さっきも誰かに手を振っていたじゃない?彼のお手伝いの美奈さんってひとはこっち側にいるし・・・絶対に“影”の手先だわ!」
「ええっ!!」
僕は驚く。そして、他の人を見るのだが・・・・
「ふむ、確かに彼女の言うことも一理あるな」
「け、剣治!?」
「そうっすね。元からあやしいと思っていたっす」
「・・・罍さん、あなたはすぐに心変わりをするようなひとだから別にいいよ」
「あ、私はの〜かうんとでお願いしますね♪」
「美奈さん、僕のお手伝いさんじゃなかったんですか?」
「・・・・・」
「その無言が逆に怖いです。何か、言ってほしんだけど・・・」
焔華さんのほうを見てみると、完璧に僕が
「女の敵だわ!」と言ってのけているようだった。いや、何その表情?僕があなたに何かしましたか?
「とにかく!私は偽者と思われる村雨君についていきたくないわ!ここで剣治と村雨君の班にわけましょう!」
「え、そうしたら戦力が分担されて逆に危ないんじゃ・・・」
「俺も賛成っす!」
「・・・じゃ、多数決で決定だからね。どっちの班に行きたいか決めて。私は当然、偽者といたくない!」
そういって剣治のほうに歩いていく焔華さん。あれ?気がつけば僕はいつの間にか偽者決定!?
「じゃ、俺も剣治君の班に行くっす!」
そういってあっさりと剣治のほうに歩いていく罍さん。あんた、いずれ背後から襲いたいという感情が芽生えてきましたよ・・・・
「・・・・・じゃ、時雨君?私たちはこっちから行くから、君たちはあっちのほうからいってくれ」
「剣治、なんて君は白状なんだ・・・まぁ、知ってたけどね」
「じゃね、偽者」
「ひどい・・・・」
「じゃ、さよならっす!」
「罍さん、僕はあなたを許しませんよ」
こうして、僕のところに残ったのは美羽さんだけだった。ちなみに、美奈さんは食堂のほうへと僕らを見送っていってしまった。
「・・・・・」
「あの・・・」
「・・・・・大丈夫、私にはわかるけどあなたは本物。だから、私はこっちに残っただけだから・・・」
それだけ言うと彼女は僕らが進むべき場所のほうに進み始める。気がつけば剣治と僕の班ではなく、剣治と美羽さんの班になっている気がする・・・いや、事実上そうなっているじゃないか!
「これからどうするの?」
「・・・・・とりあえず、その“ゴール”を見つける。あの三人は一度離れてしまったからもう信じないほうがいい。なぜなら彼女たちが時雨を信じなかったのと同じように離れてしまったから。だから、私たちは自室に戻らずに動ける間に“ゴール”を探し当てる。そうしないと虚を突かれて負けてしまうかもしれない・・・・」
美羽さんはそれだけ言って再び歩き出した。その後ろに後光を感じたような気がした僕なのだが、やはり、寝ぼけているときとは別人である。これは非常に期待できる人材が残ったのではないか?
「・・・・時雨、きちんとついてきて・・・」
振り返って僕にそう促す彼女に僕は頷いて走って彼女に近づいたのだった。
「うん、これからもよろしく!」
「・・・・まぁ、お互いやられないようにがんばらないと・・・・」
僕らは僕らの道を進むべく、新たな一歩を踏み出したのだった。
いやぁ、終わってしまいましたね、作者とのお約束・・・・自分ではがんばったと思っても他人から見てみればがんばっているという部類にも入らないと思われますが・・・・・。さて、そんなことはおいといて、今回の話にはいっていきましょうか?今回は見事に分かれるような感じになってしまいましたが、それもよくあることです。作者はよく他人と食い違いが起きてしまいます。人間関係なんて些細なことで崩れてしまうということはご存知の通り?ですが、中には些細なことで喧嘩をして分かれてしまったとしても相手のことをきちんと見据えている人もいるということを美羽を通して伝えられたらよいと思います。では、そろそろこの章も後半戦に入ってきました。この章の終わりはどうなってしまうのか・・・・期待している人は首を長くして、期待していない人は夜空にきらめく星たちを眺めて待っていてください。