表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

第四話:来ると信じる其の心

〜作者とのお約束〜小説を読んだ後は余韻に浸りましょう。あと、泣きたいときは泣きましょう

今年も遂にくだらない余興が始まった


私の元へ来るか、あの男の元へ行き着くか・・・


奴はどうするだろうか?


私の元へと来てくれるのだろうか?


よけいな者を連れているようだが、奴がここへ来る確率をあげるものだと思えばいい


………奴はきっと、来てくれるに違いない………


四、

 校庭のところで一人の男子生徒が影から逃げている。泣きながら逃げているところを見ると必死さが見ているこっちにも伝わってくる。そして、その男を見て一早く焔華さんが飛び出ようとした。僕と剣治はそれを当然のように止めた。

「何で止めるのよ!」

「落ち着け!奴は別に死ぬってわけじゃないんだ。いやぁ、尊い犠牲だった・・・・さて、あの影に捕まったらどうなるのか見させてもらおうか?」

「そんなことを言ってる場合じゃないでしょ!助けなきゃ!」

「ちょっと待って!あの人だって仮にも実力者じゃないの?自力で逃げれるかもよ?」

 当てずっぽうでそういってみると他の二人も納得したようだ。だが、その現実はどうやら甘かったようだ。男子生徒は僕らの目の前の窓の外を走り抜ける。

「・・・もう駄目っす!」

 僕らが彼の逃避行を目撃して一分も経たないうちに彼は石に躓いて転んでしまった。そして、迫り来る“影”に今度は頭を下げ始めた。それを見た“影”たちはなにやら数人で会話を始めて動きを止める。哀れんでいるようだ・・もしかして知能があるのだろうか?

「すいません・・・すいません・・・すいません・・・すいません・・・」

「おいおい、今度は哀願かよ・・・・時雨君、行くぞ!あんな人として惨めな行為はやめてもらわなくてはな!なんだか見殺しにする気が失せた」

「わかった・・・やっぱり見殺しにする気だったんだね?」

 先に走っていった剣治。僕は焔華さんに羊さんを見ておいて欲しいことを告げると窓を開けて外へと躍り出る。僕らに群がってくる“影”を水で弾いて進む。

「・・・せやっ!!」

 剣治は右手に持っている剣をふるって先へと進んでいく。どうやら哀願攻撃ももはや限界が来たようで・・・彼の目前まで“影”たちは迫っていた。

「っっつくらぇえええ!!」

 剣治は握っていた剣を影に投げつける。光り輝く剣はそのまま三人?の“影”に突き刺さって“影”たちは姿を消した。それを見て何とか立ち上がる男子生徒。

「あ、ああ・・・・助かったっす!あんたたちは男だけど女神さまっす!」

「ほら、そんなことはいいから逃げるぞ!私がここを止めておくからあそこで手を振っている女子生徒の所へ走って行くんだ!時雨君は急いで彼を援護!」

 剣治は何も持っていない手に次の瞬間には剣を握って男子生徒の脱出口を開くために突き進んでいった。突き進んで行った後には影が切り裂かれて転がっていく。

「そういうわけだから、早く行って!」

 僕は男子生徒を押すようにして前へと進む。彼の目の前、右、左、はたまたは下からやってくる“影”たちをふっとばしながら焔華さんたちのところまで戻ってきたのだった。剣治は剣治で“影”たちの肩などを踏んで戦っている。

「お、俺を踏み台に!?」

と聞こえたのは気のせいだろう。

 男子生徒を窓の中に放り込んで剣治に手を振る。

「お〜い、救出完了!」

「わかった、今行く」

 影の波を避けるようにして剣治はスムーズにこっちにやってくる。その間、僕と焔華さんそしてようやく正気になった羊さんが寄ってくる“影”たちを食い止める。

「・・・よっしゃ、ゴール!」

 剣治が入って急いで窓を閉める。普段だったら質量を感じて窓が割れそうだったのだが、見えない何かに阻まれたように“影”たちはそこで弾き飛ばされた。

「・・・・一応、まだ昼だから校内に入ればこっちのもんってわけか・・・・」

 乱れた制服を戻しながら剣治は呟く。僕らは僕らでその場に座り込んでいた。

「いやぁ、あなたがたのおかげで助かったっすよ〜」

 先ほど助けた男子生徒は軽薄そうで糸目の人だった。

「なはは・・・」と笑っており、こいつは役に立たないかもしれないとここにいるみんなが思ったに違いない。

「あ、俺の名前は來月罍らいづきらい)って言うっす」

 いまだに

「なはは・・・」と笑っているのだが、この人は本当に強いのだろうか?とてつもなく疑問に思っていたのだが、剣治が彼に近づいていった。

「・・・・何故、外にいたのかね?奴らが外を徘徊していることを知っていて興味本位で外に出たのならもう一度外に放り出してやろうと思うのだが?」

 掛けているメガネが光っている。まぁ、危険を犯してまで助けたのだからそのくらいはいいかな?いや、そうしたら何のために助けたのかわかったもんじゃない。

「あ〜えっと・・・ほら、先ほど爆発があったっしょ?あの時ちょうど外を眺めていたらその爆発で放り出された・・・いや、誰かに掴まれて放り出されたんすよ。それで、あいつらが現れる前にとりあえず校舎の中に入ろうとしたんすけどねぇ・・・気がつけば囲まれて絶体絶命!そんなときにあんたたちが助けてくれたってわけっすよ!」

 また

「なはは・・・・」と笑う罍という男子生徒・・・・まぁ、明るい性格というのはわかったのだが・・・・

「じゃ、何で戦わなかったんだ?あんたは確か雷の“一族”だったろ?顔を見て思い出したんだが・・・・・私の家のものにお前のことを知っている人がいたから聞いたんだが・・・今までの雷の“一族”中でもっとも強いと聞いてるぞ?」

 剣治はどうやら罍さんの事を知っていたようで、詰め寄っている。

「あ〜まぁ〜わけありなんすよ。俺だって使いたかったんですけどねぇ・・・今後は大丈夫っすよ。もうご迷惑はかけないっす、隊長殿!」

 そういって敬礼のポーズを見せるのだが・・・これからが心配だ。

「・・・んで、時雨君が今までつれてきていたその女子生徒。彼女の名前は?焔華君、君は彼女から名前を聞いたのか?」

「え、い、いや?さっき気がついたばかりだから聞いてないけど?」

「それならちょうどいい。名前を名乗ってくれ。この状況のことを理解できていないのなら私がここのみんなを代表して説明したいと思う」

 やはり生徒会長としての素質があったのだろう・・・・・ここでの主導権を完璧に手中に収めた剣治は話を先へ先へと持っていく。剣治に名指しされたちょっと暗めのイメージがある黒髪ロンゲの彼女は自分のほうを指差す。

「・・・うん、君だ。先に名乗ってほしいのならこちらから名乗って構わない。私の名前は剣山剣治。こっちの根暗が村雨時雨、こっちのうるさい女子生徒が炎宮焔華でこの抜けている男が來月罍だ。さて、これで充分だと思うが・・・・君の名前は?」

「・・・・風馬美羽かざまみはね

 たったその一言が僕らのいるこの教室の温度を下げた。僕以外の人たちはいつもと違う表情を見せている。剣治は冷静にしていながらも隙を見せない表情を。焔華さんは完璧に臨戦態勢をとっているし、軽薄そうだった罍さんも糸目を開けて鋭い瞳を覗かせている。そして、僕は・・・・

「あれ?知り合い?」

 完璧に空気を読めないような人間と化していた・・・

「・・・時雨君、風馬美羽を知らないのかい?」

 少々・・・いや、かなり呆れたように僕に視線を向けてくる。

「うん、まったく知らないなぁ・・・・」

 焔華さんが首をひねるようにして呟く。

「・・・・戦場に・・・散り逝く・・・羽・・・その羽根は散ってゆく者の羽ではなく、散らせたものの羽である・・・・知らない?」

 どうやら有名な話だったようなのだが、彼女は残念ながら僕は・・・・

「知らない」

「・・・あ〜時雨君って言ったすよねぇ?おたく、先ほどの戦いで見せてもらいましたけど次期当主じゃないんですか?結構な身のこなしでしたけど?違うんすか?」

「え?うん、そうだけど?ちなみに僕の妹が次期当主」

「ああ、そうだった。時雨君は次期当主じゃなかったんだった・・・時雨君、まれに他の“一族”同士の争いがあるのは知っているだろう?」

 その場で生徒に教えるように剣治が説明を始める。

「うん、知ってるけど?」

「その仲介役としていつも“風馬家”って言われているどこにも属していない人たちがいるんだってさ。それで、とりあえずまずは力で双方を鎮めさせる。そんで、今度は交渉に移行・・・・その争いに出ていた人物たちはすべて行方不明者となるんだよ。それで、最近は“美羽”って名前が有名なんだよ」

「へぇ、そうなんだぁ・・・美羽さんってすごいんだねぇ?」

 感心していると焔華さんが僕に噛み付いてくる。

「違うでしょ!美羽って言えば畏怖の対象なのよ!私のところの“一族”も何人行方不明になったことか・・・」

 ため息をつく焔華さんなのだが、僕の“一族”でも争いや喧嘩のことを聞いたことは何度かある。

「でも、その喧嘩って争いに関係ある人たちしかしないんだよね?」

 三人の誰かに尋ねるようして話しかけてみると罍さんが糸目に戻して話し始める。

「そうっすね。基本的に争いを起こしたもの同士が喧嘩をはじめるっす。だから、大体は自業自得となるっすよ?風馬にやられる者達は考えの足りない者たちだってきくっす」

 そういって首をすくめる罍さん。

「とりあえず、美羽が裏切らない限りはどうやら実力不足に陥ることはなさそうだね」

 そういって呟く剣治

「あれ?美羽さんって裏切るの?」

 本人に直接聞いてみるのだが彼女は黙っていた。

「・・・・あなたたちが私を見捨てるのなら、私は喜んであなたたちを道連れにしよう・・・・」

 ものすごく

「私、不機嫌なんです。あなたちの言葉で傷つけられました」というオーラを発散しながらそう述べた。

「・・・見捨てないように最善をつくそう・・・・とりあえず、昼食を食べに行こうか?」

 罍さん、焔華さん、剣治、 僕、美羽さんという順番で(あれ?僕と剣治の間、一つ開いてない?)ならんで歩いている。食堂を見つけてそこへはいるとき、美羽さんは僕にしか聞き取れない声で呟いた。

「・・・さっきの、嘘。心配しないでいいから・・・」

 彼女は暗く笑ったのだった。先ほどの言葉は彼女なりの冗談だったのだろうか?


第四話となりました。いや、別に何かあるわけでもないんですけどね。さぁてと、僕としてはうれしい限りです。短編からこのようにして連載になってくれて・・・まぁ、いいことですね。ちなみに、前書きの〜作者とのお約束〜は次回で終了です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ