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第十一話:カイコウ

世の中というものは運命というものがあるのかもしれない。


いや、意外とないのかも・・・・・


今日も私は私宛の手紙・・・・“風馬家”の手紙を手に取る。


さて、今日はどのような相手に争うことのむなしさを教えればいいのだろう?


戦いといえば、この前おかしな夢を見た。


普段は一人で戦う私の隣にそのときは誰かが立っていた気が・・・


………私宛の手紙の中身は“水の一族の偵察”だった………


十一、

 世の中というものはわからないものである。僕は今、“一族”の最高権力者である長老様のもとへと連れてこられた。

「村雨時雨、村雨蕾をつれてきました」

「うむ、ご苦労・・・」

「・・・・」

 隣に立っているのは僕の義妹と僕らに連絡をしてここまで車で送ってくれた人がよさそうで誰からも利用されそうな男性だった。

「じゃ、二人とも・・・おじさんは門のところで待ってるから・・・」

 そそくさと逃げるようにして僕らの前から姿を消すおじさん。その姿がまさしく

「この長老のところにいるといいことはない」と語っている。事実、この長老さんの噂は非常に黒いものとなっている。気に食わなければその相手がどのようなものであっても“一族”の名簿から消されているとの噂なのだ。挨拶の声が小さいだけでも島流しにあった人もいる。ここは慎重に行かなくては、僕と義妹の行く末はよろしくないのかもしれない。

「兄さん、私たちどうなっちゃうのかな?」

 そうやって小声で僕に話しかけてくる義妹・・・不安なのだろうか?顔が真っ青だ。


 村雨蕾・・・・水を操る“一族”の一つ、村雨家の次女として生まれた女の子である。

小さい頃はよく色々としたものだなぁ、おしめかえたり、おねしょをした後の布団の始末と変わり身・・・あのとき、怒られたのは僕なんだけどなぁ・・そんで、今は高校二年生である僕より一つ年下。家族としては僕が兄貴でもう一人、姉さんがいる。好きな物は甘いものと体を動かすもので嫌いなものは苦いものと怖いものだ。幼い顔立ちと体つきで実年齢よりも下に見られてしまうことがあるのでそこをコンプレックスとしているらしい。詳しく聞いたことがないからわからんが・・・・剣治曰く

「ああ、蕾ちゃん?まぁ、時雨君の義妹にはちょうどいいんじゃない?あ、彼女にしたいかって?そりゃないね♪私には心に決めた人がいるんだ。残念ながらおままごとの相手は遠慮しておくよ」とのなんだか非常に腹立たしくも的確な指示を得ている。


「蕾よ、そろそろ“一族”を束ねる当主としての自覚を持ってきたか?」

 いきなり話し始めた目の前のおじいさん。何故か知らないが右目に眼帯をしているところを見ると非常におそろしい雰囲気をかもち出してくれている。

「あ、は、はいっ!」

「自信はあるか?」

「な、ないですけど・・・兄さんとかに手伝ってもらって皆をまとめていきたいと思ってます!」

 隣に立つ僕としては

「え、マジ!?そんなのいつ決めたっけ?」と思ったのだが、ここでそんなことを言ったらいいことなさそうだ。

「ほぉ、兄貴を頼りにしていると?」

 白々しそうにそんなことを言い始める長老・・・さて、この人は何歳なのだろうか?

「ええ、頼りにしてます!どんなときでも助けてくれるに違いありません!」

 力説してそんなことを言っているのだが、僕としては実力以上のことをするのは出来ないと思うのだが・・・そこのところはどうでしょうか?蕾さん?

 蕾は非常に顔を赤くしながらもがんばっている・・・・いや、お兄ちゃんとしてはそこまで言われると引こうにもひけないところが・・・もう、こうなったらひくんじゃなくて押したほうがいいのか?

「ふぅむ、時雨は構わんと思っているのか?」

「え、あ・・・」

「彼女が出来たとしても妹のお守り・・・・お前に出来るのか?」

「あ〜がんばります」

 ここは曖昧に答えて自分の首をつなげておいたほうがよさそうだ。

「そうか、それなら構わんが・・・今回、蕾に時雨を呼んだのは他でもない、お前たちは“風馬家”を知っているか?」

 どこかで聞いた名前だな・・・どこだったかな?

「時雨は知らんかもしれないが、蕾は答えられるだろう?」

「はい、ええと、争いを起こしたら報酬をどこからかもらって争いを止めるって人たちですよね?どこの“一族”にも属してないけど、もとは“風を使う一族”だと聞いてますけど?戦って残った人たちはいないとか・・・・それがどうかしたんですか?」

 知らないことに越したことはないような内容だ・・・なんて危ない人たちなんだ?

「どうやら、その“風馬家”に目をつけられたらしい」

「誰がですか?」

 蕾がそんなのんきなことを言っている。そして、僕は冷や汗が流れ始めているのを感じている。

「・・・お前たちだ・・・」

「ほら来た!・・・・あ、いえ・・・なんでもありません」

 非常に恥ずかしい思いをしながら、下を向いて反省のポーズ。

「・・・・あの、それでなんで狙われているんですか?」

「さぁな・・・まぁ、襲われる可能性があるのはお前たちが登校中か、下校中・・・両方とも部活にはいっていないそうだが・・・」

 そこで一旦話をきってため息をつく。ああ、そういえば僕らの“一族”とかには目の前のおじいさんみたいな人を守るための“ぼでぃ〜が〜ど”がいるんだった。もしかしたら僕らを助けてくれるのかも!

 淡い期待と共におじいさんの一言を待っていると・・・

「はぁ・・・悪いがお前たち二人に護衛をつけることが出来ないんだ」

 淡い期待はやはり、淡い期待でがっくりとうなだれる僕の姿を誰かが見たら

「リストラされたサラリーマンみたいだ」というに違いないだろう。

「まぁ、次期当主とその兄貴だ・・・・なんとかなるだろう。お前たちの家族には既に伝えてあるから、家に帰ってたずねてみるとよい」

 そういって僕らに

「気を張り詰めてがんばるように」といっただけで僕らは退出するように言われたのだった。


「ねぇ、どうしようか?」

「どうするも何も・・・・」

 長い長い日本庭園を歩きながら二人で今後の予定を話し合ったのだが、どうなるものでもないのだ。

「しかしまぁ、変なのに目をつけられたってことだよね?」

「ある意味、ストーカーよりたちが悪い相手だよ・・・蕾、なんとかなるって思うかい?」

「う〜ん、襲われるとしたら・・・・」

 さて、僕と蕾、どっちが襲われる可能性が高いだろうか?僕ら二人は結局答えを見つけることが出来ないまま、その日は静かに終わってしまったのだった。

 次の日、いつものように学校に行くと男子たちが騒がしかった。いや、クラス全体がうるさいものだった。

「ねぇ、どうかしたの?」

「ああ、時雨君か・・・実は今日、このクラスに転校生がやってくるそうだ・・・・昨日、校長先生から教えられてね・・・・麗しの美少女だとの目撃情報があるんだ」

「へぇ、それはすごいね・・・まぁ、だから男子たちがはやし立ててるのかな?だけど、僕らのクラスの男子はそろって彼女がいるだろ?」

 そうたずねてみると、剣治はうんと頷いて・・・

「それだけじゃないんだよ。その転校してくる美少女がものすごく、強いそうなんだ。一度手合わせ願いたいと思っている連中がここには多いからだろうね・・・どうだい、時雨君も一度相手と手合わせしてみたら?」

「いや、僕は遠慮させてもらっておくよ。興味ないし・・・・それより、この前借りてた本だけど・・・途中、破れてたよ?」

 その後、僕らは他愛のない話しをして時間を過ごし、朝のHRとなって皆が静かに机につくと、数分遅れで先生がやってきた。

「は〜い、皆!元気?」

「・・・・」

 いつものようにやってきた若手の先生に誰も無反応・・・・

「むぅ、皆つれないなぁ・・・そんなことじゃ先生、怒っちゃうぞ♪」

「・・・ぷっ、年考えろっての」

 一人の生徒が先生の冗談ではない一言を笑ってしまった。


どがーん


 一人の生徒(先ほど笑った人物)は足元からの爆発を受けて天井にのめりこんだ。

「あらら・・・ちょっと力加減を間違えちゃった♪てへっ♪」

 ちなみに、その後に続く言葉は

「天井どころか、屋上まで突き破ろうと考えたんだけどね♪」に違いないだろう。

 さて、一人犠牲者が出てしまったのだが・・・まぁ、それはいいや。

「先生、転校生はどうしたんですか?」

「あ〜そうだった。今日やってきた転校生はとっても可愛い美少女よ♪目をぎらぎらさせながら見てあげてね♪」

 おいおい、この先生はどういう先生なのだろうか?まぁ、この学校に集まってきている連中もどこか頭の変わったところが多いからなぁ・・・・僕としてはその中にいて勉学に励んでいるのだが、このクラスは比較的まともなほうでよかったよかった。

「じゃ、入ってきてね〜」

 扉を開けて一人の少女がやってきた。僕と剣治は同時に息を呑んで呟く。

「「・・・・か、風馬・・・美羽・・・!?」」

「・・・・目標、確認・・・」

 彼女の瞳はとても冷たい(絶対零度?)輝きを放っていた。

 外では誰かの声が聞こえたような気がした。


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