ふるさとを思う〜往路〜
果てしなく続く海岸線
わずかに香る異国の風
坂の街に住む気のいい人々
遙か南の1,000㎞先の
遠いふるさとに思いを馳せ
大切な人々に思いを馳せ
大きすぎる街の小さな暗がりで
夜行バスに乗り込んだ
出張風のお兄さん
就活帰りの女の子
幼い子を連れた若いお母さん
旅慣れた夫婦とカップ酒で乾杯
最下層の席で身を寄せ合い
行くか帰るか戻るか戻らぬか
交差したご縁のもと一夜を過ごす
夜行バスは走る
それぞれの思いを乗せ
南へ南へ次のサービスエリアへ
この夜を越えたら
夢から覚めたら
あの街にいる
私にとって長く現実だった
懐かしいあの街
浦島さんも帰りたかっただろう
仲麻呂さんも帰りたかっただろう
夢追い人が流浪の民が
多くの旅人が詩に残してきた
“ふるさと"に思いを馳せ
遠い“ふるさと”に思いを馳せ