夏語り
何となく、突発的に思いついた短編です。
起承転結は無いです。ええ、毎度のことながら。
ホラー? いやいや、ホラー風味な別物でしょう。
皆様の貴重なお時間頂けましたら幸いです。
暑い。
蝉がうるさい。
「五月蝿い」と書いてうるさいと読むが、5月の蝿より7、8月の蝉の方がよっぽどうるさい。
……いや、良いんだよ別に、そんな個人的な感想は。
こうも暑いと……霊現象の一つや二つや三つや四つ、起きそうなイメージだけどなぁ……
むしろ、起きてくださいお願いします。
あ、俺が死なない程度に。
「わがまま言わないでくれる?」
おお、この部屋の前の住人のおねーさん。
久し振りー。しばらく見なかったけど、どこ行ってたんだよ?
「実家に里帰りしてたのよ」
良いなぁ、帰る里があるって。
俺の地元なんてこの辺だよ?
暑くて叶わないって。
「あ、そう。って言うか、霊現象を求めてるくせに私の存在スルーな訳!?」
そーいやおねーさんって、地縛霊だったっけ。
「違いますー。ただの浮遊霊ですー」
ああ、ゴメンゴメン。
男に騙されて持ってる金全額貢いだ挙句、捨てられて首つって死んだんだっけ、この部屋で。
「ちょっとやめてくれる!? 私の情けない死に方を他人様に晒すの!」
いや、今は俺以外誰もいないし、そもそも晒してないし。
……で? 捨てた男は祟り殺せた?
「それが聞いてよ! 帰省ついでに祟ってやろうとした瞬間にあいつ、別の女に刺し殺されてるの!」
そりゃまた、ご愁傷様。
さぞかしご自分の手で縊り殺してやりたかったでしょうに。
「あ、それは無い」
へえ、そりゃまた意外。
参考までに何故なのか聞かせてもらえる?
「あいつには長い間苦しんで欲しかったのよ。あっさり死なれちゃつまんないじゃない」
……
ノーコメントで。
「聞いときながらその反応はどうかと思うんだけど」
冷たい視線で見られても、全然涼しくならないし。
いや、充分寒い思いはさせてもらったけどさぁ。
「私の決意を寒いと言い切るとは。あんたの方を祟るわよ?」
それは勘弁してよ。
女の人の恨みは怖いなぁって思っただけなんだから。
俺、女の人と縁が無いから、女心ってわかんないし。
「寂しい人生送ってるわねぇ」
しょうがないでしょ、こんな体だよ? 誰が愛してくれるってのさ。
「そりゃあ、まあ……」
「アンタ、腐乱死体だものねぇ」
千文字弱の当作品 (と呼ぶのもおこがましい)。
お付き合い頂きましてありがとうございます。
皆様の息抜きになりましたでしょうか。
最後に「はぁ?」と仰っていただければ、それは幸いに存じます。
本当に、この下らなくも意味不明な小品にお付き合いいただきましたこと、改めて感謝申し上げます。