ミーウェイ=木村未兎編 第一部
夜の東京
あぶれた若者たちが、組を作って歩く。
「未兎ちゃぁ〜ん。こっちこっちぃ〜」
「ごっめーん!遅れちゃってぇ」
木村未兎。あたしの名前。
歳は13歳。13っていえば中一。
なのに、あたしは夜遊びばっかりしてた。
何もかもが嫌だった。
「未兎ちゃん偉いよね。最年少なのに、このサークルに毎日来てるもんね〜」
「だって、楽しいんだもん♪」
「かわいい〜っ!未兎ちゃんかわい〜いっ」
このサークルと言うのは
ただ、夜の東京を遊び歩く、と言うサークル。
たまに、いや、絶対に補導警察に見つかる。
「キミ達、高校生だろ?家に帰りなさい」
あたしは背が高めのほうだから、一緒にいても中一に見られたことは無い。
「え〜?あたしら、大学生だもん」
バレバレの嘘を平気でつく。
「未兎、今のうちにあんたらはそこの路地に入りな」
あたしたちはこっそり路地に入る。
で、そのうちに、ほかの子たちが上手く補導警察官をまいてくれる。
「ねーねー!あれみてよ。もう1時なのに、まだ塾やってるよ!」
「ほんとだ!あれ、有名進学塾らしいよ
ウチラには別の次元のはなしだよねぇ。ね、未兎」
「そーだねぇ」
あたしはほんとは
あの次元の人間だった。
小学生から12時まで勉強して
親からは絶大な期待を受けていた。
「未兎。もうお開きだから、明日は10時集合ね。未兎?ちょっと、聞いてるぅ?」
はっと我に返ったときは、4時だった。
「う、うん!わかった!10時ね!じゃ、バイバイっ!!」
「え?うん!バイバーイ!明日も来てね〜っ」
あたしは、走って帰ったが、家が近くなると、歩みを止めた。
また、嫌な一日が始まる・・・・・・
「未兎!またあんたは・・どこに行ってたの!」
「うるさいな・・・・・。あたしの勝手じゃん。
もうご飯いらない。行ってきます」
「未兎!!!」
あたしは朝食を取らなかった。
お腹が減ってないのもあったけど、あんな怒声の中で食べられない。
家を出たはいいけど、学校がある。
中学生は義務教育だから、行かないわけにはいかない。
「木村!お前、髪を黒くしろって言っただろ!」
「我が校初めてだわ!一年生からこんな・・・」
毎回毎回、1年2組には、センコーが2・3人詰め掛ける。
「どいつもこいつも・・・うるさいな・・」
「お前!教師を馬鹿にしているのか!もう一回言ってみろ!今度こそゆるさ・・」
「うるせーッつったんだよ!この腐れハゲメガネ!!黙ってろ!つーかとっととでてけ!」
1−2の生徒は、多分全員びびっているだろう。
ま、1人くらいはにやにやしてそうだけど。
その日は、頬に4発ビンタをくらった。
父兄を気にしているのか、全然痛くなかった。
父兄にビクビクしてるのに教師勤めてる、笑っちゃうね!
一時間目はあたしはぼけっと黒板を見て、
退屈になったらメールして
眠くなったら寝る。
だれもあたしを注意しない。
2時間目はサボろうか、なんて思って
教室を出ようとしたとき
制服を掴まれた。
「あ?」
後ろには、あたしより背の小さい、みつあみの女の子がいた。
多分この子は・・・・
佐藤由香里。
成績もいつもトップ・・らしい。
そんな子が、あたしに何のようだろう。
「何?」
「えっ・・・と、あの・・大丈夫・・?」
「何が」
「せ・・先生に、打たれちゃったトコロ・・・」
「別に、それだけのために呼んだの?あたし、行ってもいい?」
「待って!」
由香里はまだ話し続ける。話し方がウザイ。
「何!」
「どこ行くの・・・・?」
「屋上!」
由香里は顔を赤くして、あたしを見た。
「私も行っていい??」
これが、あたしの、学校で出来た、初めての友達。