アンナ=楠杏奈編 第六部
「ダメだよ!追いつかれちゃうよ!」
私と恵美は4階へ続く階段を上がっていった。
(なんなのよ・・・!早く家に帰りたいよぉ・・っ)
涙を浮べて今にもべそをかきそうな私の髪を、恵美はぽんっと撫でた。
「だいじょーうぶ!杏奈知らないの?私、陸上では県で一位だよ!」
(恵美・・・。あ・・そっか、恵美に引っ張られているから自由に動けないんだ)
私は親切でやってくれている恵美が、突然嫌な奴に見えた。
(そうだ!騙しは・・・私の得意分野だ・・・)
「ねぇ、恵美。二人でじゃなくて、これからは一人で行動しよう」
恵美の顔が青ざめた。
「隙をみて外に飛び出せばいいよ!」
「だ・・・・ダメダメダメ!危なすぎる!」
「いいから!こうしないと二人とも死んじゃうっ」
そういって、私は四つ角になっている廊下の一角へ飛び出した。
恵美も、ここにいてはいけないと立ち上がって駆け出した。
(やった!成功!)
私は近くにあった窓から外の芝生へ身を投げ出した。
ちなみに此処は四階。腕の骨折くらいはした。
「助かっただけましだってーの!」
恵美はまだ校舎内をうろうろ走っているだろう。
助けに行く気はさらさら無いので、ここで鬼ごっこをリタイアさせてもらう。
(ごめーん、恵美。アンタのこと、どーだっていいのよ)
私はにやりと笑うと駆け出した。
「最低女。はっけーん」
窓から麗が身を乗り出して私を見下ろしてきた。
さっきまでとはキャラが違う。
「死刑、けって〜い」
けらけら笑いながら麗は降りてきた。
芝生じゃなくて、アスファルトに着地。
(嘘・・・・!?)
「麗ちゃんはぁ、お前みたいなへぼと違うの〜っ!」
麗は長い髪を振り乱して笑う。
作戦は失敗に終わった。
恵美はきっとまだ怯えながら校舎を歩いているだろう。
その恵美のほうが安全だとは!
私は気を失いかけた。
「死ねーーー!!」
麗は猛スピードで駆けて来る。
私はとっさに、その辺にあった鉄パイプでガードした。
ぐしゃぁああああ。
ぎゃぁあああああ!
麗は、鉄パイプに刺さったまま、死んだ。
よく見ると、鉄パイプは、空気圧かなにかで裂けていた。
「た・・・・たすかったぁ」
私はその場にへなへなと座り込み、麗を覗き込んだ。
(やっぱり綺麗・・・・美人だなぁ)
麗は、通常に戻ったようだった。いつもどおり綺麗だった。
(ゴメンね。麗ちゃん)